「ILY.」というマンガを読みました。
「俺はずっと、愛理のこと想ってるよ。」姿をくらました高校時代の恋人に、届かぬメールを送り続ける基生。遠い思い出にすがり続けるそんな彼のもとに、彼女は突然現れた――10年前と、全く変わらない姿のままで。1通のメールから始まる、異色の恋愛ミステリー!
公式のあらすじはこんな感じ。
ビジュアルに非常に特徴のある作品で、ざらついたドットの絵+オールカラーという形で作画がされている。これが平成を感じさせてすごくいい雰囲気でしたね。ただ「ペイント」で表示したような粒状の絵で珍しい、というだけではなく、柔い雰囲気になるときはそれがギャグっぽく働き、逆に決めゴマで使用したときには「凄み」になるような、とてもいい使われかたをしていると思います。
とりあえずこの世界観を視覚で見れるだけで読書のもとは取れたな、となるようなクオリティではないでしょうか。
自分にしか見えない、「仮想の存在のカノジョ」(主人公のことを無条件に愛してくれているが、その背景は見えない)との関係を通じて、主人公が社会とのつながりを取り戻していくというストーリーで、……これももうあまりにも平成。同世代のオタクとしては、この都合のよさをどう乗り越えていくかが青年期のテーマであったわけですが、それがひと段落ついた今、改めて純粋なこの愛と救済のモチーフを見返すと、何か心打たれるものがありますね。見事に決まったあの時代の「再演」*1といえる作品なのではないでしょうか。
だからと言って、懐古的なだけでオリジナリティがない、というような作品ではない。テイストが平成なだけで、過去作品とかを引用して訴えかけているわけではないし、むしろ平成の反省点はある程度そぎ落として、エグみの少ない、こういうラブストーリーを心がけて作っているような感じがします。
絵の面でのオリジナリティはいうまでもない。最後の結末も、このコンパクトさも、平成という時代が現実で終わったからこそ、さかのぼってやっとできる畳みかただったといえるのではないでしょうか。
絵もストーリーも、最終的に好き嫌いはあると思うので、誰にもはすすめられない作品ではある。これは難しくて、過去のカルチャーをどう解釈するかという話なので、このテイストに興味をひかれたからといってだから大好きな作品として読み終えるとも限らないんですよね。
でも、全3巻とタイパはいいので、気になったら読んでみて損はない作品といっていいのではないでしょうか。
*1:だってこの作品、「メール」から始まっていますからね。作中の設定は2020年なのに