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「公益通報」を問う

警笛を鳴らし、組織の不正を暴く公益通報。通報者が「裏切り者」として報復されるケースが相次いでいます。その実態に迫り、制度のあり方を考えます。

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「公益通報」を問う

裏切り者になってでも…「一生に一度」の不正告発、捜査員の覚悟

 
 

 一生に一度あるか、ないか。

 警察官として公益通報をすることは、そのくらいレアな経験だ。

 警視庁公安部による大川原化工機冤罪(えんざい)事件では、違法捜査を指摘する公益通報が内部から寄せられていた。

 通報したのは、この事件の捜査員であるAさん。警察組織の中で「裏切り者」と扱われることも受け入れるつもりだったという。

 決死の覚悟でなされた公益通報の詳細や当時の心情を明かした。

生かされなかった通報

 あの日の早朝。警視庁人事1課の直通番号を入力したスマートフォンを握りしめ、耳に当てた。

 人事1課は、職員の非違行為を調べる監察部署だ。「警察の中の警察」とも呼ばれる。

 コール音の後、男性職員が電話に出た。「大川原化工機の件で」と切り出すと、「あー、あの件ですね」とすぐに話が通じた。

 この15日前の2020年3月11日、横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の社長ら3人が不正輸出の疑いをかけられ、公安部に逮捕された。その日のうちに報道発表され、メディアも報じていた。

 Aさんは、逮捕の過程で起きたある「事件」を伝えた。容疑者の逮捕容疑の認否などを記した調書を廃棄する違法行為があり、捜査幹部がもみ消しに走っているという内容だ。

 逮捕された社長らの勾留期限は5日後に迫る。Aさんは「急いで対応してください。今すぐ動かないと検事が起訴してしまう」と電話口で訴え、私用のメールアドレスを伝えて電話を切った。

 通報の5時間半後には、このアドレスから通報窓口に念のためメールも送った。しかし、人事1課から連絡が来ることはなかった。

「捜査を止める」わずかな望み

 Aさんが公益通報をした動機は何だったのか。「でたらめな捜査に基づく起訴を、何としても阻止しなければならなかった」と明かす。

 大川原側が後に起こした国家賠償請求訴訟で東京高裁が「犯罪の成立に関する判断に基本的な問題があった」と認定したように、事件は公安部のでっち上げだった疑いが強い。

 ただ、捜査を指揮した幹部が暴走し、一介の捜査員には捜査を止めるのが難しくなっていた。

 それでも調書廃棄の件が表に出れば話は変わる。調書廃棄は通常、文書事故として扱われて監察事案になる。公益通報をきっかけに人事1課が調査に入れば、一連の捜査の問題が明るみに出るとAさんは考えたという。

「連絡が来れば実名を出すつもりだった」

 公益通報をした際、電話口で名前を名乗らなかった。もし身分を明かして通報し、人事1課が動かなければ、「身バレ」のリスクだけを背負い、捜査に反対する「裏切り者」と扱われる恐れがあったからだ。

 一方で、人事1課が調査するなら必ず追加情報を求めてくると考えた。メールに問い合わせがあれば、実名を明かす覚悟だった。

 「これまでの経験上、監察は動かないだろうなとは思っていました。身内の不正を積極的に調べようとしないので。ただ他に手段がなく、しかも公用文書毀棄(きき)罪という犯罪行為だったため、わずかな可能性に懸けてみたんです」

 Aさんは捜査を止めるため、慎重な判断を重ねて公益通報に至ります。表だって動くのが難しかった事情、そして「問題の根幹」とする警察の人事評価制度について記事の後半で語ります。

 Aさ…

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