「ファンの期待は裏切るためにある」劇場アニメ『パリに咲くエトワール』谷口悟朗監督が語る創作哲学。単独インタビュー【後編】

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』
©「パリに咲くエトワール」製作委員会

20世紀初頭のパリを舞台に、夢を追う少女たちを描く劇場アニメ『パリに咲くエトワール』が3月13日(金)より公開される。谷口悟朗監督にインタビューを敢行。「映画館で観る」ことを前提に設計された本作の制作背景、クラシックバレエと薙刀(なぎなた)シーンなどの演出面のこだわり、創作哲学に至るまでお話を伺った。【後編】(取材・文:ばやし)
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當真あみの“今”にしかない透明感

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』
©「パリに咲くエトワール」製作委員会

―――今回、物語の主人公となる2人の少女、フジコの声を當真あみさん、千鶴の声を嵐莉菜さんが務めています。谷口監督は「このキャリアの當真さんと出会えて良かった」とコメントされていましたね。

「當真さんは声優として劇場アニメに出演するのが2回目で、彼女の持っている声質の中に存在する、ある種の透明感がナチュラルに出るのが今の時期だと思うんですよね。

もちろん、ある程度當真さんがこれからキャリアを積んで演じられる部分もありますが、それはもはや技だと思うんです。彼女が技として理解した上で演じるとなると、私が考えているフジコとはちょっと違っていたかもしれません」

―――声優初挑戦となった嵐さんのお芝居はいかがでしたか?

「嵐さんは声優を務めることが完全に初めてだったので、そのいっぱいいっぱいなところが千鶴というキャラクターに上手くつながってほしいと思っていました。

正直なところ、オーディション段階では彼女の知名度はまだそこまで高くなかったこともあり、『それでいいの?』という話はありました。でも、嵐さんにはこれから売れるかどうか定かではない、後ろに下がれない切迫感が良いなと思ったので、彼女を抜擢しました」

―――ほかの出演キャストも豪華な方々が並んでいますが、どのような経緯でキャスティングが行われましたか?

「門脇(麦)さんと尾上(松也)さんは、私としてはぜひ入っていただきたいとお願いしました。特に門脇さんの役者としての姿勢や向き合い方が私はすごく好きだったので、一緒にお仕事したいと思っていました。

尾上さんに関しては、最初は多くの候補者の一人、という感じだったのですが、ほかの作品で演じられている役を観たり聞いたりして、充分表現できるだろうという確信めいたものがありました」

―――実際に門脇さんや尾上さんが演じられている姿を観ていかがでしたか?

「私としては早乙女(太一)さんや角田(晃広)さんも含めて、すごくいい感じでハマったんじゃないかなと思ってます。

ひとつだけ計算外だったのは、私は津田健次郎という人を声優枠で考えていたのですが、取材を受けるたびに顔出しの役者枠として扱われていることです(笑)。まぁ、枠なんてものは宣伝の区分でしかなくって、表現の前にはどうでもいいことですけどね」

ファンの期待は“裏切る”ためにある

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』
©「パリに咲くエトワール」製作委員会

―――先ほどのメカデザインの話にも通じますが(※インタビュー【前編】にて)、谷口監督が過去に制作された作品を観ているからこそ、本作に期待する部分もあるのではないかと感じました。

「私はそういった過去の実績に期待する人のかなりの部分は、実は邪魔だと思っています。

その人が期待するのは私の過去作から得られた何らかの快楽であり、言ってしまえば、私をその中に閉じ込めようと思ってる人なんですよ。もちろん私の作品のファンになってくれるのはありがたいですが、作品は過去。私の将来は私だけの物です」

―――それでも谷口監督ならば、期待を裏切らない作品を届けてくれると信じているファンの人も多いのではないでしょうか?

「広いレンジで応援してくれる人には感謝しています。ただ、特定作品や特定の快楽のみを私に求める人、それもファンだと言えますが、それでもそういうファンの期待は“裏切る”ためにあると思ってます。常にこの作品ならではの面白さをお届けしたいというのが、私の基本的なスタンスだと思っていただきたいです」

―――最後に、劇場公開を心待ちにしているファンの方にメッセージをお願いします。

「恐らく今までの作品で得た快楽とは少し違う方向性だと思いますが、十分に満足いただける作品になっています。同時に本作は映画館で観ることを想定して作られています。映画館で観ていただかないと、細かい音の使い方や画面に込めた意味が分かりにくくなって、出来事の羅列にしか見えなくなってしまう。だから、ぜひとも映画館で観ていただけるとありがたいです。オリジナルアニメでもまだこれだけやれるんだと、日本アニメの元気さも感じていただけると嬉しいです」

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』谷口悟朗監督インタビュー【前編】へ

【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
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【了】