MAMOR 最新号

5月号

定価:780円(税込)

via text - ここをクリックして引用元(テキスト)を入力(省略可) / site.to.link.com - ここをクリックして引用元を入力(省略可)

「陸上」、「海上」、「航空」と3軍種に分かれる自衛隊。ひと言に「自衛隊」といっても、任務から訓練、装備品、はたまた規則や使用する言葉まで違うのです。どこが、何が違うの? というアナタ、陸・海・空の違いを、自衛隊ファンの芸人、ぐっさんこと山口智充さんと一緒に考えましょう。

画像: 山口智充が陸・海・空の自衛官にインタビュー「ウチの隊が一番」と思うことは?

【山口智充(やまぐち・ともみつ)】
大阪府四条畷市出身。テレビ、映画、アニメの吹き替え(映画『カーズ』<ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ 2006年>のメーター役など)と幅広く活動。NHK連続テレビドラマ小説『舞いあがれ!』にお好み焼き屋「うめづ」の主人役で出演中。音楽活動では4枚のアルバムをリリースし、精力的にLIVEも展開中。小学校の校歌も作っている。『突破ファイル』(日本テレビ放送網)での自衛隊隊長役が好評

現役自衛官の陸・海・空ウチが一番!

画像: 現役自衛官の陸・海・空ウチが一番!

 自衛隊について詳しくない私たちが、陸・海・空の違いを知るために、まずは各隊員たちに集まってもらって、「自衛隊の中ではウチが一番です!」と思っていることを聞いてみた。普段は厳しい任務に携わる隊員の皆さんも、ぐっさんの名進行で、すっかり打ち解け盛り上がって、“自慢話”に花が咲いた。さて、陸・海・空、どこが一番かな?

(写真右上から時計回り)
【荒牧泰輔(あらまき たいすけ) 2等海佐】
海上幕僚監部広報室事業主任。今は広報だが、職種は救難飛行艇US-2操縦士

【大川れいか(おおかわ れいか) 2等空曹】
中部航空警戒管制団司令部。入間基地広報班員として基地広報を担当。自衛隊一家に育つが、自分以外は皆陸自

【久保淳(くぼ じゅん) 3等空佐】
航空幕僚監部総務部広報室。空自の広報活動に従事。工業系大学卒業後、航空機に関する仕事に就きたいと思っていたら自衛隊にスカウトされた

【菊池宰基(きくち さいき) 2等陸曹】
東京地方協力本部予備自衛官課。前任地は習志野の第1空挺団。空挺隊員であり、レンジャー資格も持つつわもの

【澤村正人(さわむら まさと) 3等空佐】
航空支援集団飛行点検隊U-125U-680Aの操縦士。元F-15戦闘機のパイロットで、ブルーインパルスの経験も

【佐野竜一郎(さの りゅういちろう) 1等海尉】
海上幕僚監部指揮通信課。現在は地上配置だが、それまではずっと艦艇勤務だった。趣味は海とは正反対の登山と盆栽

【大久保かおり(おおくぼ かおり )3等海曹】
海上幕僚監部広報室事業班。職種は音楽でクラリネット奏者。音楽を仕事にしたくて自衛隊の音楽隊を目指した

【村地雄介(むらち ゆうすけ) 3等陸佐】
防衛省大臣官房広報課MAMOR編集協力担当官。職種は高射特科防衛大学校受験当時はパイロットに憧れていた

【坂野祐一(さかの ゆういち)2等陸尉】
システム通信団第301映像写真中隊写真小隊長。陸・海・空で唯一の写真専門部隊に所属するが、写真はあまり撮らない

世界に誇る「ブルーインパルス」の航空ショーが自慢の空自

画像: 世界に誇る「ブルーインパルス」の航空ショーが自慢の空自

山口智充(以下、山口):せっかく陸・海・空の隊員さんに集まっていただきましたので、それぞれ自慢をしてほしいですね。僕も自衛隊については知らないことだらけなので、いろいろ聞いてみたいです。まず、空自の澤村さん。以前ブルーインパルスにいたんですよね? 昔、カーレースのオープニングセレモニーで飛んでるのを見て、かっこいい! と思いましたよ。

澤村正人 3等空佐(以下、澤村):ブルーインパルスは空自自慢のアクロバット飛行部隊です。

山口:あれは子どもたちも憧れますよね! ブルーインパルスが飛ぶのは、どういうイベントなんですか?

