【大阪市】店を持つことだけが正解じゃなかった出張料理人・藤田さんが選んだ、料理人としての自由な生き方
「料理人は自分の店を持つべき」そうした固定観念から距離を置き、出張料理人という働き方を選んだ藤田さん。コロナ禍を契機に始めた出張料理は口コミで広がり、収入は会社員時代の約1.5倍に。フォロワー数よりも人との信頼関係を大切にしながら、国内外で経験を積み重ねてきた藤田さんに、料理人としての新しいキャリアの形と、そのリアルを聞いきた。
①インタビュアー
出張料理とはどんなお仕事なんですか?
藤田さん
出張料理とは、料理人が自宅などに伺い、レストランのような食体験を提供する新しい食のスタイルです。ホームパーティーを始め、小さいお子様のいるご家庭等でレストランに行きづらいと感じられている方や還暦祝いなどの親族の集まりに呼んでいただける機会が多いです。
②インタビュアー
どういった料理を提供していますか?
藤田さん
僕の場合はイタリアンがベースのコース料理がほとんどです。旬の食材を使った前菜に始まり、パスタ、フライパンで作る本格的なナポリ風ピッツァ、メインのお肉料理に、ドルチェ(デザート)です。
お子様にはベビーシッターである妻に相談し、年齢に合わせて大きさや食感などを考えたお子様用のお食事をご用意しています。
③インタビュアー
料理人といえば「自分の店を持つ」というイメージが根強いですが、藤田さんは少し違う道を選ばれていますね。
藤田さん
そうですね。独立する前は、僕も「料理人なら店を持つものだ」と当たり前のように思っていました。でも実際にフリーになった時に、「本当に店を出すことがゴールなのか?」と、立ち止まって考えるようになったんです。
コロナ禍が生んだ「出張料理」という選択肢
①インタビュアー
出張料理を始めたきっかけは、やはりコロナ禍だったそうですね。
藤田さん
はい。最初のきっかけは、友人宅で料理を提供したところからスタートしました。
②インタビュアー
最初から大きな規模で始めたわけではないと。
藤田さん
全然です。飲食店に行きたくても行けない、外食自体に不安を感じる人が増えた時期でしたので。そんな中で、「家にいながら、お店の味や雰囲気を体験できる方法はないか」と考えたのが始まりです。
③インタビュアー
そこから身内向けではなく、一般のお客様に向けて始めたのですか?
藤田さん
はい。まずは出張シェフのマッチングサイトに登録して、身内ではないお客様に料理を提供しました。そこで初めて、「お金を払ってくれる第三者からどう評価されるのか」を真正面から受け止めることになりました。
問い合わせ殺到、収入は会社員時代の1.5倍に
①インタビュアー
状況が一気に変わったタイミングがあったとか。
藤田さん
退職をきっかけに新たな就職先を探しつつ、副業として続けていた感覚だったのですが、想像以上に問い合わせが来ました。正直、こんなに需要があるとは思っていなかったです。
②インタビュアー
収入面でも変化が?
藤田さん
結果的に、勤めていた頃の1.5倍くらいの収入になりました。「これは出張料理でやっていけるかもしれない」と、初めて現実的に思えた瞬間でした。
フォロワー数よりも「人」が仕事を連れてくる
①インタビュアー
SNSの影響力も大きかったのでしょうか。
藤田さん
実は、インスタグラムのフォロワー数はそこまで多くありません。でも「やるからには全力でやろう」と決めて、出張料理に本気で向き合っていました。
②インタビュアー
紹介が多いとか。
藤田さん
そうですね。お客様がお客様を紹介してくださって、気づいたら想像もしなかった仕事の話が来るようになりました。
③インタビュアー
具体的には?
