晴れた日には犬を洗って
すみません、終わってません。
終わるかどうかもわかりません。
「インタビュー withサーヴァント+α」の後の時間軸です。
色々すっ飛ばしました。
ランサーが冒頭から犬で、人型としては出て来ません。アーチャーの記憶のみです。
まだ何も始まってないですが、長いんで切りました。
作者は犬を飼ったことはありません。なので犬ってこういうイメージと言うのを詰め込んでみました。猫でもよかったと思いますが、ランサーってヒョウとかチーターのイメージなので日本で散歩させるのは無理があるかと思いました。
この話のテーマが何なのかさっぱりわかりません。多分、犬の世話するアーチャーが書きたかったのかもしれません。
ラストについてもかなりヤバい題材かと思いますが、何となくなんとか出来るかなあと。
なので、その内続き書きます。
どうもまとまりがなくていかんですね。楽しんでいただければ嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
表紙のワンコには「好きにしてください」と言う表題がついていました。可愛い❤️
https://www.photo-ac.com/main/detail/1416882?title=%E5%A5%BD%E3%81%8D%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84%EF%BC%88%E6%9C%8D%E5%BE%93%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%89
最後に。マシュマロでもコメントでも感想いただけるとものすごく嬉しいです。この話でなくとも歓迎してます。
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「こら、大人しくしないか!」
押さえつけようにも全く言うことを聞かず、アーチャーは思わず頭を叩きそうになり、手を止めました。イヤイヤ、頭を叩いても相手には伝わらん。本来なら、噛みつくのが一番だ。ねこさんの教育も、悪い事をしたならその場で言葉でなく、分かりやすく傷つけない方法で猫パンチしていた。しかし、人間では力が強すぎるし加減が分からない。だから、分かりやすく一言で、大声でなく気持ちが伝わる程度に叱……
「ええい、出来るか!いい加減にしろ!この駄犬!」
全身ビショ濡れで泡だらけになったアーチャーが叫びます。当の本人はアーチャーに抱きついて興奮し、尻尾を千切らんばかりに振っていました。まあいわゆるハイになっていたのです。
アーチャーは、風呂場で抱きつこうと暴れる犬に抵抗しながら必死に洗いました。長い毛足の犬は縺れて束になっていて、一筋縄では洗い切れませんでした。毛を毟り取らないよう、丁寧にかつ慎重に、それでいて繊細に。アーチャーは本当に必死でした。なのにこの駄犬ときたら、抱きつくわ舐めるわ腰を振るわ、嬉しさの極限で見境なくハイになり、とにかくアーチャーは服を半分脱がされ、泡とお湯に塗れて漸く終わろうかと言うところまで何とか漕ぎ着けました。シャワーをかけてさあ終わりというところで、急に犬は暴れ回り始めました。風呂場をバタバタ逃げ、しまいにはアーチャーを巻き込んで倒れ込み、今、アーチャーは犬に組み敷かれている有様です。
ハアハアと息を荒くしながら、アーチャーの顔と言わず口の中まで舐め始め、顔を背けると耳や首まで舐めました。
「こ、こら、よさんか。こ、…ら、…っ」
耳や首はアーチャーが弱いところでした。しかし、犬に舐められてよがるのは流石に人として、いえ、英霊としてどうかと思います。いくらコレがランサーの変身体だとしてもです。
それはいくらなんでも、おかしいだろう。せめて人に戻ってからあの半神にされた方が、単にハイな犬より遥かにマシだ。と、思う。
「ランサー、いい子にしないと、ぶ、こら、エサ抜きだぞ」
人の言うことなんて聞きゃしません。それはそうです、いくら犬だとしてもあのランサーなのですから、そりゃあ聞くわけありません。