久保淳 3等空佐(以下、久保):基地ごとに毎年「航空祭」を行います。航空祭は、航空ショーを中心にいろいろな出し物があるのですが、特にブルーインパルスが来ると大勢人が集まります。航空祭以外でも、先日は、西九州新幹線の開業記念にも飛びました。

山口:ブルーインパルス以外にも、空自らしい部隊などはありますか?

澤村:私が今所属している飛行点検隊も、空自にしかない部隊です。陸・海・空各自衛隊の基地などにある航空保安無線施設の点検を私たちが一括で行います。縁の下の力持ちとして、全自衛隊の飛行安全のために頑張っています。

山口:なるほど。海自はどうでしょう?

荒牧泰輔 2等海佐(以下、荒牧):US−2のような飛行艇を持っているのは、軍事組織では世界中見回しても日本だけです。日本は四方を海に囲まれています。広い海の上で何か起きたら助けに行くのが飛行艇の役割です。例えば空自のパイロットが海上に不時着したときなどですね。

澤村:(深くうなずく)

山口:陸・海・空、全部にパイロットっているんですね。

荒牧:陸・海・空それぞれにパイロットはいますが、対処するものが違うんです。日本の領空外から飛んでくるものに対しては空自、海上や海中から日本に攻めてくる艦艇や潜水艦に対処するのは海自、陸自は地上部隊を支援する、といった具合です。

海自なら「世界1周クルージング」の夢がかなう?

画像: 出典:海上自衛隊ホームページ(https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/tv/kashima/)

出典:海上自衛隊ホームページ(https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/tv/kashima/)

山口:相手によって対応する自衛隊が分かれるんですね。ほかにも海自だけ、というものはありますか?

佐野竜一郎 1等海尉(以下、佐野):船で海外に行けるのは海自ならではです。ソマリア沖の海賊対処行動とか、外国の海軍との共同訓練などで海外に出るチャンスも多いですね。世界1周ができる場合もあります。

山口:世界1周すか!

佐野:幹部候補生学校を出ると、遠洋練習航海といって練習艦に乗って世界各地を訪問しながら訓練や交流をするのですが、年によっては世界1周コースになることがあります。

山口:ほほう。そういえば、さっきからそこに置いてあるクラリネットが気になりますが……(笑)

大久保かおり 3等海曹(以下、大久保):あ、私ですか? 今は広報の仕事をしていますが、職種は音楽です。

山口:音楽隊の方も遠洋航海に行くんですか?

大久保:はい、行きます。全国の音楽隊から選抜された遠洋練習航海の音楽隊を編成して、航海に同行して世界各地で演奏活動をやります。

山口:どのくらいの期間行くんですか?

大久保:だいたい半年間ですね。

山口:長いですねえ、体も大変そう。

佐野:船に乗りっぱなしなので、最初のころは船酔いがキツかったです。私はもともと自動車の中でスマホを見ているだけでも乗り物酔いするくらいでしたから。

山口:そのうち慣れた?

佐野:慣れましたね! どれだけ揺れても全く平気になりました。

山口:今も大丈夫なんですか?

