【特集】生徒の心の成長を促すキリスト教主義の教育…同志社国際
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同志社国際中学校・高等学校(京都府京田辺市)は、キリスト教教育や平和教育を通して多様な価値観や考え方への生徒の理解を深め、心の成長を促している。今年度は、中1の「聖書」の授業の中で、朝の礼拝で聞いたさまざまな話に対し、自分の考えを記させる学習活動を始めた。書くことを前提に聞くことによっていっそう話に集中できるといい、そこから多くの気付きが得られることを期待しているという。
朝の礼拝を活用し「書く」「聞く」力を養う
同校の一日は、全校生徒が参加する朝の礼拝からスタートする。中学は校内のコミュニケーションホール、高校は隣接する新島記念講堂に集い、約20分間の静かな祈りの時間を過ごす。礼拝では毎回、牧師や教職員が説教・奨励の言葉を生徒に語りかける。ときには生徒が留学や学校生活での経験を話す機会もあるという。
「アダムとエバが互いに罪をなすりつけた、このおろかさについての話を聞きました。罪をなすりつける人間の弱さ。これを強みに変える方法があるのではないかと思いました。正直な人間になりたいです」。これは、中1の男子生徒が書いたノートだ。また、中1の女子生徒は「人は説明のつかないことに対して恐怖を覚えたり、ときに攻撃対象としてとらえてしまったりする」という話に対して、「説明のつかないようなことに対して、すぐに嫌な感情を向けるのではなく、理解する努力をしていきたいです」と感想をまとめている。
これらは、宗教科の
「礼拝での話をしっかり聞けることと同時に、書く力も養うために始めた取り組みです。書くことを前提にすることによって、より話に集中するようになり、聞く力も養われるのではないかと考えています。驚くほどたくさんの感想を書いてくれる生徒もいます。生徒それぞれの話の受け止め方なども分かり、ときには話し手の教員にもフィードバックしています」
「生徒たちは礼拝の時間を通じて、聖書の話も含め、たくさんの話を聞きます。その中から、いろんなことを感じてほしいのです。中高生のうちは、話の意味することや話し手の思いに気付けないこともあるかもしれません。でも、卒業生の中には礼拝中の話を思い出し、ずっと心に残っている話があると話してくれることがあります。いつか何らかの気付きが得られるように願い、私たちは生徒の心に種をまき続けています」
「聖書」の授業で多様な価値観や考えを知る
こうしたキリスト教教育の目的について朴元教諭は、「創立者の新島襄が目指したのは、キリスト教主義をベースとした心の教育により、世界に目を向けた『良心』ある人物を育てることです」と話す。
同校は、教育理念の一つとして「キリスト教主義」を掲げているが、生徒たちにその価値観を押し付けることはしないという。
「礼拝や聖書の授業を通じてキリスト教の視点や考え方を生徒と共有しますが、それに共感するかどうかは生徒次第です。ただ、本校が大切にしているキリスト教を否定しないでほしいと生徒には伝えています」と、朴元教諭は話す。
「他者の価値観や考え方を否定しないというのは、宗教の話に限らず、本校で大切にしている考えです。帰国生が半数以上を占め、多様なバックグラウンドを持つ生徒がおり、それぞれ異なることが当たり前な環境の中で、相手を否定せずに相互理解する意識を身に付けてほしいと考えています」
必修科目として各学年で週1回行われる「聖書」の授業でも、多様性を重んじる姿勢は貫かれている。「キリスト教ではこんな考え方をするけれど、あなた自身はどう考えるかと問いかけます。答えを提示せず、自分の考えを言葉や文章で表現し、生徒同士で話し合う機会を重視した授業を展開しています」
「『聖書にはこんないい話があるよ』と終わらせるのではなく、例えば、『2000年以上前の時代と同じように、今の社会ではどのように苦しんでいる人がいるのだろう』と問いかけるなど、現実社会に照らし合わせて生徒自身が考え、気付きや学びが得られる授業を意識しています」
「聖書」の授業は、多様な国・地域、環境、文化で育ってきた生徒が共に学んでいることから、それぞれ異なる価値観や考えがあると実感できる時間にもなっているという。「普段の学校生活の中でもお互いの違いを認識・理解する場面はありますが、『聖書』の授業では他の生徒の意見や経験について聞く機会もあり、相互理解に役立っているのではないかと思っています」
「聖書」の授業以外にも、宗教に関わる授業として高3の選択科目に「宗教学」「聖書講読」がある。朴元教諭が担当する「宗教学」では、キリスト教に限らず幅広いテーマで宗教関連の学びを深めているという。「宗教は、国際的な政治、経済、紛争などの問題にも大きく関わっています。宗教学の視点で、さまざまな事象について生徒と共に話し、考えています。この授業を選択した生徒が大学で宗教に関連する学びを深めているという声を聞くこともあり、この先の学びにつながるような知識・関心を高められる授業を行いたいと思っています」
平和教育を通じて世界を知り、客観的な判断力を身に付ける
同校は創立当初から平和教育に取り組んできた。研修旅行では、中2で長崎、高2で沖縄を訪れる。3学期3月の研修旅行に向けて、それぞれの学年は1年を通して事前学習を行う。講演会や調べ学習を行うほか、国語や社会などの各教科でも関連する授業を実施する。事前に知識を深めた上で、現地での見聞を加え、平和について考える。さらに研修後には、「平和を作り出す人」と題した冊子を作成し、研修旅行を通じて感じ、考えた平和への思いをまとめる。
朴元教諭は、「キリスト教教育や平和教育は、教科を超えて生徒の心の成長を促すものであると考えています」と言う。「私たちは生徒たちに、一人の人間として、自分の周囲を含めた世界をきちんと見ながら、客観的に物事を考えて判断できる人になってほしいと思っています。そうした人になるには、想像力を働かせて人や社会を見る力や判断するための知識が必要です。世界を知り、多様な価値観を理解し、その中で自分がどのように生きていくのか。生徒が自分自身の考えを養う過程で、宗教・平和教育が視野を広げるアプローチの一つになればと願っています」
(文・写真:溝口葉子 一部写真提供:同志社国際中学校・高等学校)
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