【主な登場人物】
うどん屋 客 遊び人A・B 番頭 丁稚 酔っぱらい
【事の成り行き】
わたしの住んでる私鉄沿線の駅前に、創業三十有余年になる老舗の屋台店
があります。中学生の頃、試験勉強と称して実は仁鶴さんの深夜放送聞きな
がら夜更かしし、夜食代わりに食べに行ったのが最初でした。
それからも、高校大学と一夜漬けにかこつけては食べに通い、今でも時た
ま出かけて懐かしい味を楽しんでいます。お品書きはうどん、ラーメン、関
東煮におにぎり。テーブルの真ん中のざるに盛られたゆで卵にはいつも手が
伸びてしまいます。
何がどぉと言ぅ味や無いんですけど、屋台のオッチャンがいてて、タクシー
の運転手さんがいてて、近くの大学の学生さんがいてて……、裸電球のゆら
ゆらがたまらんのですねぇ(1996/08/02)。
* * * * *
しばらくのあいだ、お付き合いを願います。
「ひと声とみ声は呼ばぬ卵売り」面白いことが言ぅてございます。ただ今
はもぉそんなことはございませんが、ひと昔前はみな商人(あきんど)さんが
物を売りにまいったのだございますね。
前と後ろのカゴに、それぞれの品を入れましてね、これを朸(おぉこ)・天
秤棒といぅやつでこぉ差し担いにいたします。立て前・売り声といぅものを
上げながら売りにまいりました。これがどぉいぅもんですか、ふた声といぅ
よぉなことに決まっておりましたんやそぉですね。
卵屋さん「たまごぉ~、たまご」……、ふた声やそぉで、面白いもんです
ねぇ……「たまごぉ~、たまご」ふた声でございます。初めの「たまご」で
終わるかなと思うと、これが終わりません。必ず最後に「たまごッ」といぅ
のが付くのでございます「た……」何べんやってもおんなじでございますが、
面白いもんでございますね。
ひと声とみ声では具合が悪いんですね。ひと声「たまごぉ~ッ!」「どぉ
れぇ~」玄関番が出てまいりますし、また、み声でも具合が悪い「え、たま
ごたまごたまご。たまごたまごたまご」誰か後ろから追いかけて来るのっか
知らん。ふた声に限ったもんやそぉでございます。
「はなやぁ~、はな」花屋さんでございます、これもふた声でございます。
綺麗ぇなお商売でございますね「だいこ、だいこ。だいこ、だいこ」大根屋
さんでございますが、これもふた声ですが大根を「だいこん」とは申しませ
ん「だいこ」と申しますね。
「だいこ、だいこ。だいこ、だいこ」「ん」の字を抜いております。これ
がどこへ行ったかと思いますといぅと、あのゴボウのほぉへ回ってます。ゴ
ボウを「ごぼう」とは申しません「ご~んぼ、ごんぼ。ご~んぼ、ごんぼ」
ゴボウのことは「ごんぼ」と申します。
大根の「ん」の字がゴボウのほぉへ、お友だちでございますから、応援に
回っているよぉなことですねぇ。なぜかと申しまするにゴボウといぅのは売
り声に、それだけではなりにくいねやそぉです。
「ごぼ、ごぼ……。ごぼ、ごぼ。ごぼごぼ」沈んでしまいますので具合が
悪い。あの、四季によっても違います。夏の売り声といぅものはなんとのぉ
ボンヤリといたしまして眠気を催す、といぅのが夏の売り声でございます。
「よぉ~しや、すだ~れはいりまへ~ん。ござやぁ~、ねご~ざぁ~」寝
茣蓙やみな、半分寝てしもてますが。
代表的なものはと申しますと金魚屋さんでございます。大和郡山のほぉか
ら来るんやそぉでございますが、前と後ろのタライに一杯金魚を入れまして
ね、それを朸・天秤棒といぅやつで差し担いをいたします。
「きんぎょ~えぇ~、きんぎょ~。きんぎょ~えぇ~、きんぎょ~……」
声を自慢に売りにまいります夏の風物詩、無くてはならんもんでございます
なぁ。
あの立て前でもって、前と後ろの水を治めているのやそぉでございます、
タライの水をね。タライには一杯水が入っているので、これえぇ加減に歩き