佐野:しばらく陸上勤務なので、どうもリセットされるみたいで。こないだ山中湖の遊覧船で酔いました(笑)

山口:ダメじゃないですか(笑)

佐野:でもまた乗ったらすぐ慣れると思います。

画像: 出典:航空自衛隊ホームページ(https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/sentouki/F-2/index.html)

出典:航空自衛隊ホームページ(https://www.mod.go.jp/asdf/equipment/sentouki/F-2/index.html)

山口:乗り物というと、飛行機でも酔うことありますよね? 僕も以前P−3C哨戒機に乗せてもらったときに、初めてG(注)を強く感じるような急上昇を体験して。一緒に乗っていた芸人みんなグエーッてなってました(笑)。その後のロケ、なくなりましたもん。

一同:(笑)

荒牧:実は哨戒機だと、2Gくらいしかかかっていないんですよね。

山口:2Gですか。みんなやっぱり慣れてなかったからキツかったんでしょうね。

荒牧:(空自・澤村のほうを指して)あちらは9Gです。

山口:9G! 9Gったらもう耐えられないんじゃないですか?

澤村:戦闘機では最大9Gかかりますが、慣れですね(笑)

山口:慣れるんですか(笑)

澤村:でも血管が切れたりしますからね。

山口:『トップガン』の映画でもありましたけど、途中で気を失うこともあるんですよね?

澤村:ありますよ。そうならないように訓練します。

山口:すごいですよねえ。

第1空挺団は全員パラシュートで降りられる精鋭部隊

画像: 出典:第6師団ホームページ (https://www.mod.go.jp/gsdf/neae/6d/equipment/uh1.html)

出典:第6師団ホームページ (https://www.mod.go.jp/gsdf/neae/6d/equipment/uh1.html)

山口:陸自だと、どんなところが特徴ですか? 僕が初めて知った自衛隊が陸自だったので、ほふく前進しているイメージがありますが、特徴的な部隊とかってあるんですか?

菊池宰基 2等陸曹(以下、菊池):私が前にいた第1空挺団は特徴的ですよ。陸自を代表する部隊の1つだと思います。陸自ですけど、陸自や空自の運用する飛行機などに乗って行って、パラシュートで降下しますので。

山口:陸自でも空を飛ぶと。パラシュートで降りるってのはすごいですね。

菊池:隊員は全員パラシュートの資格を取ります。私はレンジャーとしての訓練も経験しましたが、そのときは訓練の過程で海にも行きましたので、陸・海・空全部経験しています。

山口:それはすごいなあ。単純にパラシュートで降りるのって怖くないですか?

菊池:慣れますね(笑)。それに訓練もいきなり航空機から降りるわけではなく、地上で訓練を重ねて、最後は地上80メートルの鉄塔から降りる訓練をします。そこまでいけば、340メートルの上空から飛ぶのと変わらないです。

山口:変わりますよ!(笑)。ほかに陸自の変わった部隊とかはあるんですか?

坂野祐一 2等陸尉(以下、坂野):私の所属する第301映像写真中隊は、自衛隊で唯一の写真や映像撮影の専門部隊です。日本国内だけでなく、自衛隊の行く所なら海外でも撮影に行きますね。

山口:坂野さんもカメラ持って写真を撮るんですか?

坂野:いや、私は撮ってないんですが(笑)

山口:撮らへんのかい(笑)

坂野:主な仕事は部下の監督・指導や、訓練計画の作成などです。腕のいい部下が撮ってくれますので(笑)

山口:そうなんですね。そういえば、大久保さんに聞きたいのですが、音楽隊の方も普通に自衛官としての訓練をするのですか?

大久保:はい。楽器を演奏するだけではなく、走ったり射撃訓練だったり、自衛官らしい訓練はありますよ。

山口:楽器専門でも、やっぱり自衛官なんですね。ところで、音楽隊って海にしかないんですか?

大久保:いえ、陸・海・空それぞれに音楽隊はあります。

山口:どこが一番レベル高いんですか?

