公立病院「9割赤字」の衝撃…診療の停止まで 人口が減る地域医療を守る“処方箋”を探る
人材の確保に「研修医」
20年前までは常勤の医師が10人以上いましたが、2013年には3人にまで減少。 そこで黒木病院長が目をつけたのが、医師の卵「研修医」です。 患者の治療方針などを話し合う「カンファレンス」に出席していた安藤猛さん(26)。 2年前に医師免許を取得し、普段は名古屋の病院に勤務していますが、「地域医療研修」として4週間、飛騨市民病院で学んでいました。 「名古屋の病院では救急の対応がメイン。日中の外来や入院管理がどちらかというとおろそかになってしまう。こういう地域医療の貴重な機会に経験できれば」(研修医 安藤猛さん) この日、安藤さんは外来の診察へ。 「どんな感じに痛いですか?ちくちく?どーんと重い?」(安藤さん) 「ずきんずきんという感じ」(患者) 「人生の中で一番痛かったのを10点、全く痛くないのを0点とすると?」(安藤さん) 「5~6点かな」(患者) まさに即戦力となっている、研修医。 外来のほか、常勤医の指導のもとで入院患者の主治医も担当します。 「愛知県の病院では診られない患者さんの層。入院患者さんは、元の病院では診られない。今までの研修以外で学べるものがあって、すごく勉強になる」(安藤さん)
飛騨市民病院長の信念
2011年から研修医の受け入れを始め、今では愛知県や富山県などから年間約40人が来るという飛騨市民病院。 市のふるさと納税を活用し、研修医用の住居も整備しています。 地域医療を守るため、医師の確保に奔走してきた黒木病院長には、ある信念がありました。 「当院のような小さな病院に派遣されるような人材はいない。これを打ち破るにはどうしようと思った時に、"人を育て教育研修する病院"という位置づけにもっていこうと」(黒木病院長)
地域住民も病院を支える
そして、地域の住民たちも「飛騨市民病院を守る会」を作り、ボランティアで周辺の清掃活動などを続けています。 研修医との交流会では――。 「この前の雪、体験されました?」(住民) 「しました。40cmくらい積もってびっくりしました」(研修医) 「患者さんから『年はいくつなんだ』と言われて『26歳です』と言ったら、孫が24歳だって。『婿に来い』って」(安藤さん) 「当院の医師が減ってピンチな時に、住民の方々が何とか助けたいと、自発的に作っていただいた『守る会』の存在は、私たちにとって、とても大きな支え」(黒木病院長) 歯止めがかからない、少子高齢化。 そのしわ寄せを最も受ける“へき地”で学ぶことが、今後の日本の医療を守っていくことにつながると、黒木病院長は話します。 「やがて来るであろう、日本中の高齢社会の医療はここにある。医師が少ないところにも来て、そこの医療を経験することで、こういう医療があることを知り、支えようという人材が全国に広がってほしい」(黒木病院長)