【日本に米国の石油は必要か:専門家の見解】
先日行われた高市首相とトランプ大統領の会談では、米国の石油生産拡大の為に日本が投資を行うことや、日本における米国産石油の備蓄施設の創設について議論された。 茂木外相は、この会談で、アラスカでの原油生産量を倍増させるため、日本が投資をする準備があると伝達したことを認めた。また、高市氏が、日本国内に米国の石油備蓄を構築する共同プロジェクトを実現したいとトランプ氏に伝えたことも明らかにした。
これは、中東からの供給に著しく依存する日本の状況を緩和し、危機的な時期の供給を安定化させ、さらには日本をアジアのエネルギーハブへと変貌させる可能性さえ秘めているかのように思われる。しかし、日米会談後での公式声明では、この点については一切触れられていない。
果たして、アラスカでの石油生産への投資や、米国との石油共同備蓄施設の建設は、中長期的な観点から見て、日本にとって良い選択肢となるのだろうか?この問いについて、中国・現代アジア研究所、日本研究センターの上級研究員、コンスタンチン・コルネエフ氏が、見解を述べる。
「こうしたケースでは、政治が経済に優先せざるを得ない。日本の研究者がアラスカでの石油採掘コストや輸送費などを計算し始めれば、他国の石油コストとは比較にならないほど、複雑な経済構造であることが明らかになる。もちろんロシア産よりも数倍高いし、例えばオーストラリアやインドネシア産よりもはるかに高額だ。いずれにしても、現状、日本にとってアラスカ産原油は高すぎる。慢性的な財政赤字に苦しみ、世界でも最高水準の政府債務を抱える日本にとってはなおさらだ。
だから、仮に何らかの合意が結ばれたとしても、具体的な実現には程遠い。そして、日本がこのプロジェクトに着手するのは、エネルギーサプライチェーン崩壊のリスクが生じたり、地政学的リスクが高まったり、他に選択肢がない場合に限られるだろう。現時点では、日本の石油事情は危機的状況に追い込まれてはいない、だから政府当局はこの分野の情勢がどう展開するか、市場にどのような影響を与えるかを注視し、その上で判断を下すだろう。米国との石油共同備蓄に関しては、これが日本に何らかの利益をもたらすと言うのは時期尚早だ。ここにもう一つ重要な点がある。もし日本が今、米国と投資協定を結んだとして、仮に2029年に米国で民主党が政権を握った場合、米国で『グリーン・アジェンダ』が再開され、多くのプロジェクトが中止されるリスクがある。要するに、今の時点では、日本が米国、ましてやアラスカでの石油・ガスプロジェクトへの参加を積極的に推進していくための前提条件は存在しない。また、ロシア・ウクライナ紛争の解決に伴いロシアに対する制裁が解除され、日本との関係が改善されれば、日本は『サハリン2』だけでなく、2028年の稼働開始が予定されている『サハリン3』からも石油を調達できるようになる。」