大久保:私は音楽隊を志望するときに「海自が一番うまいな」と思って目指したので……(笑)。かっこいいイメージに憧れもあって、第1希望が海自の音楽隊でした。

山口:あれ、衣装も陸・海・空違いますよね? ユーチューブとかで見て、イメージありますもん。あの白い……。

大久保:そうです。白い衣装がかっこいいんです(笑)。音楽隊は式典や演奏会などでお客様の前での演奏を任務とするため、装飾の施された「演奏服」というものを着るんです。

荒牧:毎年武道館で行われる「自衛隊音楽まつり」での演奏とか、彼女の活躍も見られますので山口さんもぜひ観に来てください!

山口:武道館でやってるんですね。

坂野:その撮影と記録をしているのは私たちです!(笑)

山口:専門の部隊ですもんね(笑)

(MAMOR2022年1月号)

<文/臼井総理 撮影/村上淳 写真提供/防衛省>

自衛隊には陸海空があるの知ってた?

 千葉県峯岡山分屯基地の「鯨カツ」を紹介します。地元で取れるクジラの肉を使った地産地消メニュー。臭みのないサクッとジューシーな仕上がりです。

  日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂についてレポート! みなさんにもぜひ味わっていただこうと、レシピを取り寄せました。

首都圏唯一の航空警戒管制レーダー部隊を配置!峯岡山分屯基地

画像: 分屯基地内にある愛宕山山頂付近の三角点の標識

分屯基地内にある愛宕山山頂付近の三角点の標識

 航空自衛隊峯岡山分屯基地は千葉県南部の南房総市、鴨川市の2市にまたがる嶺岡山系愛宕山山頂部に所在しています。標高408メートルの愛宕山は千葉県では最高峰で、基地内に三角点があり、「山頂が基地の中にあるのでなかなか登れない山(注)」として人気です。

 1955年に開庁し、今年で70周年を迎える当分屯基地には、首都圏唯一の航空警戒管制レーダー部隊である中部航空警戒管制団第44警戒隊や、中部高射群第1指揮所運用隊峯岡山派遣班が配置され、日夜、警戒監視の任務と訓練に励んでいます。

(注)愛宕山は申請すれば一般登山が可能。詳しくは峯岡山分屯基地HP参照

クジラの町ならではのメニュー「鯨カツ」

画像: ※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました

※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました

 地元である南房総市の和田町は、知る人ぞ知る「クジラの町」で、水揚げされるクジラは貴重なタンパク源として食されてきました。

 スライスし、特製のたれに漬け込んで天日干しにする「クジラのたれ」や、「クジラベーコン」、「クジラ汁」などクジラ料理は多種ありますが、今回紹介する隊員食堂のメニューは「鯨カツ」。口の中に広がるジューシーなクジラの風味がクセになると好評を得ています。

 クジラの赤肉におろしショウガと酒で下味を付けて臭みを除き、肉質を少し柔らかくすること、硬くならないよう揚げすぎないことがポイントだそうです。

 揚げ物に定番のキャベツの千切りをたっぷり添え、中濃ソース、ポン酢、しょうゆ、塩などを卓上に用意。隊員それぞれ好みのものをかけて食すのだとか。

 クジラは、高タンパク、高ミネラル、低脂肪、低カロリーで栄養価の高い、自衛官には最適の食材なのです。

注目食材:クジラ赤肉

画像: 注目食材:クジラ赤肉

 1950年代には日本人の摂取する動物性タンパク質の50%以上をクジラ肉が占めていたとされる。

 4カ所(和歌山県太地町、宮城県石巻市、北海道網走市、千葉県南房総市)ある小型沿岸捕鯨基地の1つが南房総市の和田漁港。6月末~8月末にツチクジラ(体長約10メートル、体重約10トン)を捕獲、解体し、余すことなく食用、肥料として活用する。

 赤肉(背中、腹の肉)は脂肪分が少なく、揚げ物、ステーキなどに。

隊員の感想は?

