【FGO士弓企画】瓜二つがひとつになった話
FGO士弓webアンソロジー企画参加作品。
企画の詳細は企画用記事をご参照ください。
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FGO士弓アンソロジー開催とても嬉しいです。飛び込み参加で心臓ガラスになってますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
FGOらしさを求めたらぐだ男/ぐだ子が遭遇した士弓小話になりました。
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「あっ、いいところに! リミゼロ、エミヤ見なかったかな? 弓兵クラス演習の相談したくって」
弓兵クラスの古参の一人であるエミヤは、聖杯戦争やサーヴァントのことなどに詳しく、頼りにしているサーヴァントだ。自分のような初心者マスターには有り難い存在である。
声をかけたのは、顔が第二再臨時のエミヤにそっくりの概念礼装、リミテッド/ゼロオーバー。名が長いのでカルデアではリミゼロと呼んでいる。
エミヤからの要望に、青い槍兵と金色の弓兵は一緒のチームにしてくれるな、とあったが、高位の礼装が来たと喜んだのも束の間、それとなく装備は勘弁してくれとこぼされた。相性は悪くないと思うのに勿体無い。似た姿の投影魔術というのもいるのだが、そちらも同様だった。
礼装たちはエミヤに思うところがあるらしく、側に行きたがる。冬木にいたサーヴァントの何人かは意味ありげに口を閉ざすし、謎が謎を呼んでいた。
そんな彼から指一本を立てた、しぃー、というジェスチャーを送られる。
「しずかに? で、こっち……ついてこい?」
音もなく彼は歩き出す。人型の概念礼装は基本、すこしばかり存在が希薄で現界するのも気まぐれ。言葉は交わせないが、表情や身振り手振りなどから何となくの意思疎通はできる。
着いたのは、施設の端に配置され、「中庭」と名付けられたレクレーションルームだ。
環境の厳しすぎる雪山に建てられたこの研究施設は、太陽の恩恵に預かれない。そのため、職員の健康管理の一環として、緑地を模した部屋がいくつか存在する。魔術の秘匿って大変だ。一般枠採用からしてみると、実に贅沢というか、無駄に金をかけているというか。こんな状況ではありがたいものなのだろうけど。
よく使用されているのは居住スペースの方だから、この部屋は案内図でしか知らなかった。ろくに施設見学する前に、人類史焼却という憂き目にあったので。あのモジャ毛許すまじ。
カルデアのうららかな午後。人工太陽の日が射す暖かな中庭。芝生の上、部屋の隅に植えられた木に背を預けてまどろむエミヤ。
「わー、珍しい……ていうか初めてみたかも。エミヤの寝顔」
入口からそっと覗いていると、リミゼロは羽織をエミヤにかけて隣へ腰掛けた。その羽織、わりと実体に近いんですね。知らなかったなー。
もぞもぞとすると座りのいい位置におさまったらしく、一息。そしてこちらにはウィンクと手をひと振り。
ええと、察するに、起きるまで待って。そして人払いをしておけ、と。
リミゼロイケメンすぎない? ねえ?
仕方がない。弓兵用の演習プランはアタランテあたりに相談しよう。部屋の端末を操作して、使用中の表示を出しておいた。
「ありがとうアタランテ、他クラスが揃ったら声かけるよ」
女神に仕えていただけあって、彼女はとっても真面目だ。弓兵クラスも増えてきた昨今だが、きちんとクラス内を見ていてくれたのか、あれこれと細かい指摘もしてくれた。現場の声、大事。
最初のころから指導してくれていたから、ついエミヤに話を持っていきがちだったけれど、もっといろんなサーヴァントに聞いてみよう。
あれから一時間が過ぎている。
結局エミヤは来なかった。リミゼロが伝えないなんてことは無いだろうし、もしかしたら、まだあそこに居るのかもしれない。いつも掃除に炊事に戦闘にと動き回っているエミヤだ。きちんと休んでいるのだろうか。システムからの魔力供給が上手くいっていないとか。
他クラスの演習内容がまだ埋まっていないが、それは一旦置いておこう。六クラスの内の半分はマシュにお願いしてあることだし。
「……ん? なんか増えてる」
