『令和のコメ騒動』(4)令和のコメ騒動が暗示する政策課題の深層

食料自給率と安全保障 第13回

タグから探す

2025年03月11日

全社連携事業推進本部稲垣公雄

令和のコメ騒動
2024年の「令和のコメ騒動」について、これまで3回にわたって事実関係を確認してきた。シリーズの最終回では、近年のコメ政策を概観し、今回の事象の背景に潜む政策課題と、今後目指すべき政策展開について考えてみたい。

コメ政策は何を目指してきたのか?

図表1は、農業者向けの「直接支払制度」とは?(食と農のミライ 2024.11.28)で紹介した、1960年以降の日本におけるコメ政策の大きな流れを概観するものである。1995年の食糧法の施行、2004年の同法の改正を通じてコメ流通は自由化されてきた。
図表1 コメの需要・供給の推移と対応する政策の概要
コメの需要・供給の推移と対応する政策の概要
出所:農林水産省「米をめぐる状況について」を基に三菱総合研究所加筆
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/kome_siryou.html(閲覧日:2024年11月27日)
図表1に示したさまざまな政策の中から、特にポイントを絞ると、コメ・水田政策の大きな目標は3つあると考えられる(図表2)。第1に、しっかりと需要に応じたコメを作ること(作りすぎないこと)、第2に、農家の7割を占めるコメ生産農家が、主体的に経営・生産し、しっかりと所得を上げること。そして、第3に農地をできるだけ耕作放棄地化させずに維持することである(現状約425万haの日本の農地・耕作面積のうち、水田は約55%・243万haを占める)。

実際、政府は2008年からの水田フル活用政策により、水田でのコメ以外の作物への転換を図ることを奨励。コメの需要に対する生産を維持しつつ(コメの作りすぎも抑えつつ)、農家の所得確保や農地を維持するという、難しい政策目標の達成に取り組んできた。
図表2 コメ・水田政策の3つの目標とその評価
コメ・水田政策の3つの目標とその評価
三菱総合研究所作成
土地利用型農業は、一般的に収益性はあまり高くない。その中で主食用のコメだけは、一定の規模以上の作付けをすれば原則として利益が出せる作物だが、需要が減少しており、コメだけを作っていればいい状況にはない。それ以外の土地利用型農業である飼料用のコメ、小麦・大豆、飼料用トウモロコシなどは、ほぼどんな規模の農家であっても、補助金なしでは日本国内で利益を上げることは難しい。そうした前提と財政総額の制約がある中で、農業政策(ここではコメ政策・水田政策)は全体のかじ取りを行ってきている。

2008年以降の約15年を振り返ってみると、これらの目標に対してさまざまな課題もあり、100点満点はつけられないものの、それなりの結果を出してきたと考えていいのではないだろうか。2005年時点で196万の農家・農業経営体が存在したが、現在その数は100万経営体を下回ってきている。それだけ経営体が減少しているにもかかわらず、需要に対するコメの生産は基本、満たされてきたし、農業全体の生産額もおおむね9兆円程度を維持している。

また、まだまだ他産業に比べて高いとは言えないが、経営体当たりで見ると、この15年で所得は倍増している。荒廃農地も増えてはいるが、耕地面積の減少は1割程度で抑えられている。

コメ生産・価格は市場に任せていると言えるのか?

コメ政策を考える上では、忘れてはならないもう1つの大きな前提がある。「国内のコメ需要は一貫して下がり続けている」という事実である。近年は、おおむね年間10万トン程度ずつ需要が減少しているという(図表3)※1
図表3 主食用コメの需要量(農林水産省推計)
主食用コメの需要量(農林水産省推計)
出所:農林水産省「米をめぐる状況について」
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/250131/attach/pdf/250131-11.pdf(閲覧日:2025年3月7日)
前回のコラムで、「コメの生産量は民間が自主的に決定し、価格は市場で決定されている」というのが農水省の公式見解であると紹介した。しかしながら、やはり、そこに政府の関与が全くないと言うのには無理がある。政府は明確に、国内需要の見通しと目標生産水準を、毎年提示している。これをもって、中には「減反政策はいまだに続いている」という言い方をする有識者もいるが、それはさすがに言いすぎであると思う。より正確に表現すると、図表4のような状態にあると考えられる。
図表4 コメ生産量と価格決定の考え方
コメ生産量と価格決定の考え方
注:前回コラム図表6を参照

