―朝起きて、目を開く
そんな当たり前のことが今はとても不思議
体も意識も確かに「私」なのに、こうして英霊として動いてる
私は確かに 幸せに幕を下ろして/バーサーカーと一緒に眠って/門を閉めて 死んだのに
「ん~…おはようシロウ!」
シロウが顔を擦り付けてくる
ふわふわしていて心地がいい
「そうだね、お腹すいたね
それじゃあご飯を食べに行こっか」
カルデアは不思議なところでまだ慣れないことも多い
こんなにたくさんのサーヴァントがいて普通に暮らしているなんて、時計塔の奴らが聞いたら卒倒しちゃうわね
「おはようシロウ」
そういうと彼はとっても困ったような顔をして「止めてくれ」って微笑んだ
わかってる
彼とシロウは別なんだって
けど彼は私にとってはシロウに変わりはない
でも、あまりに悲しそうに微笑むからこれ以上は止めよう
「ハンバーグをお願いするわアーチャー」
そう言うと、彼は今度は少し嬉しそうに微笑んで
「了解した。腕によりをかけて作ろう」
ほらやっぱり、顔にでるのはシロウそっくり
ん?後ろから何かにつつかれてる?
「あっ」
「どうかしたかね?」
「えっとぉ、そのね、この子にも何かちょうだい」
そういって私は後ろを指さした
「ふっ、お安いご用だ」
そう、後ろにはお腹を空かせたシロウがいたのでした
「おっ!シトナイではないか!汝もこっちにこぬか!?」
一際元気な声が食堂に響きわたる
それはここで出来た初めての友達
「ええ。お邪魔させて頂くわ」
鬼なのにとっても優しくて明るい女の子
そして、その回りには他にも小さな少女達がいる
「おはよう!シトナイ!」
「こらジャック!食事中に大声なんてはしたないですよ!」
「ふふっ、ジャンヌあなたも声が大きいわよ」
このカルデアには子供も多くいる
子供の姿をした英霊がこんなにいるのには最初は驚いたけど皆しっかりしていて仲良くなるのに時間はかからなかった
「クマさんふかふかで気持ちいいね!」
シロウは子供達に人気だ
ご飯も食べ終わって今は皆でシロウと遊んでる
「むぅ?どうかしたのかシトナイ?さっきから少し考え事をしているようだが?」
ホントにこの子はよく気がつくなー
「別になんでもないよ、ただこうしてまた生きてるのが何だか不思議なだ…け……で……」
瞬間視線の先に「彼」が映った
「ん?なんだ?あのアサシンが気になるのか?」
「ううん、別に…なんでもないよ。」
多分顔に出ちゃってたんだろうな
だって
彼女にこんな心配そうな顔をさせたんだもん
「なぁシトナイよ、あのアサシンと汝に何があったのか吾は知らぬ。だが会えるときに会わないと後悔するものだぞ?」
そんなことはずっと前から知ってる
でも、彼は私の知ってる彼とはちがう
そんな彼に会って傷つくのが私は怖いんだ
「怖くてもアナタは会いたいんでしょう?なら!本当に会いたい人が近くにいる今、会うべきだとワタシは思うわ」
あぁ、きっとこの子達にも会いたい人がいるんたろうな
この子達の気持ちを私は知っている
あの雪の城でずっと一人で待っていた私とこの子達は同じなんだ
だから私はそんな彼女達に精一杯笑いかけよう
「ありがとう。うん、まだ怖いけど行ってみるね!」
どこに行ったんだろ?
食堂から出た瞬間彼は気配を遮断していなくなった
気付かれたのかな?