ますといぅと水がガブッて表へあふれます。これをあの立て前でもって抑え
ているのやそぉでございます。
「ンぎょ~え~、きんぎょ~」前と後ろ水が(両手を広げてユラユラ)治
まります。中で金魚が(両手を前後に広げてユラユラ)……
夏の炎天下、お日ぃさんが「カァ~ッ(手を頭の上にかざしヒラヒラ)」
照りつけております。家ん中は生暖かぁ~いところへさして、涼しぃ風がサ
ァ~ッと吹くと、風鈴いがチリチリチリ。
それでのぉても眠とぉなってるところへさして、この金魚屋さんの声が遠
くのほぉから聞こえてまいりますといぅと、自然と頭が細こぉ前後に動いて、
終いにはゴトォ~ッと寝てしもたそぉですねぇ。
それでのぉても眠とぉなってるところへさして、遠くのほぉから「きんぎ
ょ~え~、きんぎょぉ~」(体が前後にユラユラ)「きんぎょ~え~、きん
ぎょぉ~」(やがて揺れが大きくなり、最後には高座の床にデボチンを音が
するほどゴツッ!)寝てしまいます。
これを起こしに来るのが氷屋さんです、カチワリ「え、かちわりやッ、か
ちわりやッ」喧して寝てられしません。反対にやったらおかしなもんやそぉ
ですねぇ、金魚屋さんが氷屋さんみたいに「わっ、きんぎょやッ、きんぎょ
やッ」金魚みな、鼻ゴツンゴツン、死んでしまいますが。
また氷屋さんが金魚屋さんのよぉにノンビリやっても具合の悪いもんやそぉ
で「こぉ~りぃ~やぁ~、こぉりぃ~。冷ぇ~たい~、こぉりぃ~」「氷屋、
一杯おくれんか」「あ~か~ん~、こぉりぃ~融けたぁ~」みな融けてしま
います。
これと反対に、冬の売り声の代表的なものはと申しますといぅとうどん屋
さんでございます。真冬、真夜中、北風がヒュ、ヒュ~ッ……。
凍て入るよぉな寒ぶぅい晩に遠くのほぉから、このうどん屋さんの声が聞
こえてまいりますといぅと、寂しぃいよぉな、悲しぃいよぉな、そしてどっ
か暖ったかぁ~いよぉな、なんとも言えん気持ちがいたしましたそぉで、
♪うどぉ~んえぇ~ ♪そぉ~やぁう~ッ
●あッ寒ぶぅ~、寒ぶいなぁ。冷えると思てたがこんな冷(ちめ)となるとは
思わなんだなぁ……、ぎょ~さん星さん出たはるなぁ……、♪うどぉ~んえ
ぇ~、そぉ~やぁう~ッ♪
●もぉ皆、お布団の中でヌクヌクと寝たはんねんやろなぁ。寒い晩はうどん
がよぉ売れるちゅうねんけど、こない寒いと肝心の人間が通らんよってなぁ、
売れるも売れんもないわ。
★子供衆(こども)、早いことしなはれや。早いことせな、うどん屋さん行っ
てしまうで。早いことしなはれや。
●ありがたいこっちゃなぁ「子ども早いことしなはれや、早いことせな、う
どん屋行ってしまうで」番頭さんか誰かやろなぁ、丁稚さんにあないして、
うどんの注文かいな……。出てきた出てきた丁稚さん。ありがたいこっちゃ
注文、注文……、何をしてんねんな? 溝またげてオシッコして。
●子どもやなぁ。用言ぃ付けられてんけども、言ぃ付けられた用より自分の
用先に済ましとこちゅうことか、オシッコしてからこっち注文か……、一人
前に振ってるがな、うどんの注文……(ガラガラピシャ)かなんなぁ、おの
れの用が済んだらスッとしたもんやさかい、肝心の用忘れて入ってしもたが
な。
●これぐらいのお店やったら、嘘でも五杯や六杯は買ぉてくれはんねん、うっ
かりしてるで。こっちから聞きに行こ……。今晩わ、今晩わ★どなたじゃ?
●へ、うどん屋でございま★うどん屋が、どぉしたな?
●今、聞ぃとりましたら、ご番頭はんでやすかな「早いことしなはれや子ど
も、早いことせな、うどん屋行ってしまうで」言ぅてくれはりまして、わた
し待っとりましたら子どもさん出て来はったんでおますけど、自分の用足し
はって注文忘れて帰りはりましたんで……、おうどんは何杯さしてもろたら
よろしぃんですかいなぁ?
