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酔ったシャニPと283プロのアイドルたち 斑鳩ルカ編/Novel by あとかた

酔ったシャニPと283プロのアイドルたち 斑鳩ルカ編

4,080 character(s)8 mins

54作目です。
前回のお話→novel/26297786

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時刻は午後九時。
都内某所にある283プロダクション事務所のソファには、一人の男が横たわっている。
プロデューサーは、完全に酔っていた。

さかのぼること、数時間前。
「あ、言質取りましたからね!──みんなー!283プロのプロデューサーさん、飲み会参加してくれるってー!」
プロデューサーは、焦っていた。
散々断っていたテレビ関係者との飲み約束に、ついに断れず承諾してしまったのだ。
別に彼自身も飲みの場は嫌いではないが、ワーカホリックになっている今の状態では仕事が最優先だった。
そのため、何度も断っていれば流石に誘われなくなるだろうと勘ぐっていたプロデューサーに対して、誘いに乗ってくるまで誘えばいいじゃないかという狙いで誘い続けていたテレビ関係者たちの勝負は、後者に軍配が上がった。
言質さえ取ってしまえばあとはこちらのものと言わんばかりに、凄まじいスピードで準備が進んで行く。
幹事が決まり、会場が決まる。ここまでたった数分の出来事だった。

そして参加した飲みの席。
平日夜なこともあり十名弱の小規模なものであったが、こういう付き合いに長けている彼らを侮ってはいけない。
もちろんそんなことは承知のプロデューサーが侮るわけもなく、取引先との飲みの席ということもあり最初はセーブしていた。
が、相手方の勢いは予想以上ものだった。
飲めや歌えのどんちゃん騒ぎの流れに逆らえず、一杯、二杯、三杯と勧められるビール、ハイボール、焼酎、日本酒。
飲み放題の二時間が経過する頃には、胃の中でちゃんぽんされたアルコール類によってかなり酔いが回ってきていた。
そして、全員が二次会への参加表明をする中、ここしかチャンスがないと甘くなった呂律で帰る意志を伝えたプロデューサーに多少の、主に女性からの不満の声が上がったが、強く引き留めるものはおらず何とか離れることができた。
しかし、普段しない酔い方の上、この寒さでこのまま直帰はできなさそうだが、かといって近くに休める場所は無い。
判断が鈍くなったあ頭で何とか方法を考えて、おそらく今は誰も居ないであろう事務所で休ませてもらうことにした。

P「良かった、誰も居ない......少し休んだらはづきさんか霧子が来る前に一度帰ろう......」

頭が変な方向に引っ張られるような感覚があるが、幸い千鳥足になるほどまで酔っていなかったため事務所までは問題なく辿り着くことができた。
鍵を開け、ドアノブを引いて中に入る。
リビングに入りソファに横になると、先ほどまで感じていなかった眠気が急に襲ってきた。

────────

ルカ「────......?」

深夜三時。
レッスン室の鍵を返しに来たルカは、事務所のドアの前で何か違和感に気付いた。
この時間、普段は誰も居ないはずなのに中から気配がする。
あのバカプロデューサーは帰ったはず。かといって事務員やアイツ天井のクソ野郎もこんな時間に居るはずがない。
もちろんドアが開いていたとかではなく、傍から見ればなんの変哲もない戸締りがされたドアなのだが、ルカの中には何か言い知れぬ違和感があった。
違和感の正体が杞憂であることを信じて、ドアノブに手を掛ける。少しだけ力を入れてドアノブを捻ると、ドアが開いた。
最悪の事態を想定し、体に緊張が走る。
本当はプロデューサーが鍵を閉め忘れていただけなのだが、ルカはそんなことに気付くわけもなく慎重に、物音を立てず事務所の中へと足を踏み入れる。

入ってすぐ、かすかな残り香に気付く。
普段酒を全く飲まないルカにとって、それがアルコールだと気づくのに時間はかからなかった。
この事務所には酒好きが数人いるが、まったく声が聞こえないので彼女たちではない。
廊下誰も居ないことを確認し、リビングルームのドアノブに手を掛ける。
ゆっくりとドアを開けると、鼻につくアルコールの匂いが強くなった。おそらく誰かがこの中にいるのは間違いないだろう。

ルカ「(酔っ払い......?)」

部屋の隅まで視線を巡らせながら部屋に入る。
いつでも通報できるようにとスマホを片手に歩いていたが、すぐにその警戒を解くことになる。

ルカ「何してんだよオマエ......」

ソファで寝ているプロデューサーからは、アルコールの匂いが漂ってきていた。
心配して損した。とばかりにルカは大きなため息をつく。
それにしても、コイツがこんなところで酔って寝ているとは珍しい。
事務所内を見る限り空き缶や空きビンの類も見当たらない。

