悪友のような幼馴染が恋を自覚する話
昼休み。
自分だけの隠れ家でもある資料室にこもっていた自分のところに、幼馴染が押し掛けてきた。
勝ち気で、男勝りなとことも多い彼女にしてみればいつも通りの行動だ。
けれど、その表情はどこか普段とは違っていて。
「当たり前すぎて忘れてたよ。知ってたはずなのに知らんふりしてた。いつもいつも感じてたのに、いつも通りだからって無視してた」
彼女が気づいたこと。
自分が目を背けていたこと。
この日、些細なきっかけで、なあなあの日々は終わりを告げた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
16作目です。
最近ASMR用の台本が多かったですが、
今回はある意味初心に帰って告白シチュの台本です。
台本っつーか単なるシナリオ形式の掌編みたいになってますけどそれはいつものことなので悪しからず。
前回から大分投稿が空いてしまいました。
コミケの原稿やっていたから、というのが言い訳です。
あっちは大分普段の投稿とは趣向や試みの違うタイプのモノを書いているので、
感覚を忘れないようシチュボの方もコンスタントに続けていきたいと思います。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
※フリー台本です
※ご自由にお使い下さい
※演じるに際し読みやすいように改編していただいても構いません
※ご使用の際、作者名などを添えていただけると嬉しく思います
※ご指摘やご意見などございましたら、twitterのDM等でご連絡ください
※その他、ご相談やご報告など、お気軽にお声がけいただけると幸いです
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(校舎の片隅、静かな資料室)
(唐突に引き戸が開け放たれる)
よう。
やっぱり『また』ここだったな。
(ズカズカと入ってくる彼女)
ったく……せっかくのお昼休みだっつーのに、どうしてお前はこんな薄暗い資料室なんかに篭りたがるんだ?
図書室ならともかく資料室って。
青春する気あんの?
1人でご飯食べたいって気持ちは分からんでもないけどさ、いくらなんでもやりすぎってもんでしょ。
こんなのトイレで食うのとあんま変わんないじゃないか。
アタシが居なかったら悲惨の一言だぜ、毎度探しにきてくれる幼馴染に感謝しな?
(図々しく隣に座ってくる)
……ん?
ああ、アタシの昼ごはん?
今日は珍しく母さんが寝坊しちゃってさ。購買のパンでもう済ませた。
だからアタシのことは気にせずのんびり食っててくれよ、箸動かしながらでもお喋りはできるだろ?
……おいおい。
どうした?
仕舞うことはないだろ、せっかくお前のお母さんが作ってくれたお弁当だぞ、ちゃんと全部食べないと失礼……いや、後で食べるってお前、昼休み以外のいつそんな暇があるっていうんだ。
……な、なんだよ。
そんなに変な顔してるか? アタシ。
……いや、別に。
嫌なことなんか無いって。
普通だよ。普通。
……ったく、しつこいなぁ。
(乱暴なため息をつく彼女)
そうだよ、あったよ。
ちょっとばかり、嫌なことがな……違うな、嫌なことじゃない。ザワザワするっていうか、モヤモヤするっていうか、とにかく変な感じなんだけど、悪いことじゃないはずなんだ。
……分かってるって。白状するよ。
ぶっちゃけ、最初っからお前に聞いてもらおうと思って探してたんだからな。
けどその前に一つ聞かせてくれ。
お前さ、なんでアタシに何かあったって分かったんだ?
……顔見りゃわかる、か。
そうなんだろうな。
根拠とか理屈とか今更必要ないよな。
……なるほどなぁ。
考えたこともなかったけど、そうか、これってそういうことなんだな。
……だから。
(大きく深呼吸をする)
さっき、さ。
購買でパン買って、教室に戻った時にさ。
恋バナしてる奴らがいたんだよ。
お前も知ってるだろ? 保健委員のあいつ……そうそう、眼鏡の子。あいつに思い人がいるって仲間内にバレたらしくて、誰だそいつは、みたいな話をしてた。
わざと聞き耳立ててたってわけじゃないんだが、アタシの席の真横でやってたからさ、あいつらが多少声を潜めたところでどうしても丸聞こえになっちゃってたんだよ。
まあ、アタシも年頃ですし? 惚れた腫れたに興味がないっつったら嘘になる。だから、漏れ聞こえるのをいいことに、ちょっと盗み聞きさせてもらうことにしたんだ。
まさか。
まさかお前の名前が出てくるなんて、思ってもなかったからな。
しまった、とは思ったけど、聞いちゃったものはどうしようもない。
むしろ続きが気になったくらいだ。ヤロウのどこにそんなモテる要素があったんだ? みたいな興味が湧いてきて、趣味が悪いと知りつつ耳を傾けてた。
そしたら、さ。
あいつ、諦める、って言ったんだよ。
アタシがいるから。
見るたびにお前にくっついてるアタシがいるから、自分には無理だ、って。
……流石に、気まずくて。
逃げた。
教室から。
トイレに行くフリして……というか実際トイレに逃げ込んで。
ちょっと考えてみて、でも全然すっきりしなくって。
アタシは悪くない、って思おうとしたんだ。
アタシがお前とつるんでるのはそりゃ事実だよ?