画像: 分屯基地ならではのこぢんまりとした隊員食堂は、アットホームな雰囲気で、隊員の憩いの場所、交流の場所となっている

分屯基地ならではのこぢんまりとした隊員食堂は、アットホームな雰囲気で、隊員の憩いの場所、交流の場所となっている

「衣はサクッ、肉はやわらか、クジラ肉特有の臭みもなく高タンパクで低カロリー。私たち自衛官には最高のメニューです!」(准尉/男性・50代)

「隊員食堂の鯨カツを食べたら、あまりにおいしく、家族にも食べさせてあげたいとレシピを教えてもらったほどです」(3佐/女性・50代)

「初めてクジラ肉を食べましたが、臭みもなく、とにかくお肉がやわらかくてビックリ! 白米との相性も抜群でした」(1士/女性・20代)

航空自衛隊基地の調理員だった父に影響を受け、入隊

【航空自衛隊 峯岡山分屯基地 第44警戒隊 基地業務小隊 厚生班給養係 阿川3等空曹】

 石川県出身で、高校を卒業してから別の分野の仕事に就いて3年。父が航空自衛隊小松基地の調理員だったこともあり(現在は別部署)、自分も向いているかなと転職を決め、2019年に入隊しました。

 小さいころから父と一緒に料理をしていたのですが、仕事となるとやはり大変。味付けが偏らないよう、濃すぎず、薄すぎず、しょっぱすぎず、甘すぎず、を心がけています。
 某メジャーリーガーと同じ名前は祖父母がつけてくれたのですが、調理と各種事務処理の二刀流を目指して、この道で羽ばたけるよう努めていきたいです。

「鯨カツ」のレシピを紹介

<材料(2人分)>

クジラ赤肉:160g

<A>
 酒:大さじ11/3
 おろしショウガ、塩、コショウ:各適量

<B>
小麦粉、パン粉:各適量
溶き卵:1個分

野菜コロッケ(市販品):2個(120g)
揚げ油:適量

[付け合わせ]
キャベツ(千切り)、トマト(くし形切り)、キュウリ(斜め薄切り)、レモン(輪切りまたはくし形切り):各適量

<作り方>

1:クジラ赤肉にAの酒、おろしショウガを塗り、塩、コショウを振って下味を付ける。

2:1に小麦粉、溶き卵、パン粉の順で衣を付ける。

3:170~180℃に熱した揚げ油で、2と野菜コロッケ(揚げてある市販品の場合はオーブントースターなどで温める)を衣が色づくくらいに揚げる。

4:3の油をきり、付け合わせの野菜と共に盛る。好みで、中濃ソース、ポン酢、しょうゆ、塩(各分量外)などをかけて食べる。

(MAMOR2025年7月号)

<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/星 亘(扶桑社) 写真提供/防衛省>

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

 『もがみ』の無人機雷排除システムは、10年以上の月日を費やして研究開発された新たな装備品だ。だから、それを適切に運用していくためには、訓練を積み重ねる必要がある。

 2025年6月15 、16日に硫黄島の周辺で行われた運用試験の成功は、このシステムを使いこなすために実施されてきた訓練のたまものだ。

 運用の練度を向上させるために、日々、行われている訓練の密着した。その全容を紹介しよう。

後部ハッチを開き処分挺を海へ投入

画像: ①後部ゲートが開き、処分艇(通称ベイビー)が海上へ出ていく

①後部ゲートが開き、処分艇(通称ベイビー)が海上へ出ていく

 訓練ではまず、機雷などの爆発性の危険物があると想定した海域へ『もがみ』が進出。
『もがみ』のソナー・システムやUUV(Unmanned Underwater Vehicle:自律型水中航走式機雷探知機)による機雷の位置などの探索結果を受け、USV(Unmanned Surface Vehicle:機雷処分用水上無人機)の発進準備に入る。『もがみ』の後部ゲートを開き、最初にゴムボートの「処分艇」が海上へ投入された。

