チケット不正転売禁止法における「不正転売」の条件とは?取引が成立していない場合はどうなる?
チケットの転売をめぐって、興行主側から損害賠償を請求されたというご相談が増えています。相談者の中には、「転売サイトに出品はしたが、実際には取引が成立していないのに請求を受けた」という方も少なくありません。
このコラムでは、チケット不正転売禁止法(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)における「不正転売」の成立条件を解説し、取引が成立していない場合の法的な問題点や、そもそもいつの取引から同法の対象となるのかについて整理します。
1 チケット不正転売禁止法の対象となるチケット——「特定興行入場券」とは
チケット不正転売禁止法が規制の対象としているのは、すべてのチケットではなく、「特定興行入場券」に該当するものに限られます。
特定興行入場券とは、不特定又は多数の者に販売されるチケットのうち、以下の3つの条件をすべて満たすものをいいます(同法第2条第3項)。
- 興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が券面等に表示されていること
- 興行の日時・場所及び座席又は入場資格者が指定されていること
- 購入者又は入場資格者の氏名・連絡先を確認する措置が講じられ、その旨が券面等に表示されていること
近年のコンサートやスポーツイベントのチケットは、その多くがこの3つの条件を満たしており、特定興行入場券に該当するケースがほとんどです。
2 「不正転売」に該当するための条件
特定興行入場券であれば転売がすべて違法になるわけではありません。同法が禁止する「不正転売」とは、次の条件をすべて満たす行為です(同法第2条第4項、第3条)。
(1) 興行主の事前の同意を得ていないこと
興行主が公式に設けたリセールサービスを通じた転売であれば、興行主の同意がある転売として不正転売には該当しません。
(2) 業として行う有償譲渡であること
「業として」とは、反復継続の意思をもって行うことを意味します。実際に複数回転売した実績がなくても、反復継続の意思があったと認定される可能性はあります。また、業者に限らず個人であっても、この要件を満たせば同法の対象となります。
(3) 販売価格を超える価格での転売であること
興行主等が定めた販売価格(定価)を超える価格で転売した場合です。定価以下での転売であれば、この条件を満たさないため不正転売には該当しません。
ここで重要なのは、同法が禁止する「不正転売」の定義が「有償譲渡」、すなわちチケットを実際に相手方に引き渡して対価を得る行為を前提としている点です。
3 取引が成立していない場合——同法に未遂罪の規定はない
相談の中で特に多いのが、「転売サイトに出品したが、買い手がつかず取引が成立しなかった」というケースです。
チケット不正転売禁止法は、「有償譲渡」の完了を要件としており、同法には未遂罪を処罰する旨の規定がありません。刑法第44条は「未遂を罰する場合は、各本条で定める」と規定しており、個別の法律に未遂処罰の定めがなければ、未遂行為は処罰の対象とならないのが原則です。
したがって、出品しただけで実際にチケットの譲渡が行われていない場合には、チケット不正転売禁止法上の「不正転売」には該当しないと考える余地があります。
⚠️ ただし、注意が必要な点があります。チケット不正転売禁止法に違反しないからといって、民事上の責任まで当然に否定されるわけではありません。興行主側が、出品行為そのものをチケット利用規約違反や不法行為として損害賠償を請求してくることは十分にあり得ます。この点については個々の事案の具体的事情を踏まえた検討が必要です。
4 いつの取引から対象になるか——施行日は令和元年6月14日
チケット不正転売禁止法は、令和元年(2019年)6月14日に施行されました。法律の効力は施行日以降の行為に及びますので、施行日より前に行われた転売行為については、同法に基づく規制の対象にはなりません。
損害賠償を請求された場合に、問題となっている転売行為がいつ行われたものかを確認することは、同法違反が成立するかどうかを判断するうえでの基本的な確認事項です。
5 お早めにご相談ください
チケット転売を理由とする損害賠償請求を受けた場合、そもそも不正転売禁止法上の「不正転売」に該当するのか、取引が成立していない場合にどのような法的評価がなされるのか、請求額は妥当なのかなど、検討すべき点は多岐にわたります。
請求書が届いた段階でお早めにご相談ください。
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