四年前に母さんと父さんが離婚したときからずっと2人きりだ。
だけどさみしくはない。
父さんとも、父さんの元に引き取られた二歳上の兄貴とも、一つ下の弟ともしょっちゅう会っているから。
そもそも2人が離婚したのは、我が家じゃそんなに重い話じゃなかったりする。
愛に生きる情熱的な母さんと、それを笑って見守る父さん。2人は夫婦の域を飛び出して、もはや親友というか戦友みたいな関係になったらしい。
「――俺は、行かないよ」
俺がきっぱりはっきり言うと、母さんはふうとため息をついた。
「やっぱりねえ、あんたならそう言うと思ったけど」
「兄貴たちは? もしかしたら行きたがるかもしれないじゃん、イタリア」
生け贄を推薦してみる。でも返ってきたのはそっけない視線だけ。
「まさか、幸が行かないのにあの子たちが来るわけないでしょ」
「……そんなもん?」
「そうに決まってるじゃない。まったくあんたは疎いんだから……」
とか言われても。あいつらの判断基準が俺、なんてありえないと思うんだけど。
「――まあいいわ。でも幸、こっちでちゃんと生活できるの?」
「だいじょぶだって。俺ももう高校生になるんだし、一人暮らしなんてどうってことないよ」
母さんはちょっと心配しすぎだ。
「それなら聞くけど、あんた、お米の炊き方知ってる?」
「そんなの……ほら、コンビニ行けばサトウのごはんとかあるし」
「ふうん? ならガスコンロの使い方わかる?」
まったく信用してないオーラがばりばり出てるぞ母さんよ。
「こんろ……コンロね、うん。安心して。このご時世、電子レンジがあればなんでもできるし」
「へええ? だったら、朝はちゃんと起きれるのかしら?」
「アハハ……任せてよ。目覚まし買うからさ……15個くらい」
現実的な一問一答を終え、母さんの口からでたのは盛大なため息。
こらこら、イタリアンとの幸せ逃げちゃうぞ。
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