VTuber事務所「エニーカラー」の株価が半減……「売れ残りグッズリスク」と構造的な課題
VTuber事務所にじさんじを運営するANYCOLOR(エニーカラー、東京都港区)の売上高は2ケタ成長、文句のつけようがないほどの高成長が続いている。 【画像】エニーカラー、「商品評価損に関する補足説明」(決算資料より) そうであるのにもかかわらず、エニーカラーの株価は、2025年11月の高値6790円から2026年3月23日時点の終値で3035円と、わずか4カ月で半値に沈んだ。 3月12日、第3四半期決算発表の翌日には一時16.8%安の3380円まで急落した。好決算なのに売られる──。この一見矛盾した現象の裏側には、VTuberビジネスが抱える構造的なリスクが隠れている。
VTuberビジネスと在庫リスク
2026年4月期第3四半期累計(2025年5月~2026年1月)の業績は、売上高420.2億円(前年同期比45.4%増)、営業利益169.1億円(同54.2%増)、純利益117.9億円(同55.5%増)。成長率だけ見れば申し分ない。 ところがエニーカラーはこの決算と同時に、通期の利益予想を下方修正した。その原因は棚卸資産、つまり「売れ残りグッズ」の処分と評価損だ。 VTuberは誕生日やデビュー周年などのイベントグッズが物販の主要な柱の一つであり、イベントが一巡すれば販売機会が限られる。また、卒業(引退)したVTuberのグッズについても売れなくなることから一定期間が経過した在庫について評価損を計上する必要が生じる。 競合のカバーも以前、5.5億円の在庫損を計上したことが話題となったが、エニーカラーはカバーの約5倍、25億円の評価損を計上する見込まれている。
「人が壊れる」という「再現性」
エニーカラーのエクイティストーリー(投資家向けの成長戦略資料)の核は、一貫して「再現性」だった。 VTuberは個人の才能に依存しない。「箱」(事務所)の仕組みでタレントを量産できる。新人を入れればファンがつく。だからスケーラブルで高成長が続く。中の人は開示されていないので、スキャンダルも起きない――。 しかし、筆者がここで問題提起したいのは、その「正の再現性」の裏側にある不都合な真実である。 VTuberの多くは業務委託契約(個人事業主)であり、労働基準法の保護が及ばない。エニーカラーの上場時の目論見書にも、ライバーと業務委託契約を締結しアバターや配信アカウントを貸与して活動してもらう旨が明記されている。 個人事業主である以上、労働時間の規制は存在しない。しかし現実には、視聴者が最も多い深夜帯の配信が常態化しており、実質的に深夜労働に近い状況が生まれている。誹謗中傷への対応もタレント個人に委ねられがちで、メンタルヘルスケアの体制は外部からは見えにくい。 その結果、2024年から2025年にかけて、にじさんじの繁栄を牽引してきた複数のベテランライバーが卒業している。