USVが土台とともに移動し海上へ発進

画像: ②USVに掃海員が2人搭乗し、後ろ向きで『もがみ』から出航した

②USVに掃海員が2人搭乗し、後ろ向きで『もがみ』から出航した

 続いて「クレードル」と呼ばれる、複数のタイヤを設置した土台の上に固定されたUSVが、開かれた後部ゲートの近くまでゆっくりと移動していく。

 それから、掃海士(注1)の「USV投入!」の号令とともにタイヤのブレーキが解除され、その回転によってUSVがスライドし、海上へと発進していった。

(注1)掃海機能のある艦艇で機雷探知機、掃海具などの操作や、機雷の処分および機雷の調整、器材の整備などを指揮する隊員 

目標の海域近くまで隊員が操縦して航行

画像: ③機雷があるとされる海域の近くまでUSVを航行させる

③機雷があるとされる海域の近くまでUSVを航行させる

 訓練が行われた日は快晴で、視界は良好。波も穏やかで、USVは安定した航行ができそうだ。だが、USVは危険物である弾薬を搭載している。

 まだ試験段階のため、今回の訓練では掃海員(注2)2人がUSVに搭乗し周囲に障害物がないかなどを確認しながら、慎重な操縦による安全な航行で、目標とされる海域を目指した。

(注2)機雷探知機、掃海具などを操作し、機雷の処分を行う隊員

システムの機器を準備し隊員が処分艇に移動

④目標の海域まで来たら掃海員はUSVから離脱する

 USVが目標の海域の近くまで到着すると掃海員たちは、USVに搭載されたカメラや、『もがみ』と通信を行う無線などをセッティングし、それらに不具合がないかなどを最終チェックする。

⑤迎えにきた処分艇に掃海員は乗り移る

 そうして準備が整ったら、処分艇に乗り移る。ここからが、無人化されたUSVによる、機雷排除システムの運用訓練の本番だ。

無人のUSVで機雷探索を開始

画像: ⑥USVは完全に無人になり機雷のある場所まで自走を始める

⑥USVは完全に無人になり機雷のある場所まで自走を始める

 先行したソナー・システムやUUVの機雷探索の情報を基に、無人航行のUSVによる、さらに詳細な機雷の位置を特定するための探索を開始。

『もがみ』の情報が集中し、指揮・命令を行う戦闘指揮所にいる掃海員が、USVに搭載されたカメラから送られる映像を確認しながら、遠隔操縦で探索を行う。

 戦闘指揮所からの操作の指示と、USVから送られてくる映像にはわずかなタイムラグがあるため、遠隔操縦には習熟が必要だという。

機雷の位置を特定しEMDを海中へ投下

画像: ⑦水中を自走するEMD(写真上)が機雷(写真下)に近づいた(写真は今回の訓練のものではありません)

⑦水中を自走するEMD(写真上)が機雷(写真下)に近づいた(写真は今回の訓練のものではありません)

『もがみ』の戦闘指揮所からの遠隔操作により、USVが海上の情報を収集した結果、機雷を発見し、その位置の特定に成功。事前に『もがみ』の対機雷戦ソナー・システムやUUVによって識別された機雷を処理する方法、「掃討」の準備に入る。

⑧『もがみ』の指揮所からモニターを見ながらEMDを操作する隊員(写真は今回の訓練のものではありません)

 USVからEMD(Expendable Mine Disposal:自走式機雷処分用弾薬)を海中へ投下し、装備されたカメラやソナーによって、目標に接近していく。

EMDが機雷に接近し爆破

⑨見事に機雷を処分し、大きな水柱があがった(写真は今回の訓練のものではありません)

 目標の機雷まで接近したEMDは、『もがみ』からの遠隔指令により発火、機雷を爆破する。爆破による水柱を掃海員が視認して終了となる。

 2025年6月に実施された硫黄島での運用試験では、機雷のある海域へのUSVの航行から、EMDの投下と目標への接近という、一連のオペレーションが指揮所からの遠隔操縦で行われ、機雷の爆破に成功した。