★あぁ、あれか。あらもぉえぇのじゃ●おうどんのほぉは?★いやいや、そ
やない。うちの子どもはな、夜遅そなったら恐ぉて裏のお手水(ちょ~ず)へ
よぉ行きませんのじゃ。いつもおうどん屋さんや何かが通るとな、その明か
りを借りてな、オシッコをしますのじゃ。今晩もどぉやら無事に済んだよぉ
じゃでな、おぉきありがとぉ。
●子どものオシッコに灯ぃ貸したんかいな。おうどんどぉです?★うちはう
どん、皆嫌いじゃ●さよか。糞ったれ、しゃ~ないなぁ★いやいや糞やない、
ションベンじゃ●どぉも場所が悪いわい。ちょっと場所変えよか。
♪うどぉ~んえぇ~ ♪そぉ~やぁう~ッ
●さっぱワヤやがな……、お、どこで呑んできはったんか知らんけど、えら
い酔ぉたはるで。あっちぃフラフラ、こっちぃフラフラ、あっち寄ったり、
こっち寄ったり、自分入れて九人歩きちゅうねや……。お~ッと危ない大丈
夫かいな、だいぶに酔ぉたはるで。
▲♪ちゃ、ちゃ~ん、ちゃんちゃん♪ 雨ぇのぉ~、降るぅ~日ぃわぁ~♪
天気ぃ~がぁ~、悪い♪ 兄貴ゃ~、わしよぉ~りぃ~、年ぃ~がぁ~、上
♪ちゃ、ちゃ~んの、ちゃんちゃん♪
●けったいな唄うとて……、あんまり相手ならんほぉが……★う、うどん屋
さん●あ、見つかってもた……。大将、えらいご機嫌でんなぁ★な、何です
か?●えらいえぇご機嫌でんなぁ★何ですか? えらいえぇご機嫌ですねぇ?
あぁ~た何ですか、わたしがえぇ機嫌で酔っているか、悪い機嫌で酔ってい
るか、分かっているのれすか?
●そぉいぅわけやおまへんけど、えぇご機嫌でんがな★えぇご機嫌ちゅうこ
とないけれどもやね……。ちょっと、一杯くれますか?●へぇへ、おうどん
ですか?★いえ、湯ぅです●お湯? どぉなさるんで?★今、そこ歩いてま
したらね、溝がありまして、そこへボチャとはまってしもて、足が泥ららけ
なんれすねぇ。ちょっとお湯をば掛けてくれますか?
●汚れた足洗うために沸かしてる湯やないけれど、うどん屋が湯ぅ無いてな
こと言われ……、いえいえ、何でもおません、こっちのこってす。今、掛け
さしてもらいますんで、ちょっと待っとぉくれやっしゃ……。ちょっと熱い
かも分かりまへんけど……、熱つおました? えらい顔してはる。すぐ慣れ
はるやろ思います。
●もぉ一杯掛けますんで……、へ、こんなもんで★おっき、ありがと、すま
んこちゃねぇ。ついでに、拭いてくれますか?●こぉいぅ人があとで食べて
くれはんねん……、いえいえ、こっちのこってす。拭かしてもらいます……。
へ、こんなもんでどぉだす。
★うどん屋さん、すびばせんねぇ。お陰で綺麗になりました。手拭持ってな
いこともないんですけろね、あぁ~たので拭いてくれたのれすか? おっき
ありがとぉ……。一杯くれますか?
●おうどんですか?★水です●なかなかうどんにならんなぁ……、おひやで
すか?★いぃえ、水です●せやから、おひやでっしゃろ★み、ず、で、すぅ
●片意地な人やなぁ……、水のこと「おひや」ちゅうんですけど★何ですか?
水のこと「おひや」ちゅうのですか? あそぉ? そぉ? 水のことおひや?
面白いこと聞きましたねぇ。
★ほな、ちょっと尋んねますけど「向こぉ水害でえらい水つきやで」言ぃま
すけど「向こぉ水害でえらいおひやつきやで」ちゅなこと言ぅのでしょ~か?