三菱総合研究所作成
かつての減反政策時代は、明確な減反目標(作らない農地面積の目標)があり、それを順守することにメリットがある(守らない場合にデメリットが発生する)ような政策体系になっていた。

これに対し現状では、政府はあくまで減反とは異なる形でコメ生産・水田維持に関与している。まず都道府県ごと、および市町村ごとに、前年度比でマイナスの方向での生産目標水準が毎年目安として示される。この目安をもとに「水田のうちどれぐらいコメを作付けしていいか」という比率が算出される。一般には4割から6割ぐらいの水準になり、それ以外は麦や大豆を転作するか、休耕させることになる。この、「水田にコメ以外の作物を作付けする」ことに対して補助金が支給される。これが「水田フル活用直接支払い交付金」と呼ばれるものである。

例えば、20haの農地で営農している農家が8haの農地で主食用米を作った場合、その部分については補助金などを基本的には受け取っていない。残り12haについては、飼料用米や小麦などの転作農産物を作付けする。この部分の収益は、多くが補助金によるものである。もし、新たに5haの農地を引き受けることになった場合も、そのうちの4割、2haだけで主食用米を作り、3haは転作農産物を作ることにするケースが多い。平均的な経営をしていれば、そうすることに経済合理性が出るように、補助金関連の政策が設計されている(「いた」といった方が正確かもしれない)。

農業者の減少を逆手にとったコメ政策

以上をまとめると、コメ生産・水田維持にかかる政策の基本構造は図表5のように整理できるだろう。関税障壁に守られているコメは、多くの農家にとって最も利益を出しやすい作物である。いまだに農業経営体の7割は水田農家である。自然体に任せると、水田農家はコメを作りたがる。しかしながら需要は下がり続けており、同じ量のコメを作り続けることができない。

そこで政府は、コメの需要の減少に合わせて、生産量を逓減させていく目標目安を提示し、大規模農家に営農を集約させながら生産量を緩やかにコントロールしていく。価格の決定自体は市場に任せているが、絶対的な生産量を需要に合わせにいっているので、大きな価格変動は起こりにくい。

おそらく、そこで1つポイントになるのが、「生産量はこれまでの需要トレンドに対して、若干多めに設定」して、「価格を低下させていく」ことにあったと考えられる。
図表5 コメ生産・水田維持にかかる政策の基本構成要素
コメ生産・水田維持にかかる政策の基本構成要素
三菱総合研究所作成
かつての減反政策の基本的な考え方は、生産量を減少させることで米価を維持する政策である。その分、消費者に直接、高米価の負担のしわ寄せがくる。以前のコラムで紹介したとおり、国際的な農業保護の潮流は、価格維持政策から直接支払い政策へのシフトである。この時期に、日本の農政も減反のような価格維持政策から農家への直接支払い政策へと大きく移行した。1990年代前半、コメの卸売価格は60kg当たり20,000円台前半であったが、その後、1993年と2003年を除いて、おおむね価格は低下し続けて、2021年には13,000円まで低下した。減反政策時代の高米価状況(小麦との相対価格において)を少しずつ改善し、消費者の直接負担を軽減することに成功してきたのである。

一方で、もし農家数が同じであれば、生産量の減少によって農家当たりの手取りは減少していくはずだが、この間、農家数は大きく減少している。特に、2000年代以降、全国に20haから30haぐらいの、専業農家として十分やっていける規模の農家が数多く出現し、大量の離農者の農地利用を引き受けることで、地域の農業を支えてきた。こうして農家の集約化が進み、結果的に農家当たりの所得を大きく改善させることにも成功した。

「令和のコメ騒動」に見る政策の行き詰まりの予兆

前節で見たとおり、日本の農政のこの15年から20年間は、中小零細農家から大規模農家へのシフト≒「構造改革」を進めつつ、コメ価格を抑えながら、農業生産額の維持に成功してきた時代であった。今回の「令和のコメ騒動」は、これまである程度、うまく回っていた政策運営に、ほころびが出始めた兆候と捉えることができる。

第1の兆候は、改めて指摘するまでもないが、「コメ価格の行き過ぎた高騰」である。これまで30年にわたってコメの価格低下トレンドをつくってきたものを、全て吹き飛ばすほどの価格上昇をもたらした。

