※1:「日本のコメ需要は、毎年10万トンずつ減少している」という事実は、多くの農業関係者の共有事項になっており、コメ政策の1つの基本的前提となっている。実際、過去のトレンドでは、きれいにそういう実績となっている(もちろん、多少のブレはあるものの、ダウントレンドであることは間違いがない)。これは、一般には、人口減少、および、高齢化と社会の成熟による1人当たり摂取量の減少(食の洋風化などの影響も含む)によって説明されている。結果的に、かつて、年間1人当たり120kgのコメ消費量が、現状では、55kg程度まで半減している(小麦の摂取量は30数kg程度でずっと安定している)。
しかしながら、気をつけなければいけないのは、本来的に「需要は価格によって決まる」ということである。つまり、「現状、あるいは過去の大きなコメ価格のトレンドが続く」ときには、「毎年10万トンずつマイナスの需要量になる」ということであり、絶対的な価格水準が変わったときの需要量がどうなるかは、必ずしも簡単に分かることではない。
昭和30年代にコメの自給が達成されたときに、日本政府は減反政策にかじを切り、高米価の流れが設定された。同時に、小麦は輸入にシフトして、国内生産は急減すると同時に、低麦価の流れとなった。国際価格で小麦1トンは現状、5~6万程度であり、カリフォルニアや中国の短粒種米(ジャポニカ米)は10~15万円程度である。一方で、日本で流通する小麦は7万円程度、60kg24,000円換算でも、日本のコメは1トン40万円にもなる(現状の卸価格はもう少し高い)。
筆者は、決してお茶碗1杯当たりのご飯の価格が高いとは思わない(5kg4,000円でも、お茶碗1杯は50円ほどにしかならない)が、国際価格の対比では、過去50年にわたって、日本の市場が相対的に高米価・低麦価であったことは間違いがない。結果的に(小売り流通の自由化の違いがあったこともあり)、小麦関連の製品、産業は大きく発展したのに対して、コメ関連の製品高付加価値化・関連産業はあまり発達しなかった。
したがって、大きな価格トレンドの前提などを変えれば、実はコメ需要が毎年10万トン減少する、というのは必ずしも所与の条件とはならない可能性がある。将来的により大胆な政策の転換を考えるときは、そういった点まで考えることも重要である。
※2:この点は、当面のコメ価格の安定、という意味では、非常に重要なポイントである。もし、「農林水産省の発表と違い、絶対的にコメの供給が足りていなかった」のだとすると、2025年産の生産供給量が、これまでの不足分を補う程度に、十分なものにならないと、本当の意味で価格の安定にはつながらない可能性が高い。2025年産の作付け計画については、現在、各都道府県で集約をしている最中であるが、増産意向の道府県も多い。できれば、需要に対してプラス40万トン程度の生産を期待したいところである。
※3:一方で、2024年作付けの意思決定をする際に、現在のコメ価格高騰は、それほど織り込まれていなかった、という意見も少なくない。コメ価格が本格的に高騰したのは、2024年の9月からであり、まだその時点では2,500円/kgだった価格が3,200円/kg(東京都区部)程度に上がった状態で、生産者サイドからは「ようやく適正価格になってきた」という水準でしかなかった。本格的に高騰といえるようになったのは、10月以降である。実は、コメ生産農家は、多くの場合、9月から10月頃には、翌年の生産の計画はほぼ決めてしまう場合が多い(特に、転作で麦を作る地域では、11月には麦の作付けがはじまるため、決定時期が早い)。
2025年の作付けについては、2024年と違って相当な主食用米の増産(飼料用米や加工用米からの切り替え)が予定されている地域もあると聞く。農家の自由な判断による主食用米の増産傾向にギアが入るのは、2025年から、という可能性もある。