音もなく中庭の自動扉が開くと、赤い布がゆらゆらと風もないのに揺れているのがみえた。
投影魔術だ。エミヤを挟んで向こう側に体育座りをしている。
彼もまた前髪を下したエミヤに似ていた。エミヤを若くしてリミゼロの童顔を重ねたような、概念礼装の青年である。
常に投影魔術と共にある赤原礼装というらしい赤い布は、木陰の木漏れ日からも守ろうとするように、彼らの頭上を覆っていた。
リミゼロはエミヤにもたれてすよすよと穏やかな顔を見せている。礼装も眠るのか。
それらをにこにこと眺めていた投影魔術だが、こちらに気付いたようだ。
あっ、という顔をして慌てて両手を合わせる。お願いのポーズだ。
起こさないでくれ、ということか。
急がないからいい、と笑顔と手振りで伝えて、そっと中庭を後にした。あと一時間もすれば、施設内の設定が夕方になる。その頃には戻ってくるだろう。
それにしても、本当にあの三人は瓜二つというか、瓜三つというか。はぐらかし続けられているが、無関係ではないだろうし今度絶対に問い詰めてやろうと心に決めた。
二時間後。
マシュと合流し、ロマニの所へ向かっているとエミヤの声がきこえてきた。
通路をゴンゴンと安全靴らしき武装の足音をたてて急ぎ進んでいく。後ろにはふよふよとリミゼロと投影魔術がついていた。
「君たちはどうしてそう! 私を! 構いたがるのかね? 献立を思案しつつうたた寝に興じてしまったのは私に非があるが、部屋に鍵までしてなんのつもりだ」
少々特殊な受肉ではあるようだが、カルデアのサーヴァントたちは本来必要としない睡眠をとれる機能がついたらしい。
マシュだって毎日寝るし、サーヴァントだからって二十四時間三百六十五日、働かなくたっていいと思うんだ。日本のサラリーマン向けのコマーシャルでもあるまいし。
「私の魔力の残量など、君らなら把握できているだろうに。本当に只のうたた寝だ! オレに構うなと言っているだろう! ええい、ついてくるな! お前らのせいで夕食の準備が間に合わんだろう!」
何にせよ、魔力不足とかそういうのではないようで安心した。
礼装の二人が袖を引いて何かを訴えている。
「ん? ……っ、背に腹は変えられん。部屋で待っていろ。……。ああ。……だから付き合ってやると言っている」
続く礼装たちからの要求に相槌を打ちながら、苦虫を噛み潰したような顔で呻るエミヤ。普通に会話をしている。なんでさ。
その様子にあっけにとられたが、よく咀嚼してみれば食事の支度ができていないらしい。
「ええっ、夕食まだなのか」
思わず声がでた。仕方がない。この閉鎖した空間、快適さは保証付きだけども、食の楽しみは大きいのだ。
「なっ、マスター! に、マシュ嬢! いつからそこに……いや、すぐに支度をする。申し訳ないが、食堂に向かっているサーヴァントや職員を待たせてもらえないだろうか」
そう言うや否や、エプロンを投影しつつ食堂へ走っていってしまった。
残されたのはリミゼロと投影魔術、自分とマシュだ。
名残惜しそうにエミヤを追っていたリミゼロの視線がこちらを向く。普段の無表情が歪んだ。投影魔術は眉をしかめている。
たぶんに曰く、エミヤを酷使するなよ、だ。礼装はマスターとか関係ないですもんね……保護者か。おかんの保護者とは。
ある分野に突出した概念というのは、ちょっとあれなのか、君たちはエミヤの何なのか。
しかしながら。確かに、ここのところどころか、召喚に成功してからというもの、家事に始まりレイシフトへも連れ回しっぱなしだった。礼装たちの訴えも最もだ。
善処する、と伝えると、投影魔術とリミゼロは連れ立って去っていった。
新しいサーヴァントや礼装の運用試験もあったので、先日の約束を果たそうとリミゼロと投影魔術とエミヤと、まとめて休日にしてもらうこと二日ばかり。
顔を赤くして何やら文句を言いながら部屋から出てくるエミヤを目撃。彼を赤面させるとか礼装たちはなにをしたのか。いや、存外に照れ屋なエミヤなのかもしれない。
礼装たちはニコニコとご機嫌だったので、何よりである。これを機に、休日制度をきちんと定めてみようか。そりゃ、特異点が出現してしまえばふいになってしまうものだけど。
あっ、エミヤが蹴躓いて腰をさすっている。礼装二人が来てから珍しいことばっかりだな。
人類史復興までの道のりはまだまだである。
I love it!