USVを揚収して終了

⑩無事帰還し『もがみ』に揚収されるUSV

 機雷処理のオペレーションを終えたUSVに再度、掃海員が乗り込み、『もがみ』へと帰還。開かれた後部ハッチから、掃海員の操縦でUSVをクレードルに乗り上げさせる。

 次に、クレードルに設置された複数のタイヤを回転させてUSVを引き上げて揚収し、艦船の内部へ移動。それから、処分艇も『もがみ』に揚収し、訓練の終了となった。

(MAMOR2025年12月号)

<文/魚本拓 写真/山川修一(扶桑社)>

水上ドローンで機雷処分に成功!

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

 侵略者から日本を守るために戦う自衛隊には、戦闘能力だけでなく、復旧力も必要となる。敵の攻撃により受けたダメージを、素早く直し、機能を回復させて、再び戦うためだ。

 では、実際にどのようなリカバリー力を持っているのか。「艦艇の浸水」や「戦車のかく座」など受けたダメージのシチュエーションごとに、代表的な技術のいくつかを紹介しよう。

砲撃で浸水した艦をわずか30分で修復!艦艇乗員が総力で被弾箇所にふたをする

画像: 艦艇内を模した訓練場で浸水を再現。1カ所でも穴が開くと勢いよく海水が流れ込み一瞬にして沈没する恐れがある。復旧作業は1秒を争う

艦艇内を模した訓練場で浸水を再現。1カ所でも穴が開くと勢いよく海水が流れ込み一瞬にして沈没する恐れがある。復旧作業は1秒を争う

 敵から受けた攻撃で艦体に穴が開きそこから浸水した場合、1秒でも早くふさぎ、沈没を防がなくてはならない。

 被弾箇所の大きさや浸水の状況を確認した第一発見者は、付近にいる隊員に声を掛け作業員を集める。そして居室にある毛布などを急ぎ集め海水の浸入を防ぐ初期遮防をする。

穴をふさぐためのちょう番パッチ

 人員がそろったら、まず「ちょう番パッチ」という専用器具を使って穴をふさぐ。次に適切な長さに切った木材をつっかえ棒にしてちょう番パッチを固定する。

画像: 海水が流れ込む中、ちょう番パッチと木材などを組み込み穴をふさぐ。艦艇の隊員全員の命に関わる作業だけに、素早さとチームワークが求められる

海水が流れ込む中、ちょう番パッチと木材などを組み込み穴をふさぐ。艦艇の隊員全員の命に関わる作業だけに、素早さとチームワークが求められる

 艦艇には修理用にさまざまな長さの木材が積んである。時には木材を加工して調整し、修理のための角材を作ることもある。

艦艇が突如航行不能に!潜水士が船底に潜り絡み付いた網を除去

艦艇が航行不能になった場合、総員総出で原因を特定。潜水士たちはボートに乗って艦艇の外周を点検し、場合により潜って船底も確認する

 艦艇が突然動かなくなり、その原因が魚網などがスクリューなどに絡み付いていた場合、海上自衛隊では艦艇に乗っている潜水士が復旧作業を担当する。

 海に飛び込んだ潜水士は、防水カメラや水中ライトを使い絡み付いた魚網の状態を確認。同時に艦艇内では整備担当者などが船底のスクリュー付近まで移動し、内側からも異常がないか点検する。

視界不良の海中で復旧作業を行う潜水士。作業時は海域の潮流や天候などの気象状況なども頭に入れながら短時間での復旧を目指す

 潜水士はナイフで魚網を切って取り除くが、海中作業は体力の消耗も激しい。作業が難攻した場合は一旦海面へ浮上して作業要領を見直すこともある。

 また、艦内作業員との意思疎通は音を使って行われる。潜水士はハンマーで船底をたたき、その回数で作業の開始や終了などの状況を艦内作業員に伝えるのだ。

敵の攻撃で戦車が走行不能に!後方支援部隊が回収車を使い、30分で復旧

敵からの攻撃で履帯が外れ、走行不能になった想定の10式戦車。復旧させるため、戦車回収車が回収に向かう

 敵の攻撃を受け、かく座した戦車をどう回収するのか?