第2の兆候は、「生産量確保の失敗」である。「令和のコメ騒動」は、前回コラムで提示した可能性3「そもそも、需要量に対して十分な生産ができていない」状況だった可能性が高い。農水省の発表では、「2024年産は683万トンの生産が確保されており、2025-2026年の需要見通しは674万トンであるから、基本的には十分コメはある」ということなのだが、その差は約10万トンでしかない(図表6)。
図表6 需要と供給のバランスの見通し
需要と供給のバランスの見通し
出所:農林水産省「米の需給状況の現状について」を基に三菱総合研究所加筆
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/komesangyou_ikenkoukan/attach/pdf/ikenkoukan-65.pdf(閲覧日:2025年3月7日)
仮に、この数字が正しく供給がプラスだったとしても、2023年産の需給ギャップ(供給の不足)は約40万トンあり(702-661万トン)、2年通算では30万トンのマイナスになる。もちろん、民間在庫の範囲内ではあるのだが、農林水産省の発表と違い、絶対的にコメの供給が足りていた、とする状況ではなかった可能性が否定できない※2

日本のコメ政策・水田政策、行き詰まりの原因

では、図表2や図表5で整理した日本のコメ政策・水田政策が、うまく回らなくなってきた原因はどこにあるのだろうか。
図表7 コメ生産量コントロールの行き詰まり(図表4参照)
コメ生産量コントロールの行き詰まり(図表4参照)
三菱総合研究所作成
これまで紹介してきたように、現状は、政府が明確に生産量をコントロールしているわけではないが、全国の需要量、目標生産量の目安を提示している。その数字を受けて、ほとんどのコメ生産道府県が、道府県下の生産目標量を毎年決定している。しかしながら、この数量通りに生産されているかというと、必ずしもそうではない。一般に西日本は目標割れを起こしており、北関東や東北などは、上振れして生産している傾向があると言われている。そもそも、結果論ではあるが、2024年産の産出量を見ていると、もう少し目標水準を高めに設定してもよかったのではないか、と思われる県も少なくはない(課題1)。

さらにいえば、主食用米の生産量をコントールすることが狙いであるにもかかわらず、そのコントロール手段は「水田フル活用交付金」などの、『主食用米以外の農産物を作ることに対して直接支払い金を交付する』という補助金政策によっている。つまり、転作作物に対する補助金の出し方をどうするかで、主食用米の生産量が決まってくる。政府としてこのコントロールが、うまくできなくなっている、と見ることができる(課題2)。

2008年以降の水田フル活用政策を軸とした生産量・価格のコントロールが、以前に比べて困難になってきた理由として、以下の4点を指摘したい。

第1に、そもそもの農水省が需要見通しと政策目標水準を適切に提示すること、あるいは都道府県が目標水準を正しく提示することが以前より困難になっていることである。気候変動などさまざまな変数がある中で、需要をちょうど満たすような供給目標を提示することが非常に難しくなっている。実際、2024年の需要量は結果的に702万トンとなったが、年初の農水省の推計は682万トンであった(需要が増えたと言っても、実需が増えたというよりは、酷暑による一等米の減少により、歩留まりが悪くなるなどの原因で、需要が増加したと考えられている)。結果論ではあるが、2023年も2024年も、5%程度ずつ(20万トン程度)生産量を上振れさせておけば、ここまでの価格高騰にはならなかった可能性が高い。

第2に、食糧管理法による価格統制下の状況と異なり、現代の、取引情報に誰にでもアクセスできる自由な流通下では、以前にも増して価格変動が激しくなる傾向が強くなっている、ということである。少しの取引の変化が大きな価格変動をもたらす。主食という役割を担うコメの価格を安定的なものにするには、非常に難しい環境である。

第3に、近年の水田フル活用を軸としたコメ政策を通じて、多くの農家が「補助金収益に頼ることに慣れすぎてしまった」ということが考えられる。主食用米はうまく作れば(やれば)収益を上げることができるが、収益性の変動幅が非常に大きい。対して、飼料用米に代表される転作作物の収益率は生産開始時点でほぼ確定する(収益の中心が補助金であるため)。結果として、農家の非主食用作物への依存度が上がり、その依存性が固定化されてしまった可能性がある。

現在、実は、大規模農家ほど収入に占める補助金割合が高い(より具体的に言えば、主食用米以外の、転作作物を作っている割合が高い)。2024年産の主食用米683万トンを生産した農地は全国で125.9万haであり、これは対前年比1.4%増でしかない。普通に考えれば、2024年の作付けをする段階で、2023年産の不作は共有されており、コメが不足気味であることは多くの農家に分かっていたはずである。しかしながら、この程度しか増産がされなかった※3