小学校の頃も中学校の頃も、今も、まだ分からないけど多分この先も。
けどそれは、生まれた頃から家が近くて、親も古くからの知り合い同士だからってだけじゃないか。
幼馴染。
友達。
それ以上じゃ、ないはずじゃないか。
だからあいつが諦める必要なんか全然ない。
アタシのことなんか気にせずさっさと告白しちゃえばいい。
それで実を結んだのならおめでとうだし、儚く散ったところで失恋もまた青春。いずれにせよあいつ自身の問題でしかなくて、アタシが居るとか居ないとかは関係ない。
だって、アタシとお前は恋人じゃないんだから。
なのに勝手に諦めたのはあいつの早とちりで、アタシが気に病む必要なんかない。
……そんな言葉だけなら、この程度の理屈だけなら、いくらでも作れたんだけどさ。
自分でも全然納得できなかった。
騙しきれなかった。
どうしてこんな追い詰められた気分になるのか、まったく理解できなかった。
これは1人じゃなんともならないぞ、って思ったから、話を聞いてくれそうなやつを探すことにした。
真っ先に浮かんだのは、お前の顔だった。
お前以外、思いつかなかった。
(ふっ、と短く笑う)
以上、つまんない話はここまでだ。
……ああ、別に何も言わなくていいぞ。
話したらすっきりしたっていうか、なんか、お前の顔みたら全部解決したから。
元々相談じゃなくて愚痴だからな、かっこいいアドバイスを求めてるわけじゃないんだ。
悪いな、聞いてもらっちゃって。
……いや、強がってないよ。
もし、アタシの様子がまだおかしく見えてるなら、それはアレだ、自分が悩んでたことが想像よりバカバカしかったからつい呆れちまったってだけだ。
本当、バカみたいだ。
なんでこんな簡単なことを理解しようとしてなかったんだろ。
……なんだよ、そんなに知りたいのか?
聞いても面白くないぞ。
わかった。
じゃあ、逆に質問だ。
お前、アタシに彼氏ができたら、どう思う?
これからはこの人がアタシの大事な人です、この人と並んで歩んでいきます。
一緒に過ごす時間は減るけど、これからも友達としてよろしくね。
……アタシがそう言ったら、お前はなんて言うのかな。
(答えに詰まる)
あははは!
そっかそっかぁ、分かりやすいなぁ!
……同じだよ。
アタシも、まったく同じ。
譲りたくない。そう思ったんだ。
だってさぁ。
ずっと一緒だったじゃん。
小学校の帰り道によく寄ってた交差点の駄菓子屋も、急な夕立の日に雨宿りした川沿いの東屋も。
中学生の時に初めて行った科学館のプラネタリウム、卒業式の日の夜に食べた背伸びしすぎた値段のイタリアン。
どの思い出を振り返っても、必ずお前がそこに居るんだ。
今更離れられないよ。
お前の隣が知らない誰かの居場所になって、ある日を境にアタシのアルバムからお前の姿が無くなって。
全部が過去になって、ふと顔を思い出すたびに昔のことだって諦めて。
それじゃあまりに悔しいじゃないか。
悲しいし、寂しいし、そんなの嘘だって言いたいじゃないか。
当たり前すぎて忘れてたよ。
知ってたはずなのに知らんふりしてた。
いつもいつも感じてたのに、いつも通りだからって無視してた。
でも、気づかされちゃった。
アタシ、お前と一緒じゃないと嫌なんだ。
手放したくない。隣にいてほしい。
下らない独占欲だよね。
我儘で、自分勝手で、独りよがりで。
自分でも抑えきれない、迷惑な思い込みだ。
……だけど、きっと。
この幼稚な感情のことを、恋って呼ぶんだろう?
(彼女が立ち上がる)
ちょっと、目を閉じてくれないか。
(言われたとおりにする)
(見えないまま、誰かに抱きしめられる)
……アタシは。
多分、酷いことしてるんだろうな。
あいつお前のこと好きらしいぞ、なんて本人にチクって。
そのくせ自分は欲しいモノを手に入れようとして。
バチが当たって当然だ。
あいつに嫌われてもしょうがないよな。
だけどそれで構わない。
誰に疎まれようが止まる気はない。
後ろ指さされようが知ったことか。
仲間外れで上等だよ。
一人ぼっちじゃなきゃ、それでいい。
これかもこうしていられるなら、他には何にもいらないんだ。
なあ。
今日みたいななんでもない日にこんなこと言うのもおかしな話だけどさ。
幼馴染は、今日で終わりにできないかな。
明日からは……いや、今からは。
恋人ってことに、できないかな。
すごく恥ずかしくて、照れくさくて、今更そんなのって思われるかもしれないけど。
ごめんな、アタシは弱いんだ。
今までと同じじゃ不安なんだ。
過去と違う名前を付けないと、未来で変わっちゃいそうな気がするんだ。
置いて行かれそうで、怖いんだ。
だから、どうか。
どうかわたしを。
あなたと手を繋げる距離に、
これからも居させてください。
(ゆっくりと、彼女が離れる)
(表情は、いつも通りに戻っている)
(少しだけ、赤くなった目)
……返事は放課後に聞くわ!
今はぶっちゃけ受け止めきれないしさ。
お前も困るだろ? いきなり答えろって言われても。
放課後、迎えに行くから。
帰り道で聞かせてくれ。
……ああそうだ。
ちょっと遅れるかもしれないけど、待っててくれな。
ちゃんと、ケジメつけていくから。
気づかせてくれたあいつに。
……こんなこと、アタシが言うのも変だけどさ。
あいつ、いい奴なんだよ。
きっとこうなったって伝えたら「おめでとう」って言ってくれるんだ。
アタシの知らないところで泣いて、明日からまた普段通り接してくれる。
そういう奴なんだよ。
そんな奴相手に、こんなズルい方法で抜け駆けしちゃったわけだ。
きっちり失恋させてやらなきゃ、申し訳ないってもんだろう。
一発ブン殴られてから行くから、ちょっと遅くなると思う。
全部清算して、すっきりしてくる。
……んじゃ、また後でな!
(足早に部屋を出ていく彼女)
(残されて茫然としている耳に、予鈴の音が鳴り響く)
(自分もゆっくりと部屋を出る)
(これからのことを、新しい思い出の姿を、思い描きながら)