「淀の川瀬の水車」なんてえぇ唄ございますけど「淀の川瀬のおひや車」ちゅ
なあるんでしょ~か? うどんやさん。
★そらねぇ、水のこと「おひや」と言わんこともないこともないれすよ。け
れどもそれは時と場合によるのれす。おひやといぅのは一流の料亭へ上がっ
て、床柱を背にし、山海の珍味を前へ並べ、上等の酒を十分にいただいたと
ころで。
★「ちょっと喉が乾きましたねぇ(パンパンッ)姐さん」とわたしが呼びま
すと、白魚を五本並べたよぉな手を前につかえて「旦さん、何かご用で?」
「水を持って来てくれたまえ」「おひやどすか?」
★これを、おひやちゅうねん。よぉ覚えときなさい。ゴンボ五本並べたよぉ
な指ブラブラさして何がおひやじゃ、馬鹿。おっきありがとぉ。す、すびば
せんねぇ(クゥクゥ、クゥクゥクゥクゥ、クゥクゥ……)うまい。これ、何
ぼですか? え? ただですか? たらなら、もぉ一杯くらさい。
★酔ぉた時に飲む水はうまいですねぇ……。す、すびばせんねぇ(クゥクゥ、
クゥクゥクゥクゥ、クゥクゥ……)え? もぉ結構です。そない水ばっかり
飲んでられないです。うどん屋さん、寒い中お仕事大変ですねぇ。しかし、
奥さんやお子達のために頑張ってくださいねぇ。またいいことありますよ、
幸せを祈ります。それではわたしは失礼をいたします。ごきげんよぉ、また
お会いしましょ、さよぉなら。
●……、よぉあんなアホなこと言ぃやがったなぁ、とぉとぉうどん食わずじ
まいやがな。嫌んなってきたなぁホンマにもぉ、今日はろくな晩やないなぁ。
イョットショッ。
♪うどぉ~んえぇ~ ♪そぉ~やぁう~ッ
■おい、ちょっと置け。止めてしまえっちゅうてへんがな、いっぺん置けっ
ちゅうねん、札をば。腹減ってへんか? 減ってんねやろ、宵からやってん
ねんから。今、表、うどん屋流しとぉる、うどん注文してこい。何人おる?
俺? 俺要らん宵に油もん食ぅたんじゃ。俺除けて十人か? 芳ッ!
▲へいっ■うどん十杯注文してこい。言ぅとくで、大きな声出したらあかん
ぞ。当たり前やないか大きな声で「うどん十杯」「どこですか?」「あの路
地の奥です」「……? 明かりが点いたぁんなぁ、こんな時刻まで十人の人
間が寄って何しとんねん? ははぁ~ッ、こんなことでもしとんねやないか」
痛とぉも無い腹探られても……
■ホンマはしてるんやけれどもや、思われるんも片腹痛いわい。小さな声で
そっと、内緒で注文してこい。分かったなぁ▲へいっ。
♪うどぉ~んえぇ~ ♪そぉ~やぁう~ッ
▲・・・・●気色悪ぅ~、何や今、クシャクシャちゅうたで。竹やんが言ぅ
てた狸てこれか……、嫌やで「相撲とろ」言ぃよんねん。わい嫌やがな、狸
と相撲とって、ひょっと負けたら格好つかんがな ♪うどぉ~んえぇ~
▲シ~ッ! 大きな声出すな。うどん十杯持って来てんか、この路地の奥や。
明かり点いてるやろ、うどん十杯。大きな声出したらあかんで、分かったぁ
るやろ●び、ビックリした、あ~、ビックリした。何じゃいなうどんの注文
かいな。わしゃまた、狸が出てきたかと思てビックリしたがな。
●狸が出てきたら、キツネこしらえたろ思てんけど……、なぁ、昔からえぇ
ことが言ぅたぁるなぁ「えぇ後は悪い、悪い後はえぇ」今日は宵からろくな
お客さんがないと思てたけれども、うどんがいっぺんに十杯も売れるやなん
て、まことにありがたいこっちゃなぁ。
●何や知らんけど、大きな声出したらいかんちゅうてなはったなぁ。気ぃ付
けて持って行かないかん……
■おぉ、おぉ。いっぺん札を置けっちゅうねん、お前らも好っきゃなぁ。宵
からやってんねやないか、止めちゅうてへんがな一服せぇちゅうねん。喧しぃ
言ぅな、さっきから戸ぉの外誰か来とぉるよぉな気がすんねんけど、お前ら
がヤァヤァ言ぅから分かれへんやないか。芳っ、戸ぉ開けてみぃ。
■見てみぃ、うどん屋やないか……。どぉした? えぇ? 注文が出来て持っ
て来てんけれども、この男に大きな声出したらいかん言われてたんで、戸ぉ
の外から聞こえもせん小さい声で……
■そぉかいな、すまなんだ。脅かしてやりないな、早いこと食ぅたり。おい
おい、どっちが大きぃも小さいもあるかいなバカ……、うまいか? うまい?