最後に、これまでの「中小零細農家が退出した農地を、中規模・大規模農家が引き受けて規模拡大していく」という事業承継・事業継続の成功パターンが限界に来ている面が否定できない。この20年ぐらいの期間、集落営農法人や個人の家族経営で、30haや50haを営農する農家が各地に出現した。中には、200ha、300haという農家も生まれた。20年前には考えられなかった状況である。この農地集約・農家の大型化と水田フル活用による転作支援政策は、セットの政策だったと考えられる。しかし、そもそも1990年代や2000年代と違って、現在は農家が同じ規模・ペースで拡大する余地はない。また、現在30haで効率よく営農している農家には、その規模を拡大させる動機がなくなっている。

言葉を変えると、この20年ぐらいの農家数減少下における大規模農家への集積の動きは、「より積極的に生産量を増やし、より稼ごう」という農家を育成する政策であった、ということができる。しかしながら、そうした農家が一定程度育ったことにより、同じ政策を続けていても、これまでのようにチャレンジングな農家が生まれにくくなっていると言えるのではないだろうか。

今後、求められる政策転換の方向性

現在、農業界で中長期的に最も懸念されているのは、「この高価格により、コメの1人当たり消費量が減少して、コメの国内市場がさらに縮小すること」である。基本的な方向性としては、全体的なコメ生産量をもう少し増やして、価格を逓減させる方向に持っていくことが必要である。

もちろん、だからといって、政府の目標設定を今すぐなくし、完全に自由に農家にコメを作ってもらうようにすればいい、というのは暴論であろう。過去の歴史や経緯に目をつぶって、今からゼロベースで政策を決定できるのであれば、そういう方向性もあるかもしれない。しかしながら、政策の立案・策定で最も重要な視点の1つは「政策の連続性」である。その意味で、現在のコメの生産目標数量の提示を簡単になくすべきではない。以上を踏まえ、今後に求められる政策の方向は2つある。

まず、第1に、酷暑による生産量減少のリスクなどを踏まえて、国全体の生産量目標をもう少し高めに設定した上で、その達成を目指して(主食用米の生産を増産させるように)、水田フル活用などの政策を適切にチューニングして、主食用米を作ることのメリットを挙げていく(主食用米以外を作ることのメリットを下げていく)必要がある。その結果、コメ価格は低下することになり、想定以上に価格が低下するリスクもはらむことになる。もし、価格低下が農家の再生産(営農継続)に影響するほど大きくなってしまう場合には、農家に対する一定の補償も考えていく必要がある(すでに収入保険制度などがあり、これらを適切に活用することが求められる)。

あるいは、備蓄米の保管量をもう少し多めに設定し、需給の過不足・価格の大きな変動に対して、備蓄米をより機動的に放出することを制度化する、という方向性も考えるべきだろう。いずれにしても、もう少し、需要に対するバッファを拡大する必要がある。

第2に、これまで同様に、担い手農家への農地集積を通じた経営効率の向上には継続して取り組む必要がある。まずは、現在の大きな政策課題である、地域計画に基づく農地の集積は継続して推し進めていくべきだ。

しかしながら、この継続的な施策だけでは、以前のような、中小零細農家の減少を中規模以上農家による吸収では支えきれない可能性がある。コメ農家を、より魅力的な職業、産業にしてくために、より強く農業経営体の経営力向上への支援を行っていくことも検討したい。

例えば、ある北関東の中山間地農家は、20haの耕地面積ながら、独自のブランド化を進め、1俵12万円の価格で東京のデパートでコメを販売することに成功している。あるいは、別の東北の農家は、現状50ha程度の営農面積だが、仲間と一緒に連邦経営による1,000haの経営体になることを目指しているという。こうした飛び抜けた農業法人の出現が、全国に新しいチャレンジングな農家を生むきっかけになるだろう。

これまでの農業政策との継続性を保ちながら、経営支援など新たな政策展開を進め、その先に最終的には、生産目標をより緩やかに緩和し、自由な生産、コメ価格の低下をリードしていく。その実現に向けて、水田フル活用に代表される直接支払制度などの農業補助の制度を、全体系的に見直していく。こうした政策展開を検討すべき時期にきていると考えられる。今回の1月31日の農水省の発表では、5年水張規制の見直しや、水田にしか適用されなかった政策を畑まで広げて考えていくことも含めて、2027年(令和9年)以降のコメ政策の全面的な見直しを検討する方向であるという。ぜひ、前向きな検討に期待したい。

