酔ったシャニPと283プロのアイドルたち 緋田美琴編
58作目です。
前回のお話→novel/26954959
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時刻は午後十一時頃。
都内某所にある283プロダクション事務所のソファには、一人の男が横たわっている。
プロデューサーは、完全に酔っていた。
遡ること数時間前。
あの時断り続けたままで居れば、もう誘われなくなっていたかもしれない。
ガヤガヤと騒がしい居酒屋の中でプロデューサーはそんな思いに耽っていた。
「あれぇ?ぷおでゅーさーさん、全然ぐらす減ってないじゃないですかぁ~!」
隣でかなり出来上がっている彼女は誘ってきた張本人だ。
「わー、ちょっと──ちゃん出来上がりすぎだよ!ほら、お水飲んで───。すみません283さん、──ちゃんもう酔っちゃってるみたいで......」
「ぷおでゅーさーさん、お酒つぎますよ~!は~い、とくとくとくとく~......!」
「もう、283さん困ってるから!ほんっとすみません、普段はこんな早く酔わないんですけど......」
その後も何だかんだ飲まされ続けたがなんとか二次会は回避でき、帰路についていた。
しかし体調は前回と同じ。頭痛一歩手前の軽い酩酊状態だった。
P「仕方ない。風邪引くよりかはマシだと考えよう......」
そうして、再び事務所で休憩を取っていた俺は同じように眠気に襲われ眠ってしまっていた。
────────
美琴「(......?事務所の電気が点いてる......)」
レッスン帰りに鍵を返そうと事務所に向かっていると、遠目に見える事務所にまだ明かりがついているのが見えた。
腕時計を見ると時刻は午後十一時半。
彼女にしては早い時間だが、それでも事務所の電気が点いているのは珍しい。
赤になった歩行者信号を見ながら、美琴の頭の中には残業をしている二人の人物が浮かんでいた。
事務所のドアを開けて中に入る。
室内履きに履き替えて、リビングのドアを開け中に入るとそこには誰の姿も無かった。
美琴「プロデューサーのコート......」
鍵を返した後、ソファにコートが雑に掛けてあるのを見つけた。
どうやらプロデューサーがまだ事務所に居るようだが、肝心の本人の姿が見当たらない。
かといって、コートを着てこの寒さの中で外に出るとも思えない。
美琴「プロデュ.....あ、いた」
コートが掛けてあるソファに近寄ると探している彼が居た。
ソファに横になって寝息を立てている。寝ている姿を見るのは少し珍しいが、同時に彼らしくもない。
体調でも悪いのかと思い近づいてみると、かすかにアルコールの匂いがした。
美琴「お酒......飲んでたのかな」
ただ、彼の性格を考えると酔い潰れるまで飲むとは考えにくい。
美琴は酒を飲まないため、不定期に開催されている283プロ飲み会なるものに参加したことは無いが、潰れるまで飲んでいたなんて話も聞いたことが無い。ちなみに283プロ飲み会の参加人数は、3~4人となっている。
ということはどこかで飲んできたのだろう。それもスーツで。
美琴「......ふふ、お疲れ様」
美琴はクスッと笑うと、プロデューサーの頭側に座って頭を撫で始めた。
何かの感触を感じたプロデューサーは少し頭を動かした程度で、目覚めることは無い。
そして、普段撫でることのない頭は撫で心地が良いのか、美琴はプロデューサーの顔を見つめながら撫で続けていた。
────────
二十分弱が経過しただろうか。
美琴は止まることなく撫で続けていると、ついに動きが起きた。
P「ん......美琴......?」
美琴「おはよう、プロデューサー」
P「お、おは......?はっ!俺寝てたのか......!」
美琴「うん。私が来た時にはもう寝てたかな」
プロデューサーが時刻を確認すると時刻は0時少し前。
事務所に着いてから三十分ほど寝ていたことになる。
P「そうか......。すまん、だらしないところ見せちゃったな」
美琴「お仕事の付き合い?」
P「ああ。この前から誘われ始めてさ......できるだけ断ってはいるんだけど」
美琴「そうなんだ」
P「美琴は......レッスン帰りか?」
美琴「うん。今日は少し早めに切り上げてきたの」
美琴との付き合いはそこそこ長いつもりだが、『少し早く』という言葉にはまだ疑問が残る。
が、度々言っているほどほどにという言葉を少しでも受け入れてくれているのだろうとプロデューサーはポジティブに捉えることにした。
美琴「ねぇ、プロデューサー」
P「ん?」
美琴「お酒って、美味しい?」