うどん屋、皆うまい言ぅとる……。別に急(せ)かいでも、落とさいでもえぇ
やないか、良(えぇ)加減に食たらえぇねん。
■食ぅたら、鉢揃えんかい。揃えたら岡持ちの中入れたれ……。うどん屋、
表は寒いやろなぁ。わいらこんなことして遊んでるねん。お前の目ぇから見
たら腹の立つよぉなことやろけど、若いもんのこっちゃしゃ~ないがな堪忍
したって……。代は何ぼや?
■釣は要らん、取っといてくれ。こっち回って来(く)んのは? 初めてか?
よし、明日から毎晩こっち回っといで、大抵十人ぐらいの人間寄ってこんな
ことしてんねん。表冷たいやろけど、精ぇ出しや●《おっき、ありがとさん》
●ありがたいこっちゃなぁ「明日から毎晩来いよ、十杯ぐらいのうどん毎晩
買ぉたる」えぇお得意さんが出来た。われわれ小商人(こあきゅ~ど)は可愛
がってもらわないかんわい。
♪うどぉ~んえぇ~ ♪そぉ~やぁう~ッ 大通りへ出ると風がきついなぁ
♪うどぉ~んえぇ~ ♪そぉ~やぁう~ッ
★《うどん屋ぁ~、うどん屋ぁ~ッ》●……? 今晩こんなん流行ったぁん
ねんなぁ。ありがたいなぁ、またうどんが十杯売れるがな。そぉか、ここら
はこんなことして遊ぶよぉな人ばっかり寄ったはるんねんなぁ。ありがたい
こっちゃ、今度は向こぉから言われるまでも無い、心得てるわ。
●《おうどんですかぁ?》★《そや》●《十杯ですか?》★《いや、一杯で
えぇ》●《あ、さよか》おかしぃなぁ……、そぉか、味見や。まてまて、お
前ら食ぅてもえぇけど初めてのうどん屋らしぃ。ひょっと不味かったらどぉ
すんねん、わいがまず一杯食ぅてみて、うまかったらお前らもみな食え……。
うまいこといったら十一杯売れるがな。
●《お待ちどぉさんでした》★《できた? おっき、ありがと。うまそぉや
な……(フッ、フゥ、ズズゥ~……)えぇダシ使こてるなぁうまい(ズッ、
ズゥ~)カマボコも厚ぅ切ってるなぁ、コリコリしてうまい(ズズゥ~、ズ
ズゥ~、ズズゥ~、ズズゥ~……)うまかった、おっきごっつぉさん》
●《お粗末さまでした》★《何ぼや……? そぉか渡しとこ》●《おっき、
ありがとさんで》★《うどん屋、また明日もおいでや》●《おっき、ありが
とさん》★《うどん屋》●《へぇ?》
【さげ】
★《お前も、風邪ひぃてんのんか?》
【プロパティ】
朸(おうこ)=両端に物を掛けて荷う棒。てんびん棒。二重母音の「おう」
は大阪では必ず「おお」と発音する。
子供衆(こどもし)=お子達。あるいは商家の丁稚。こども。
ワヤ=駄目。失敗。無謀。滅茶苦茶。枉惑(わ[お]うわく:ごまかしだま
すこと)の約訛という。ワウワク→ワワク→ワヤク→ワヤ? 「さっ
ぱりわや」は散々な目にあった意味。てんやわんやのワンヤもワヤか
ら移ったもの。
淀の川瀬の水車=三十石船の船頭歌に「淀の川瀬の水車、誰を待つやらク
ルクルと」の一節がある。
キツネ=「きつね(うどん)」はうどんに甘辛く煮た薄揚げをトッピングし
たもの「たぬき(そば)」はうどんの代わりに蕎麦を使って、同じく揚
げをトッピングしたもの。うどんと蕎麦を半々に使ったものを「パン
ダ」とはもちろん言わない。
岡持ち=手と蓋がついた平たい桶。料理などを運ぶのに用いる。出前桶。
塗りでできた上等なものもあるが、多くは白木。決してアルミででき
た岡持ちはイメージしないでください、あれは時代が違う。
終盤《 》付きのせりふは喉が潰れたときの声で。
音源:桂枝雀 1980/10/26 枝雀寄席(ABC)
【作成メモ】
●参 照 演 者:main=桂枝雀 sub=桂吉朝
●main高座記録日:1980/10/26 ●番 組 名:枝雀寄席(ABC)
●ファイル公開日:1996/08/02 ●江戸落語相当:うどんや
●更 新 日:2016/01/10 ●リクエスト数:
●注 意 事 項:内容を削除、追加、改訂している部分があります。
記録日のmain演者によるさげを採用しました。
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