藤田さん
プライベートジェットの機内食を担当したり、海外の要人に関わる仕事のお話をいただいたこともあります。自分がやってきたことが、こんな形で返ってくるとは思っていませんでした。
出張料理だけにとどまらない、料理人としての仕事
①インタビュアー
出張料理以外にも、飲食のプロデュースをされていますね。
藤田さん
はい。おにぎり屋さんやクレープのキッチンカー、会員制の高級焼き鳥店、イタリアンのメニュー制作などにも関わってきました。料理人の仕事は、厨房に立つことだけではないと思っています。他にも料理教室の講師や有名企業からのご依頼でポップアップレストランのシェフを務めさせていただいたりしています。
海外に出たことで得た、もう一つの視点
①インタビュアー
海外経験も藤田さんの価値観を大きく変えたそうですね。
藤田さん
ずっとイタリアンをやってきたこともあり、イタリアに行ってみたいという思いはありました。ただ、英語も話せず、「お金が貯まったら……」と漠然と考えているだけでした。そんな中、妻に「いつ行くの?」「お金はいくら必要なの?」と聞かれ、「行けたらいいな」という願望から、「とりあえず行ってみよう。お金のことはなんとかなる」と背中を押してもらい、2024年6月に初めてイタリアを訪れました。
②インタビュアー
フリーランスになって8ヶ月目で、海外ですね。
藤田さん
はい。思い切った決断でしたが、イタリアで現地視察を行いました。本やネットで見ていた景色や食事を、五感を使って感じることができ、言葉にできない感動がそこにはありました。
③インタビュアー
翌年もイタリアへ。
藤田さん
はい。翌年の2025年6月にもイタリアを訪れ、ピッツァの大会にも出場しました。その後、フランスやスペインにも足を運び、2025年11月にはメキシコ、12月にはシンガポールにも行きました。会社員時代は連休を取ることが難しかったので、フリーランスになったことで得られた時間の使い方や、ある程度のお金の余裕によって、海外旅行を楽しめるようになったのだと改めて感じました。それもこれも、妻が背中を押してくれたおかげで、心から感謝しています。そして妻には、本当に頭が上がりません。
成績よりも大切だった「文化を知ること」
①インタビュアー
大会ではどんな手応えを感じましたか。
藤田さん
結果はまずまずでしたが、それ以上に、ナポリの市場で食材を仕入れ、現地で調理し、ピッツァを作れたこと自体に大きな感動を覚えました。
イタリア料理は郷土料理であり、その土地の文化を知ることが何より大切だと改めて実感しました。だからこそ、より一層深く知りたいと思うようになりました。
藤田さんの強みは「人柄」
①インタビュアー
多くの依頼が来る理由は何だと思いますか。
藤田さん
料理の技術以上に大切なのは、人柄や接客だと思っています。「美味しい」だけであれば、さまざまなシェフがいますから。駆け出しの頃、梅田のレストランで働いていた際に、料理だけでなくサービスの重要性を徹底的に学びました。
②インタビュアー
料理人として大切なことですね。
藤田さん
はい。「美味しい」と言われるのは及第点にすぎません。その後も、またお願いしたいと思ってもらえるかどうかが、本当の評価だと考えています。
出張料理という働き方のリアル
①インタビュアー
これから料理人を目指す人へ、伝えたいことは?
藤田さん
出張料理人は、稼げることもありますが、決して簡単な仕事ではありません。料理、接客、サービス、おもてなし、戦略、経営まで、すべてを一人で担う必要があります。ただ、たまたま僕にはこれまでの経験が重なり、この働き方が向いていたのだと思います。レストランでも同じですが、料理の技術はもちろん、それに加えた+αが必要なのではないかと感じています。
これからの目標と、描いている未来
①インタビュアー
最後に、今後の目標を教えてください。
藤田さん
出張料理は今後も続けていく予定です。規模を広げるため、拠点となるキッチンを構える計画を立てています。そこに窯を設け、ピッツァも提供したいと考えています。また、3月にはナポリピッツァの日本大会が控えているため、ナポリ認定のピッツァ職人の資格も獲得したいと考えています。
これまでのお仕事と同じように、思わぬ形で舞い込んでくる飲食にまつわる仕事には、どんな形であっても挑戦していきたいと思っています。どうなるかは分かりませんが、これからも自分のペースを大切にしながら、料理人として励んでいきたいです。
ABCテレビ主催のChef-1グランプリ2026大会で準決勝進出されています。
今後も目が離せませんね♪
取材後記
取材を通じて、料理人のキャリアは「店舗を持つか否か」という二択では捉えきれないことが明確になった。藤田さんの事例は、出張料理という形態が一時的な代替手段ではなく、継続的な職業として成立し得ることを示している。技術力に加え、接客や信頼関係の構築、さらには文化理解を重ねてきた点が、仕事の広がりにつながっている点も印象的だった。働き方の多様化が進む中で、藤田さんの取り組みは、専門職の新たなキャリアモデルの一例として注目に値する。
以上、愛ラブ街歩き@EMI がお届けしました。今後の参考に記事下部に設置のリアクションボタンをポチッ!と頂けたら嬉しいです♪