同じ集落から立候補2人の「西村さん」 市長選の軍配は 京都・南丹
「美山かやぶきの里」で知られる京都府南丹市で15日、現職と新顔の「西村さん」による一騎打ちとなった市長選が投開票された。京都府中部にあり、滋賀、兵庫、大阪、福井の4府県と接する広さを誇る南丹市。だが、2人は同じ集落、わずか数軒先の「お隣さん」だ。
65世帯150人余が住むその集落は、南丹市八木町にある。天皇が代替わりした2017年の大嘗祭(だいじょうさい)に奉納されたコメ「京都丹波キヌヒカリ」のふるさとだ。
市長選は、3選を目指す西村良平氏(72)に、前市議の西村好高氏(49)が挑んだ。開票の結果、新顔の西村氏が2千票超の差をつけて初当選した。
ご近所さん困惑 激しい選挙戦を制したのは
集落には「西村さん」が多いが、2人は親戚筋ではないという。
現職はこの集落で生まれ育った。京大農学部を卒業後、教育学部に入り直して卒業。障害のある親の面倒を見るため、旧八木町職員に。合併後には市民部長などを歴任した。娘夫妻と孫の3世代で暮らす。趣味はクラシック音楽の鑑賞で、お気に入りはマーラーの「大地の歌」だ。
新顔は、神戸市出身の土地家屋調査士だ。この集落にルーツを持つ女性と結婚し、姓を「西村」と改めた。子どもの小学校再編に反対したことをきっかけに市議を志し、3期連続でトップ当選。政経塾の仲間の「為書(ためがき)」が選挙事務所の壁を埋める。高校野球が好きで、少年野球の指導もする。
立候補表明は告示の約3週間前。降ってわいた隣人の出馬劇に、「怒ったり声を荒らげたりした姿は見たことがない」(市幹部)というほど温厚な現職は、顔色を変えたという。「集落の総意で推薦が決まった後に出馬するなんて…」
一方の新顔は「落ちたら村八分かも。でも、市政を変えたい一心だった」。
中川派でも野中派でもない新しい選択
困惑したのは、昔ながらの人間関係に重きを置くご近所さんだった。ある住民は「市長選の話なんて、今回は誰一人、一切しません。いや、できません」。
集落の静けさとは対照的に、選挙戦は激しいものとなった。「お隣さん同士」だけではない、そのわけとは――。
南丹市は「スーパーマリオブラザーズ」を生んだ任天堂代表取締役フェロー、宮本茂さんの故郷。でも、誰もが知る有名人は、自民党幹事長や内閣官房長官を務めた故・野中広務氏だろう。
そして、もう一人。自民党衆院議員を務めたJAグループ京都の会長、中川泰宏氏だ。
「野中VS中川」。合併で南丹市となった2006年以降、6回の市長選は常にこの構図だった。
現職は「中川派」。旧八木町職員だった頃、町長が中川氏だった。合併して市職員となり、退職後に立候補を打診された。
初挑戦の14年は野中派の市長に敗れ落選。18年の2度目の挑戦で、野中氏の元秘書を破って初当選した。
2期8年間は「転換」を意識した市政運営が目立った。「多すぎる公共施設」の見直しや補助金のカットなど、財政健全化を進めた。上下水道料金の大幅値上げにも踏み切る。しかし、痛みを伴う改革は反感を招いた。
中川氏の存在を意識する市民もいた。
昨年、JA京都本店の南丹市への移転を巡り、必要な都市計画法上の届け出をしないまま営業させたとして、批判を浴びた。
「2期目に入った頃から、市長の背後にある影が見え隠れしてきた。それに嫌気がさしてきたんだ」。まちを歩くと、こう語る市民は多かった。
制したのは新顔だった。中川派でも野中派でもない、市民にとって新しい選択肢だった。
人口減少と高齢化が進み、停滞感が漂うまち。「しがらみがないからこそ、できることがある」。こう訴えた「よそ者」に、市民はまちの変革を託した。
【京都府南丹市長選の開票結果】
当 8547 西村好高氏 無新
6424 西村良平氏 無現
(確定得票)
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