「あっ」
前から声がしたと思ったら
そこには「私」がいた
この私は私とは違う
きっとたくさんの愛を受けて育った本当の少女なんだろう
「えっとぉ…こ、こんにちは?シトナイさん?」
ふふっ、こんなにオロオロしている自分を見るのはなんだか不思議な感覚ね
「そんなに緊張しないでいいのよ。私もあなたと同じイリヤスフィールなんですから」
「あう、えっと…もしかしてシトナイさんもあのアサシンさんを探してるの?」
意外だった
ううん、本当はわかってた
意外だったのはこの子がそれをいきなり直球で聞いてきたことだった
きっと彼女は彼がどんな人物なのか知らない
そんな彼女に彼のことを教えたくない
だからこそ私は彼女を止めたいと思ったんだ
「だったら!その…一緒に探さな…」
「あなたは、彼には会わない方がいいわ」
「え?、」
「ごめんね、でも、彼はあなたの知ってる彼と全く違うの。彼の本質を知ったらきっとあなたは傷つく。あなたみたいに幸せに生きてきた人間に彼を知ることは辛すぎるの。私はあなたにそんな思いはしてほしくないの。」
傷つけたかな?
ごめんね
それでも幸せなifであるあなたにはこのまま幸せでいて欲しいの
そう思っていたけど、うん。あなたは、止まらないよね。
だってあなたは、私なんだから
「確かに私はあの人のことを何も知らない。あの人がどんな人でどんな人生を送ってきたかなんて何も知らない。だけどあの人は私達の「お父さん」なんだよ!」
「お父さん」
ずっと、言いたかった言葉をこの子は言えるんだ…
「家族だもん、ほっとけるわけないよ!」
今にも泣きそうな顔でそう言う彼女の姿は、なんだかとても眩しく見えた
「そっか、うん。ごめんね。今言ったことは忘れて。きっとあなたなら大丈夫だね。」
そう、彼女の瞳は私がよく知ってる強い瞳だもん
「へ?う、うん」
「それじゃあね、彼に会えるといいね!」
私より小さい私がこんなに強い心を示したんだもん
なら、私が負けるわけには行かないよね
とは言ったもののどうしよう
さっきから一向に見つからない
むぅ、そんなんだからあんな形になっちゃうのよ!
「あら?イリヤスフィール?」
今日は不思議と縁のある人に会う日ね
「こんにちは、天の衣」
「えぇ、こんにちは。こんなところで何をしているの?」
「赤い外套のアサシンを探しているのだけど何か知らないかしら?」
そう言うと彼女は何か愛しいものを眺めるように私に彼の居場所を教えてくれた
「クルミの実は見つかったかしら?」
フードを取った彼を見るのは初めてだった
「あぁ、君は確かアルターエゴの」
「シトナイよ」
彼は一人でカルデアの端の窓に座ってそとを眺めていた
「何か用かい?」
少し緊張した
何せ彼とこうして会話をするのはひどく久しぶりだから…
「別に用はないわ。ただ少し話したかっただけよ」
きっとここにきて何度も同じやり取りをしたんだろうな
彼は「またか」といった様子で
「すまない、僕は君の知ってる人物とは別人だ」
って機械のように言いました
ここにくるまえの私ならきっとそれで帰ったかもしれない
けど、ここで彼女達に会った私はそんなことで逃げたりしないよ
殺さなきゃいけないなんて、しがらみもここでは存在しないんだから
「ええ、知ってるわ。知ってて私は名前のないあなたと話がしたくて来たのよ」
彼が困った顔をしているのは見なくてもわかった
だって、一瞬だけどあの頃のキリツグの雰囲気になったのだから
「好きにしろ」
「ええ、好きにさせてもらうわ」
彼と他愛もない話をする
たったそれだけの小さな小さな奇跡が今、
叶った
「あっ!シトナイここにいたんだ!」
このカルデアで誰よりも明るい声が響く
「ええ、何か用かしら?マスター?」
「微小特異点の反応がでて今からレイシフトだから一緒に来て欲しくってね」
「ふふっ、いいよ。行きましょうマスター」
「うん!ありがとうシトナイ!」
「それで他には誰が行くのかしら?」
「うん、今回はね………」
管制室の扉が開く
そして、そこには誰より強い彼がいました
「それじゃあ行こっか!バーサーカー!」
fin
まさに最強の番人