だからこそ、ここへ来て彼が仕事量や体力の限界を口にして、家庭とのバランスを意識しているように見えることが話題になる。それは、テレビ業界に長く根付いてきた「売れっ子は休みを取らない」「求められる限り出続けるのが真のスターだ」といった価値観が変わりつつあることを象徴しているからだ。

 かつてのテレビ界では、睡眠を削り、私生活を後回しにして、仕事にすべてを捧げることが半ば美徳として扱われてきた。視聴者もそのような過剰労働の上に成り立つスター像を当然のものとして受け入れてきた。

有吉の判断はセルフプロデュース

 しかし今は違う。働き方改革やコンプライアンス意識の浸透によって、一般社会でも「仕事のために人生のすべてを差し出すこと」が無条件に称賛される時代ではなくなっている。高市早苗首相が自民党総裁選で勝利を収めた際に「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と語ったことが一部批判されたのも、その言葉からにじみ出る労働観があまりにも時代錯誤に見えたからだ。

 長く第一線を走ってきたタレントにとって本当に必要なのは、レギュラー番組の数を増やすことではなく、自分の核になる仕事を見極めることだ。数を抱え込むよりも、自分のキャラクターや役割が最も生きる場を探す。その判断は、衰えや失速の表れではなく、セルフプロデュースによるものである。

 もちろん、今回のレギュラー番組終了に有吉本人の意向がどこまで反映されているのかは定かではない。番組終了にはさまざまな事情が絡むものであり、タレント側の都合だけで決まるわけではない。ただ、有吉自身がたびたび語っている通り、その事実から彼の働き方の方針転換を読み取ることはできる。

 タレントとして誰よりも場の空気を読むことに長けている有吉は、時代の変化も敏感に感じ取っていて、自分の働き方や生き方を常にアップデートしている。ワークライフバランスを意識した彼の仕事スタイルは、新しい時代の成熟したスター像を象徴するものなのかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)

[AERA最新号はこちら]