※1:「日本のコメ需要は、毎年10万トンずつ減少している」という事実は、多くの農業関係者の共有事項になっており、コメ政策の1つの基本的前提となっている。実際、過去のトレンドでは、きれいにそういう実績となっている(もちろん、多少のブレはあるものの、ダウントレンドであることは間違いがない)。これは、一般には、人口減少、および、高齢化と社会の成熟による1人当たり摂取量の減少(食の洋風化などの影響も含む)によって説明されている。結果的に、かつて、年間1人当たり120kgのコメ消費量が、現状では、55kg程度まで半減している(小麦の摂取量は30数kg程度でずっと安定している)。
しかしながら、気をつけなければいけないのは、本来的に「需要は価格によって決まる」ということである。つまり、「現状、あるいは過去の大きなコメ価格のトレンドが続く」ときには、「毎年10万トンずつマイナスの需要量になる」ということであり、絶対的な価格水準が変わったときの需要量がどうなるかは、必ずしも簡単に分かることではない。
昭和30年代にコメの自給が達成されたときに、日本政府は減反政策にかじを切り、高米価の流れが設定された。同時に、小麦は輸入にシフトして、国内生産は急減すると同時に、低麦価の流れとなった。国際価格で小麦1トンは現状、5~6万程度であり、カリフォルニアや中国の短粒種米(ジャポニカ米)は10~15万円程度である。一方で、日本で流通する小麦は7万円程度、60kg24,000円換算でも、日本のコメは1トン40万円にもなる(現状の卸価格はもう少し高い)。
筆者は、決してお茶碗1杯当たりのご飯の価格が高いとは思わない(5kg4,000円でも、お茶碗1杯は50円ほどにしかならない)が、国際価格の対比では、過去50年にわたって、日本の市場が相対的に高米価・低麦価であったことは間違いがない。結果的に(小売り流通の自由化の違いがあったこともあり)、小麦関連の製品、産業は大きく発展したのに対して、コメ関連の製品高付加価値化・関連産業はあまり発達しなかった。
したがって、大きな価格トレンドの前提などを変えれば、実はコメ需要が毎年10万トン減少する、というのは必ずしも所与の条件とはならない可能性がある。将来的により大胆な政策の転換を考えるときは、そういった点まで考えることも重要である。

※2:この点は、当面のコメ価格の安定、という意味では、非常に重要なポイントである。もし、「農林水産省の発表と違い、絶対的にコメの供給が足りていなかった」のだとすると、2025年産の生産供給量が、これまでの不足分を補う程度に、十分なものにならないと、本当の意味で価格の安定にはつながらない可能性が高い。2025年産の作付け計画については、現在、各都道府県で集約をしている最中であるが、増産意向の道府県も多い。できれば、需要に対してプラス40万トン程度の生産を期待したいところである。

※3:一方で、2024年作付けの意思決定をする際に、現在のコメ価格高騰は、それほど織り込まれていなかった、という意見も少なくない。コメ価格が本格的に高騰したのは、2024年の9月からであり、まだその時点では2,500円/kgだった価格が3,200円/kg(東京都区部)程度に上がった状態で、生産者サイドからは「ようやく適正価格になってきた」という水準でしかなかった。本格的に高騰といえるようになったのは、10月以降である。実は、コメ生産農家は、多くの場合、9月から10月頃には、翌年の生産の計画はほぼ決めてしまう場合が多い(特に、転作で麦を作る地域では、11月には麦の作付けがはじまるため、決定時期が早い)。
2025年の作付けについては、2024年と違って相当な主食用米の増産(飼料用米や加工用米からの切り替え)が予定されている地域もあると聞く。農家の自由な判断による主食用米の増産傾向にギアが入るのは、2025年から、という可能性もある。

関連書籍

「令和のコメ騒動」を豊富なデータを駆使して分析。日本の農業政策の歴史を振り返りつつ、将来を展望します。今の日本が潜在的に抱える問題とは何か。われわれがコメを食べ続けるために何が必要か。ぜひ本書をお手に取っていただき、ご一読いただければ幸いです。

連載一覧

関連するナレッジ・コラム

関連するセミナー