「監督生はさ、なんで女なのにネクタイにしてるんだ? リドル寮長とかエペルとかリリア先輩とか、何人かネクタイをリボン結びにしている人いるだろ?」
食堂にて、いつもの1-A4人(3人と1匹)で食事をしていた時、ふいに監督生に尋ねたのはデュースであった。
監督生は女性である。最初は男子校に女子1人という状況を鑑みて男装をし性別を偽っていたのだが、なんやかんやでカミングアウトは済み、今は全生徒が監督生の性別が女性である事を知っている。
…なんやかんやが気になる?そこは、みなさんのご想像にお任せするとして。
そんな訳でカミングアウト後のあれそれも落ち着いたある日の昼時、多くの生徒で賑わう食堂で尋ねられたこの問いは、周りの生徒達が興味を惹かれる内容であった。
NRCは周知の通り顔面偏差値の高い学園である。闇の鏡、顔の良さで生徒決めてない?と監督生が訝しんだ事もあったりするが、今はそこは関係ないので脇に置いておくとして。確かに、傍から見て“可愛い”と形容される容姿の生徒(なおここに、本人の意思は反映されない事を追記しておく)の大半はネクタイをリボン結びにしており、本物の女性である監督生がリボン結びにしていても悪目立ちをする事は無い。
なら何故監督生はネクタイをそのまま結んでいるのだろう、女性ならリボン結びにしたいとは思わなかったのだろうか?そう純粋に疑問を抱いた彼の問いに、監督生はちょっとだけ口を噤み……内緒話をするように、声を潜めて返答した。
「んー…恥ずかしいから内緒ね? 実はさ、ネクタイってちょっと憧れてたんだ」
元の世界だと女性がネクタイを結ぶ事ってまずないから、今なら貴重な体験が出来るって思ったんだ、と監督生は続ける。
「自分の最も身近な男性のね、ネクタイを結ぶときのちょっと気合いの入った表情とか、ネクタイを外してホッと一息ついた時とか。その表情や動作、どれもがカッコいい! って思って…」
…さて、ここは先述した通り食堂であった。そして、今この場には多くの生徒がおり、その中には小声であろうと耳聡く拾える生徒も居るわけで。そんな生徒達の前で学園唯一の女子生徒がネクタイに関する仕草をカッコイイ、なんて形容した。その結果、意味も無くネクタイを結び直す生徒達が続出した。仕方がないだろう、思春期男子だし。
また、ガタッっと音を立てて何人かが席を立つ音も響く。理由?監督生の先ほどの言葉を聞き取れなかった者が席を移動した音である。仕方がないだろう、思春期男子だし(2回目)。
そんな、そわそわとする周囲の様子には気付いていないのか気にも留めていないのか…監督生はマブ達と会話を続けている。
「でも、自分は女だから誰かにネクタイを締めてあげる事はあっても自分自身のネクタイを締める機会なんて無いって思っていたらさ、まさかこんな事になるなんて!」
そう言って嬉しそうに笑う監督生であったが…思春期男子達が監督生の発言に俄かに殺気立っている。
地味にその殺気に当てられたエースが背後の気配に声を震わせながら、気になった事を尋ねる。
「へ、へぇ…。ちなみに、その身近な男性って…?」
が、その問いがいけなかった。その質問を聞いた瞬間、監督生は顔を真っ赤に染めて「い、言いたく…無い…」なんて恥じらっている。
そんな監督生の反応に、当然思春期男子達の殺気が更に膨れ上がる。未だに監督生はその殺気に気付いていないのは、思春期男子達の殺気が向かう先が監督生ではなく監督生の言う“身近な男性”であるからか。…あと、エース・デュースにも向けられていたりするのだが、こちらは怒りを向けられているというより「早く監督生のいう男の正体を暴け!」という無言の圧力である。
その空気を正確に読み取ったエースは「いいじゃん、教えろよ~」なんて軽く言っている。内心で(俺らの平穏のためにも!)と語尾に付けているが。
「その人って、僕たちが知っている奴か?」
同じく空気を読んだデュースが尋ねれば、監督生は相変わらず顔を真っ赤に染めたまま、
「知らない…会ったことも無い人だ、よ…?」
「誰なんだぞ気になるんだゾ! それってもしかして、子分の故郷ってのにいる奴か!?」
膨れる殺気におびえたグリムが早口でまくし立てる。明らかに周囲の殺気におびえている様子であったが、監督生は「う、うん、まあ…」と同意するに留めた。
しかし残念ながらそんな解答で周囲が満足するはずもなく。針の
「嫌だよ絶対エースからかうし…」
「からかわない。もしエースがからかったら僕が大窯を落とす。だから教えてくれないか?」
デュースの助け舟もあり、監督生は暫し悩んで…意を決したように頷いた。
「……………もー、仕方ないな。誰にも言わないでよね?」
そう言って、マブ達にしか聞かせないように彼らの耳元でボソリと答えれば――
「はあっ!? お父さん!!?!?!!!???」
監督生の予想外の回答に、つい大声を上げてしまったエースである。が、そのおかげで周囲の殺気が一気に霧散した。
しかしその反応は監督生にとってはたまったものではない。
「ちょっと!声大きい!」
からかわないって言ったじゃん!と先ほどとは別の理由で顔を染め、まるで言い訳するように早口でまくし立てる。
「いいじゃん別に! ちょーっと動作が格好いいなーって思っただけだし! 普段は腹立つ事も多いけど、そういう所は嫌いじゃないなーって思ったって!」
そう言ってうぅ~、と唸る監督生を慌てて宥めるマブ達。
そうして今日も、穏やかとは言い難いNRCの昼時の時間は過ぎていくのであった。
女監督生ならリボン組に入るんだろうな~…と思ったら出来てた話。
会話文のみ速攻で仕上げてその後飽きて(←)放置してたのでこのままだと完全にデータの海の底にいきそうだったので今回はいい機会だしと救済しときました(笑)
監督生愛されタグ一応つけましたが、愛されというかNRC唯一の女性って事で愛玩されてるイメージで書いてます。
一応監督生の話ではあるのでシリーズに入れてますが、不都合がありましたらシリーズからは外します。
---------- 以下読後推奨 ----------
監督生
いいじゃんネクタイに憧れを持ったって!(プンプン)
超怖かった3馬鹿
背後の圧力がヤバかった…監督生にあそこまで聞き出せた俺達に何か見返り寄越せよな!(なお貰えない)
周囲のモブ達
可愛い可愛いNRC唯一の女生徒の憧れの奴だと…!?誰なんだ聞き出せた暁には徹底的に叩きのめして監督生には近寄らせな………え?な~んだ~~~(ホッ)