世界が「Ikigai」に注目する理由 もう「ワークライフバランス」では頑張れない

近藤俊弥[Link and Motivation Singapore Pte. Ltd. CEO]

近藤俊弥[Link and Motivation Singapore Pte. Ltd. CEO]編集:土屋咲花

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海外のビジネスパーソンの間で、ある「日本発の概念」が人気を集めている。
海外のビジネスパーソンの間で、ある「日本発の概念」が人気を集めている。
撮影:今村拓馬
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世界中のビジネスシーンで今、ある日本語が熱狂的に支持されていることをご存知だろうか。それが、「Ikigai (生きがい)」である。AIによる雇用喪失への不安、管理職の疲弊、エンゲージメントの低下という世界共通の課題に対し、「日本発の概念」が強力な処方箋となっているのだ。

どのような背景から、「Ikigai」が注目されるのか。仕事でIkigaiを見出すためのステップとはなにか。シンガポール在住の筆者が、現地からの視点で読み解く。

近藤 俊弥

Link and Motivation Singapore Pte. Ltd. CEO

近藤 俊弥

2007年に株式会社リンクアンドモチベーションに入社し、大手企業から中小・ベンチャー企業まで幅広くコンサルティングを担当。 2017年に「モチベーションクラウド」の事業責任者に就任し、9年連続国内シェアNo.1を獲得。 2025年より拠点を国外へ移し、Link and Motivation Singapore Pte. Ltd.のCEOを務め、世界にコンサルティングの幅を拡大。

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世界を覆う「意味」の損失

撮影:今村拓馬
撮影:今村拓馬

海外に出て、初めて気づくことがある。

シンガポールや東南アジアのビジネス最前線。そこで出会う各国の優秀なビジネスパーソンたちと話していると、国籍を問わず、ある共通の「静かなる絶望」を耳にする。

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「かつて誇りにしていたスキルもAIが数秒でこなす今、私がここにいる本質的な意味とは何なのか」

これは単なる個人の焦燥感ではない。AIの急激な発展が業務効率化をもたらす一方で、多くのホワイトカラーは「仕事の意味」に喪失感を覚えている。仕事に対する意味感や意欲の低下、つまり「エンゲージメントの低下」は、深刻な社会的損失に直結している。ギャラップの調査によると2024年、エンゲージメントが低い状態によって世界全体で約4380億ドル(約66兆円)もの損失が生まれたというデータもある。

これまで25以上の国と地域で、一部現地企業を含む組織に対して組織変革の支援を行ってきた弊社が、アジアに拠点を設立し見えてきたのは、「エンゲージメントの低さはグローバルな課題である」ということだ。

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欧米リーダー層が認知した「Ikigai」という言葉

そのような閉塞感が漂うなか、海外において「希望の概念」として非常に人気が出ている考え方がある。

それが、日本語の「生きがい(Ikigai)」だ。

実際、私が知り合ったある欧米の人材系企業は、社名そのものに「Ikigai」を冠していた。詳しく聞いてみると、欧米のビジネスリーダーのあいだで「Ikigai」という言葉を知っている人は多いと言う。また、スペイン人の著者が書いた『Ikigai』という書籍は、63言語以上に翻訳、販売数500万部を越え世界的なベストセラーになった。

最先端のテック企業やグローバルリーダーたちが古風で実に日本的な言葉に注目する背景には、ワークライフバランスという欧米型マネジメントの限界がある。

「ワークライフバランス」の限界

「ワークライフバランス」という考え方は、これまで欧米を中心に、働き方改革の中心に置かれてきた。

労働時間を適切に管理し、プライベートな時間を確保することで、燃え尽き症候群(バーンアウト)を防ぐという狙いがある。

しかし、この言葉が世界中に浸透するにつれ、私たちは無意識のうちにある「危険な罠」に陥ってしまった。それは、「ワーク(仕事)」と「ライフ(人生)」を天秤にかけ、完全に分断・対立するものとして捉えてしまったことだ。

「ワークライフバランス」という概念の根底には、「仕事=ストレスを伴う我慢の時間(マイナス)」であり、「ライフ=自分を取り戻す楽しい時間(プラス)」という二項対立が潜んでいる。この思考に陥ると、仕事は単なる「ライフを楽しむための資金稼ぎ(必要悪)」に成り下がってしまう。その結果、仕事から「個人の動機」が失われてしまった。

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世界的に見ても、単に時間を区切るだけの「ワークライフバランス施策」は下火になりつつある。ただ時間を切り分けるだけの施策では、人間の根源的な「やりがい」を満たすことはできなかったのである。

「仕事は我慢するもの」という前提に立つ限り、内在的な動機から仕事を切り離すことになり、熱狂は生まれない。だからこそ今、世界のトップリーダーたちは、自らの感性により根本から向き合うことのできる「Ikigai」という思想へと大きく舵を切り始めているのだ。

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「Ikigai」がもたらす効果
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