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#2:BBD「評価の違いは文化の違い」は本当か──米国ドキュメンタリー業界の問題点からの一考察

第8回連載の第2回にあたる回を、集英社新書プラスに寄稿しました。

・第1回:物語化されていない事実を探して
・第2回:(←今ここ)
・第3回:3月16日週公開予定

これを書いた背景は、本作品を紹介する文章には、海外で高い評価を樹立したという点が、その作品の価値の証明であるとする表現によく出会うことが理由です。

本制作側の宣伝も、そういったメッセージをはっきり打ち出しているように見えます。日本向けの予告編からは、

「日本人監督として59年ぶりの選出!」(英国アカデミー賞)
「日本人監督として初の快挙!」(米国アカデミー賞)
「世界60以上の映画祭で、大絶賛!」

と、わずか1分30秒の予告編のなかで、数秒おきにそういった黒いスクリーンに白抜きの文字が大々的に登場。

芸術的なトレイラーとは程遠い😵‍💫ですが、BBD制作側は、そういった情報こそがこの作品の価値を高めるものであり、バリデーションと捉えているように見えます。伊藤詩織監督自身も、米アカデミー賞に長編ドキュメンタリーのカテゴリーでノミネートされた初めての日本人監督となったことは自身の誇りと話しています。

一方、ドキュメンタリー監督として国際的に活躍する在日コリアン2世のヤンヨンヒ監督は、それとは対極的な見方を示すことは興味深いものです。

ヤンヨンヒ監督は、「原産国での評価が一番緊張する」「そこで承認されてはじめて、自信を持って海外でも上映できる」と、自身のTwitterで述懐。

「ドキュメンタリーの特性として”原産地” にいる当事者だけが確認(納得、抗議、修正など)できるというトリッキーな面があります。当事者=被写体

例えば「スープロイデオロギー」を上映するに当たっては、 海外での上映よりも(映画祭の興奮や審査に対する緊張はあるけれど)、被写体がいて、テーマである在日コリアンたちがいる日本での上映、済州4.3に詳しい研究者がいるソウルでの上映、そしてどこよりも済州4.3研究所があり遺族たちがいる済州島での上映が緊張し怖くさえあるわけです。

個人の許諾の問題、ナレーションや細かい表現に間違いが無いか。生きた心地がしないほどに緊張します。そこで「OK」が出た時に初めて、自信を持って海外でも上映しながら「原産国や地域」、被写体に対する具体的な話をメディアの前で観客とともにできるのではないかと。(後略)

ヤンヨンヒ監督公式X

ドキュメンタリー監督にとって、一番怖いのは「原産地での評価」である、と。これは、国内から作品の公開を始めるのは難しいから、国際的な評価を風にして日本公開を実現しようと考えたBBD製作陣とは真逆の考え方にも思えます。

ところで、BBDは、ようやく国内公開を迎えた後、その作品越しに、果たしてどのような議論、そして対話を喚起したのでしょうか。

BBDが公開されて3ヶ月。上映館は1→77館まで拡大。時を同じくし、小学館のマンガワン事件(漫画家による札幌の高校生へのおぞましい性暴力事件)が発覚し、映画監督・榊秀雄には、映画監督の立場を利用して抵抗できない状態の20代女優らを強姦したとして懲役8年の実刑判決が降りるなど(控訴中)、ぞっとするような性暴力に関するニュースが日々流れていきます。


つまり、BBDのような作品をリリースするには追い風になるであろう空気が充満しているはずなのに、なんだかちっとも反響し合っていなく思えてなりません。

BBDは阿鼻叫喚の議論を引き起こしました。特にSNSとインターネット上でのバトルは凄まじいものがありました。でも、それは単に「伊藤詩織」という個人への関心だけなのか。

BBDはあくまでBBDとして議論され、伊藤詩織さんの事件はそれ単独のものとして注目を集めるが、それ以上の拡張性を持たないのは、観る方の問題?評論家の問題?

ではなぜBBDは、上映を先行させた欧米で評価を得たのか?
性暴力に理解がある社会だからか。それとも、記者や評論家がきちんと仕事をするから?と、私はそれらが理由であるとは思わないわけですが、ではなぜ?について、米国の映画学の教授に紹介された文献を活用しつつ、考察を出しました。



BBDが欧米でウケたワケ、といったら身も蓋もないですが。


BBDは、海外で、どんな認められ方をしたのか──。



「海外で認められたから」→→→「素晴らしい作品」というリニアな物事の見方の間にあるあれやこれについて、新しい思考のレンズになれば幸いです。


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