コメ価格が歴史的高値なのになぜ…120年続いた老舗米問屋が破綻した意外なワケ
● 米卸業者の売上高は大幅増 一方で広がる大手と中小の格差 長期にわたって低迷していたコメ価格は、コロナ禍後の「令和の米騒動」で、かつてない水準に急騰した。コメの実勢価格の基準となる相対取引価格(玄米60kg)は、2024年産米の場合、前年の平均1万5000円台から跳ね上がり、年平均では2万5000円台という歴史的高値に達した。 こうしたコメの価格高騰は、流通を担うコメ卸の業績にも大きく影響を及ぼす。 東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースから、5期連続で業績比較が可能な全国の米卸業者(446社)の業績を抽出した。 最新期決算の売上高合計は1兆9239億円で、前期比34.3%増と大幅増収を記録した。コメ価格の高騰が売価に転嫁され、流通業者の売り上げアップに寄与した。 利益の上昇も顕著だ。最新期の利益合計は387億円で、前期(122億円)の3倍以上に膨らんでいる。446社のうち、赤字は47社とわずか1割にとどまった。 相場による価格変動が大きい商品は、一般的に商品の値が高騰すれば流通業者の売り上げは伸長する。そして、利益にも好影響をもたらす傾向が強い。安く仕入れた商品が高く売れるからだ。こうした現象の代表格は、鋼材や木材などが挙げられる。そして、コメの場合もまた、相場の上昇が卸売業者の業績向上に繋がったことがわかる。 ただ、446社を売上規模別に分類すると、年商100億円以上の大手(38社)では、全社が黒字だったのに対し、年商10億-100億円の中堅(178社)は赤字企業率が8.4%だった。 さらに、小規模の年商10億円未満のレンジでは、赤字企業率は13.9%に拡大し、事業規模によって収益格差が拡大する構図が浮かんでくる。
全国に集荷網を持ち、パックご飯などの加工食品部門も備える大手は、高値を利用して売上高を大きく伸ばした。増収効果で高い利益率を確保し、最高益を更新する企業も現れた。 一方、特定産地や限定的なルートに頼る中小の卸業者は、仕入れで苦慮し、供給責任すら果たせない事態に直面した。長い間続いた事業環境の悪化で、中間層以下の米卸は疲弊し、資金力や財務が脆弱(ぜいじゃく)化している。経営改善に取り組み、ようやく債務超過を脱した平石屋吉田商店は、まさにこうした企業の典型だった。急激な仕入価格の高騰に対応できず、令和の米騒動を乗り切る力は残っていなかった。 ● コメ価格は下落の見通しで 「高値掴み」のリスク懸念も 一時期、スーパーなどの店頭から消えた国産米は、2025年産米の流通とともに復活し、コメ不足は払しょくされたようにみえる。生産コストが上がり、価格は以前の水準に戻っていないが、コメの相対取引価格は4年ぶりに4カ月連続で下落し、店頭価格もしばらく後には下落する見通しという。 過熱した需要はようやく落ち着きを取り戻してきたが、価格の揺り戻しの局面では「高値づかみ」のリスクが浮上する。買い負けを避けるため、身の丈を超えて仕入れに走った業者も少なくない。そうした業者ほど、今度は保有在庫の価格が下落して逆ザヤとなりかねないのだ。 消費者だけでなく、生産者や流通業者にも大きな混乱をもたらした「令和の米騒動」は、新たな段階に入りつつある。消費者のニーズは移ろいやすく、需給や価格の環境も大きく変化している。こうした状況のなかで、中小の米卸業者にとっての試練は、むしろこれからが本番かも知れない。
吉野祐介