【イラン戦争が引き起こす世界的食糧危機】
イラン戦争は肥料市場に深刻な影響をもたらし、これは世界的食糧危機につながる恐れがある。
国連の食糧農業機関で原料分野の責任者を務めたアバシアン氏は英紙テレグラフの取材で肥料市場の危機的状況を次のように分析した。
「明日ホルムズ海峡が開通するだけでも十分まずい状況だが、戦争がさらに1ヶ月以上続けば、我々はこれまで経験したことのない、まさに恐るべき規模の危機に直面することになるだろう」
米・イスラエルによるイラン侵攻の影響で、尿素、アンモニア、硫黄の供給は約一か月も間途絶えている。テレグラフ紙によると、世界における窒素肥料貿易の45%が影響を受けている。さらにいまは春の種まきが始まるころ。肥料価格の高騰は農産物の価格に影響を与える。
JPモルガンの試算によると、戦略肥料の世界的備蓄は現在約25日分しかなく、その後は農業生産に物理的な影響が出始める。海峡が長期間閉鎖されたままになれば、ペルシャ湾の貯蔵タンクは1か月以内に満杯になり、主要な化学工業団地が操業停止に追い込まれる。そしてこれらの工場を再稼働させるには4~6週間かかるため、緊張が緩和された後も供給の遅延が生じる可能性があるという。
肥料価格にはすでに影響が出始めている。アンモニアは687ドルに達し、前年同月比で81.4%の上昇を記録している。
日本も肥料の多くを輸入に頼っている。農林水産省によると、日本はカリウム肥料のほぼ全量が外国産。2024年度はカナダ産が78%、イスラエル産が7%、ヨルダン産が4%などとなっていた。
カナダ産塩化カリウムは戦争前の2026年2月時点で1トンあたり372ドルで取引されており、前年同月比で16.86%の上昇となっており、価格はただでさえ上昇傾向にあった。
塩化カリウムの価格も国際情勢の影響を受けやすい。その例として、ウクライナ危機に伴う対ロシア・ベラルーシ制裁によりカナダ産塩化カリウムの価格は一時、1202ドルまで高騰。ホルムズ海峡封鎖の影響でも同様の価格高騰が懸念されている。