少年は雨の中立っていた。
暗がりの路地裏の目立たないところで、ひどく不安定に。
その不安定な背中が___ふらりとかたむいた。
◯~◯~◯
少年___明浦路司はある男に、氷上に心を奪われてしまった。
しかし、氷上は彼を拒むようだった。
高すぎるスケートの諸費用、
そこまで裕福でない子沢山な家庭、
何より_______遅すぎる開始。
少年に人は言うのだ。
『十四?…………………誰も観てくれないよ。』
『遅すぎるよ。もっと小さい子しか見てもらえないって。』
『だいたい…………………お金払えるの?』
侮る、嘲る_____否定する声、声、声。
その声の数々を否定できない現実の中で少年は抗った。
いや、『抗う』というよりも『不思議とやめられない』から少年は氷上にいた。
スケートクラブに入れないならスケート教室に通い、
独力で少しずつ転ばず、滑れるようにはなっていた。
だから目先の一番の問題はただ一つ____________________金だった。
家は裕福とはいえないことからもちろん援助どころかスケートをやりたいということすら言わず、
小遣いではどうにもならない莫大なスケート費用に人知れず困窮していた。
友人からの誘いは一切断り、学校でのお昼代すら使わず、スケート代に回しても全く足りない。
歳的にバイトはとてもではないが不可能なことも彼にとって辛いことだった。
だから仕方のないことと言える。
彼はとうとう『まっとうなまっとうなバイト』を諦め、自らを犠牲にする『身売りのバイト身売りの』をするようになっていた。
◯~◯~◯
『…………………痛い。』
体がじくじく痛む。
今日のお客さんは『そういうプレイ『そういうプレイ』』が好きだったらしく身体は傷だらけになっていた。
そしてまた心もボロボロだった。
俺は人にとても言うことのできないような恥ずべき行為をしているのだから。
歓楽街はピカピカ光っているがもう子どもは本来寝るはずの時間。
親だって寝ている。それでもこんなとこにいれるのは親に友人の家に泊まるとウソをついているからだ。
それもまた心をえぐるような事実だった。
ずっとこんなのでいいのか。
こんなことしてまでやるべきことなのか。
寝不足と疲労と痛みと空腹は頭はどんどんネガティブな方向に思考を向かせていく。
雨すら降ってきて体がひどく冷える。
七、八位の子が跳べるジャンプですらできないのに。
何をやってるんだろう俺は。
『……………あ……れ?』
なんだか体が揺れるような気がした。
頭がズキズキと痛みを主張し始める。
(寝不足だからかな…ちょっと休憩すれば…………治るはず…)
少し危ないだろうが路地裏へふらふらと向かう。
じゃまになってしまうし少し休憩したいだけ。
だ から だいじ、 ょう、ぶな は ず?
◯~◯~◯
ドサッと言う音を立てて少年が倒れる。
路地裏でまるで屍のように倒れた少年は道行く歓楽街の人々の目にはうつらないようだった。
その身体に雨がしとしとと降り注いでいく。
ふとその雨は少年に当たらなくなる。
雨は真っ黒な傘がふせいでいた。
そしてその傘をもつ真っ黒な男がたたずんでいた。
黒の中の唯一の金色の瞳で少年を見つめて。
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- Shin_HeroFebruary 8, 2025