「300kmぐらい自分で運転しなきゃ」元F1ドライバー中嶋悟73歳、クルマと走り続ける人生 #つなぐ伝統
今の時代のF1も「最後は人間の戦い」
ドライバーを引退した中嶋さんは自身の会社「中嶋企画」が運営するレーシングチーム「NAKAJIMA RACING」を立ち上げる。 そして、ホンダが「世界に通用するドライバー」の育成を目的に立ち上げた「鈴鹿サーキットレーシングスクール」(現ホンダレーシングスクール鈴鹿)では、F1までたどり着いた佐藤琢磨、角田裕毅らの後進を育ててきた。 「育てるなんて、おこがましいよ。場所を提供することだよね」 「(今のF1ドライバー)みんな若いでしょ。僕、34歳で行ったの。自分がもっと元気なうちにやれてたらとか、そんなことを思って、ホンダの人と、もっと若いドライバーを送りだそう、みたいな。それで、スクールを作ってもらった。この業界を次の世代につなげるには、そういうことをしない限り、だめじゃないですか。それが何とかなってきたってことかな」 中嶋さんがF1を引退してから35年。 現在のF1はエンジンがハイブリッドのパワーユニットになり、空力パーツの開発もレース戦略も、より緻密な計算をチーム側が行ってレースを戦う時代に変貌している。 ドライバーは走行中にボタン操作でモードを切り替えるなど、複雑な操作をマスターしなくてはならない。かつてのF1とは大きく様変わりしたようにも見えるが、中嶋さんの目にはどう映るのだろうか。 「いつの時代も根底は一緒だと思っています。レギュレーションが変わろうが、運転して競争して俺が一番だって言いたい人の集まりだから。人間の戦いだから、最後は」
死ぬまで運転したい、でも免許返納もいつかは
中嶋さんが総監督を務める「NAKAJIMA RACING」は今季も国内最高峰レースの「スーパーフォーミュラ」と「SUPER GT」に参戦する。チームのレースであっても、気持ちはドライバーのままだという。 「そりゃ一つでも前行け、前行けって(笑)。僕は運転が好きで、競争が好きだから、やってるんであって。いつもそういう気持ちですよ。そら行けって」 中嶋さんの現在の愛車はホンダのセダン。ドライビングスキルが求められた70年代や80年代の車と違い、今の車は電子制御によるアシストがあり、運転者が楽に運転できるように設計されている。ただ、クルーズコントロールなどの自動運転機能は今もいっさい使わないそうだ。 「今の車も、50年前の車も、一緒ですよ。ハンドルもあるし、ブレーキもあるし、アクセルもある。なんら、変わりはない。でも自動運転は、僕はいらないね。だって、動かすのが好きな人間なんだから、自動で行かれちゃ困るんだよね」 中嶋さんの根底にあるのは「運転が好き」という気持ちだ。しかし、73歳を迎えた中嶋さんの周りにも運転免許を返納する人が増える年齢になってきた。 「(運転は)死ぬまでしたいと思ってるよ。ただ、迷惑かかるようになっちゃうまでしないけどね。まだたぶん大丈夫だから。それこそレースをやめたときみたいに、自分でだめだと思ったら返すと思う。やめたほうがいいなと思えば。そこらへんはあっさりしてるんですよ(笑)」