ルカ「あぁ、そういうこと────......」

そして、数分経過したがいまだ、ルカは不満そうな顔でプロデューサーを見ていた。
とりあえず鍵は返したがここで自分が事務所を出れば、中には酔った人間が一人のみという状況。
いくら大人の男といえど、酔っているうえに翌日何かありましたじゃ寝覚めが悪い。
かといってここで彼を叩き起こすほどの非情さは、今のルカには持ち合わせていなかった。

────────

P「ん、ん......ルカ......?」

ルカ「......!────......チッ」

P「ルカがどうしてここに......って、そうか!俺、事務所で寝てたのか......」

ふと、プロデューサーが目を覚ます。事務所に備え付けられている時計の短針は午前一時を指していた。
若干の気怠さを体で感じながら体を起こすと、ブランケットが捲れる。
寝る前にブランケットなんてとった記憶が無い。
そして、おそらくこのブランケットを掛けてくれた主は目の前に居る彼女だろう。

P「もしかして......ルカがしてくれたのか?」

ルカ「......鍵を返しに来ただけ」

それにしては、帰っていない。
いや、これに触れるのはあんまりよくなさそうだな。

P「ああ、自主レッスンしてたんだな。...何か暖かいものでも入れようか?」

ルカ「別にいい......もう帰る」

お礼もあっけなく断られてしまう。
そのまま帰り支度を始めたルカだが、時刻はもう午前一時。
運転はまだ避けた方がいいだろうが、さすがに一人で返すわけにはいかない。

P「ま、待ってくれ、送って行くよ」

ルカ「酒くせぇから寄んな」

しっしっ、とあっちへ行けのジェスチャーをされてしまう。

P「う......す、すまん。でも、さすがに一人で返すのは心配だ。駅まででも送らせてくれないか?」

ルカ「───......くせぇのは」

P「それはほら、一応口腔ケアとかは持ち歩いてるから......」

ルカ「......先行ってる」

と、鞄からタブレットを取り出してルカに見せると、特大のため息と引き換えに同行の許可を貰えた。
すぐに事務所を出ていくルカを事務所の戸締りをして追いかける。

────────

P「それにしても急に寒くなって来たよな。ルカ、寒くないか?」

ルカ「別に......」

ほぼ壁打ちに近い会話のキャッチボールだが、別にプロデューサーがルカの機嫌を損ねた訳でもない。
これが彼らの普段の会話ペースだった。

P「最近、レッスンの調子はどうだ?」

ルカ「普通」

P「羽那とはるきはどうだ?何か、困ってそうにしてたりしないか?」

ルカ「......最近」

珍しく、ルカがボールを投げ返してきた。

ルカ「あいつらが、オマエが最近コメティックのレッスンを見に来ねぇって嘆いてたから......」

P「......確かに、最近は忙しくてみんなのレッスンを見に行けてないな。ありがとう、明日にでも見に行くよ」

それ以降は駅に着くまでまた壁打ちに戻ってしまったが、ルカもちゃんと二人のことを見てくれているみたいで安心した。

P「それじゃあ、お疲れ様。今日はしっかり休んでくれ」

ルカ「......言われなくても」

P「ははっ、またルカが居るときにもレッスン見に行くよ」

ルカ「別に......来なくていい」

────────

次の日。ルカとの約束通りレッスン場に来ていた。
曲が終わったタイミングを見計らって二人に声を掛ける。

P「二人ともお疲れ様。これ、差し入れだから好きに取ってくれ」

はるき「わー...ありがとうございます......!」

羽那「プロデューサーありがとうー!はるきちゃん、あたしこのサンドイッチ貰ってもいい?」

P「ははっ、何か欲しいものがあったら追加で買ってくるからな。......ん、どうした羽那?」

サンドイッチのパッケージを剥きながら、羽那がこちらをじっと見てきていた。

羽那「なんだかプロデューサー、ちょっと久しぶり?」

はるき「そうだねぇ、わたしたちも最近はレッスン漬けだったし......」

P「───ははっ、実はルカに言われてな。『あいつらがコメティックのレッスン見に来ねぇって言ってたぞ』って」

若干ルカの言い方に似せると羽那は驚き、はるきは口に手を当てて笑う。

羽那「あはっ、プロデューサー全然似てなーい」

はるき「ふふっ、確かに似てないですねぇ────でも、羽那ちゃん」

羽那「?なぁに、はるきちゃん」

はるき「わたしたち、プロデューサーさんが見に来ないなんて話、してたっけ────?」

羽那「えー?どうだろう、覚えてないけど、ルカちゃんが言ってたなら言ってたのかも?」

P「え、言ってなかったのか?」

はるきの口からまさかの言葉が出てくる。
しかし、ルカが意味もなく嘘をつくとも思えないから、なおさら謎だ。

羽那「うーん......あ!」

羽那「もしかしたら、ルカちゃんもプロデューサーにレッスン見て欲しかったのかも!コメティックのレッスンはルカちゃんも居るし!」

P「羽那......それはさすがに無いと思うぞ?」

はるき「羽那ちゃん......それは多分無いと思う......」

羽那「えー、そっかー」

Comments

  • クロモコ
    November 22, 2025
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