意外な質問が飛んだ。
美琴はレッスンに差し支えがでるためアルコールの類は摂取しない。
おそらくこれまで酒類は周りの協力もあって摂取したことは無いし、当然本人にも興味は無い。
だから、美琴からこの質問が飛んでくるのは珍しかった。
P「珍しいな。美琴の口からお酒の話がでるなんて。もしかして興味があるとかか?」
美琴「どうだろう......。特に飲みたいとかそういった気持ちは無いんだけど......。ただ、283プロのアイドルの中でも何人かは飲んでいるじゃない?あと、社長とはづきさんと......プロデューサーも。だから、どうなんだろうって」
P「なるほどな。えーと、どうして好きかっていう話だけど......俺は人それぞれだと思う。お酒の味が好きな人も居れば、お酒の席......その場の雰囲気が好きな人も居るし」
美琴「そうなんだ......プロデューサーはどういうところが好きなの?」
P「俺か?そうだな......強いてあげるとすればその場の雰囲気かな。別にお酒を飲んでなくても、どんな人でも少しラフになるというか......そういうのが好きかな」
珍しく食いついてくる美琴に、プロデューサーは今日の出来事を思い出しながら話をする。
今日誘われた飲み会も別に嫌々参加したわけではない。普段参加したがらない理由も、アルコールを摂取してしまった後は自身の体質的にも仕事ができなくなるから、といういかにも彼のワーカーホリック加減から来るものだったりする。
美琴「お酒を飲んでなくても......?」
P「ああ。周りがお酒を飲んでて少しおおらかになってたりすると、自分もちょっとあてられて......って感じなんだけど......すまん、ちょっとわかりづらかったかな」
美琴「どうだろう......。みんなが楽しそうにしてると、自分も楽しい、みたいな......」
P「そうそう!だから、お酒はきっかけ作りみたいな感じなんだ。本当は無くてもいいんだけど、あった方が良いみたいな......」
美琴「じゃあ、プロデューサーもお酒を飲むと少し変わる?」
P「......ははっ、自分じゃいつもとあんまり変わらないと思うんだけど、社長とか夏葉たちなら何か違いを感じてるかもな」
一度飲んだ後も誘われているということは、恐らく酷い酔い方はしていないのだろう。
酔っている自分が他の人からどう見られているかわからないが、プロデューサーの記憶に残っている限りでは大丈夫なはずだ。
美琴「そう......プロデューサー。良かったら今度、私とお酒を飲んでくれない?」
P「え?でも美琴、お酒は......」
美琴「うん。私は飲めないから、プロデューサーが飲んでくれると嬉しいかな」
P「(サシ飲みで俺だけ飲むのか......!?)」
あまり酔うにも酔え無さそうな予定が決まってしまったが、美琴のしてみたいことならプロデューサーとして叶える以外の選択肢は無かった。
P「ああ、わかった。言ってくれたらスケジュール合わせるよ。──って、話混んじゃったな。そろそろ出ようか」
美琴「うん」
P「そういえばさっき、起きた時美琴が隣に座ってたけどさ......もしかして俺が起きるのを待っててくれたのか?」
美琴「......ううん」
美琴「プロデューサーが寝てたから、頭を撫でてたの」
P「ははっ、そうか。頭を......頭を撫でてたのか......?」
美琴「?うん」
一瞬納得しそうになったが、明らかに変な動詞が聞こえてくる。
念のため、言い間違いの可能性に賭けて復唱したが、どうやら言い間違いではないらしい。
P「それは......どうして?」
美琴「どうしてだろう......撫でられるところにあったから?」
P「そうか......」
美琴「ダメだった?」
P「ああいや、ダメじゃないけど......退屈じゃなかったか?」
美琴「ふふっ、意外と楽しかったよ。今度にちかちゃんにも教えてあげようかな」
P「そ、それだけは勘弁してくれ......!」
────────
後日。
にちか「プロデューサーさん、お話があります」
P「ど、どうした急にそんなあらたまって」
にちか「みこ......風の噂で聞きました。美琴さんに頭をなでなでしてもらったらしいじゃないですか」
P「い、いや、あれは不可抗力で......!」
にちか「否定しないってことは、事実ってことじゃないですか......!ぐ、私も触ります!」
P「いやいや、セットしてるしダメだって......!」
にちか「そうやって美琴さんのなでなでの感触を取っておこうたってそうはいきませんよ!私の手で上書きします!ほら、早くかがんでください!届かないのでー!」