 回収作業は整備や輸送などを行う陸上自衛隊の後方支援部隊が担い、回収車がトーバ(けん引棒)を使い戦車をけん引し、安全な場所まで移動させる。

 戦車が横転などをしていた場合は、回収車のクレーンでつり上げて車体を起こしてからけん引する。

10式戦車(右)をけん引する11式装軌車回収車。トーバを走行不能になった戦車に付け敵のいない地域まで運ぶ

 移動後は故障箇所を素早く確認し、部品交換など整備を行い復旧させる。

 回収車は戦車と同じ装甲を備えた装軌車両で、不整地でも安定した走行が可能だ。

 また、戦車が動けない状況は戦闘が激しい地域であることが想定されるため、安全を考慮して時には味方部隊に援護射撃を要請し、戦車回収時に敵からの攻撃を受けるリスクに対処する。

 回収車も自衛のため12・7ミリ重機関銃や発煙弾発射機などを装備している。

滑走路をふさぐ航空機を2時間で回収!基地の施設隊が大型クレーン車で移動

自走ができない航空機を大型クレーンで吊り上げて回収。あらかじめクレーンの位置を調整し、作業効率も上げていく

 航空機が滑走路上でかく座すると、ほかの航空機が離着陸できなくなるため、速やかに機体を回収し、滑走路を使用可能な状態にする必要がある。

 この場合、航空自衛隊では施設隊が復旧を担当。まず、可能であれば機体をけん引し整備場まで運ぶ。

 けん引不可の場合は大型クレーンを使い機体をつり上げ、平らで広い荷台の付いた「かく座機収容トレーラ」に乗せて移動させる。

 作業は機体重量の調整や引火を防ぐため航空機の燃料を抜き取って行う。

5分で適切な応急処置!負傷した隊員の命をつなぐ

銃弾飛び交う最前線で負傷した隊員を搬送する訓練。生命維持のため出血部位に応じて1秒でも早く適切に止血する

 戦場で隊員が負傷した場合、最前線で味方の応急処置(緊急救命行為)を行うのが第一線救護衛生員。

 自衛隊において医療活動などを行う衛生科の隊員で、救急救命士と准看護師の資格を持つエキスパートだ。

 負傷時に早急かつ適切に応急処置できるかが前線における救命にとって最重要点。

 第一線救護衛生員は、止血の確認、鎮痛剤や抗生剤の投与、呼吸ができるように気道を確保するための切開など、命をつなぐ高度な延命処置を施す。

 その後、治療や手術などが可能な場所まで負傷者を搬送し、再び任務に復帰できるよう負傷者を支える。

心も“復旧”させる自衛隊

災害派遣に出動した隊員も、1日の終わりに解除ミーティングを実施。情報を共有することにより、自分たちでストレスの蓄積を予防する

 自衛隊では有事の際の戦闘行為で精神的にダメージを負った隊員に対し、心の回復を図るメンタルケアも想定している。

 例えば悲惨な現場に立ち会った際、互いの体験や自分が思ったことなどを共有する「解除ミーティング」を実施することによりストレスの緩和をさせる。

 また、精神状態が不調な隊員には心理や精神医療の専門要員が精神面のケアを行う。これら惨事ストレス発生後の対処を担う隊員を自衛隊内で育成している。

●リカバリー完了までの所要時間は状況により異なるため、おおよその時間で表記しています

(MAMOR2025年11月号)

<文/臼井総理 写真提供/防衛省(特記を除く)>

すごすぎ自衛隊の復旧力!

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

Next

This article is a sponsored article by
''.

No Notification