はー、と大きなため息を吐いて、アーチャーは諦めてビショ濡れの犬を抱きしめました。
「よしよし、ランサー、早く出てドライヤーしような」
ベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ。
こいつ、普通の犬より質が悪い。こちらの話を理解しているのかしていないのか。していないのだろうな、でなければ、あの誇り高い半神がこうまでだらしなく抱きつくなんて……いや、だらしなかった。腰を振る様も既視感が……そうだった。待ての出来ない男だったな。
頭が痛い。一体どうしたらこの呪いは解けるのか。
昨日、凛からアーチャーに連絡がありました。
『早く来て!』
それだけ言って切られた電話で、最速で行ってみると、公園で大きな犬の体に必死に抱きつく凛がいました。
「どうしたのだ、この犬は?」
「ああ、来てくれたのね!よかった!」
微かに青みがかる灰色のアイリッシュウルフハウンドに引き摺られそうになりながら、いや引き摺られて凛は叫びました。
「この子、ランサーなの、引き取って!」
言うや否や、赤い目をしたアイリッシュウルフハウンドがアーチャーに襲いかかってきました。不意を突かれて思わず地面に尻餅をつくと、アイリッシュウルフハウンドはベロベロと顔を舐めてきました。
「よかった、やっぱりアーチャーだって分かるのね。じゃあ頼むわ」
「凛!何の話だ!この犬さんがランサーだと言うのはどんな理由だ!こら、やめんか、犬さん、まて、こ」
凛が肩を竦めます。
「キャスターがそう言ったのよ」
アーチャーは顔中舐められながら凛を仰ぎました。
「キャスターが…?一体何をしたんだ、ランサーは?」
心なしかランサーだと言われる犬の顔が泣いているように見え、アーチャーはランサーの失態を確信しました。
「キャスター曰く、『その犬にはお似合いよ。しばらくその姿で相応しい目線に立って、犬の心を満喫するといいわ』ですって。流石神代の魔女よね、英霊を犬に変えるなんて…凄いわ」
いや、そこに関心しては自分の身も過去の自分も恐ろしいばかりだ。
「だが何故君が巻き込まれていたのだ?こんなもの、衛宮士郎にでも押しつけておけば良かろうものを」
アーチャーがまだ顔を犬にベロベロ舐められながら皮肉に言い捨てると、凛が驚いたように目を見開きました。
「あら、そう?衛宮君にランサーを引き取ってもらいたかったの?じゃあ今からそうしようかしら」
アーチャーは口を閉ざし、しばし考えました。
アーチャーは、今まで衛宮邸に入り浸る己のマスターの為に何度も通い、幾度となく衛宮士郎に嫌味を吐いて来ました。過去の愚かさを指摘するのは気分がいい…もとい、自分の義務でもあります。バカな道に進んで結局後悔しては意味がありませんから。その為には嫌味も当て擦りも意地悪だって楽し…いえ、やらなければならない事なのです。
確かに、衛宮士郎は犬を飼った事はなくても上手くやるでしょう。けれど、英霊なのに犬というランサーを放っておくことが、自分には出来ない事は分かっていました。ただ、だからと言ってランサーの様子を確認する度にじろじろ観察された挙げ句、“へー、お前ランサーと付き合ってんのか”なんて言われようものなら海の藻屑にしてしまいかねません。そうなったら胸は空くでしょうが、その後を考えると、恐ろしくて出来ません。冬木の虎や、白いおねーちゃんに、赤い悪魔に、間桐の聖杯が黙っていないでしょう。何回殺されれば許されるのかな、オレ。と考えるくらいにはまだ正気でした。
「いや、それは、……む」
「あーもう、いいからいいから、わかったから、それ持って帰ってよ」
「いやしかし、私のアパートではこんな大きな犬さんは飼えない」
「んー、それもそうねぇ。じゃ、とにかく衛宮家か家かどっちか選びなさいよ。私はどちらかで暮らせばいいわ。キャスターによると、確か2週間で元に戻るって言ってたし。まあ、他にも方法はあるらしいけど、……どうやら恋人のキスじゃなさそうね」
ゲスな笑顔で凛が笑いながら言いました。
ああ、なんてゲスなんだ。
アーチャーは、今も抱きついて離さずひたすらベロベロ舐めるランサーに、口の中も舐められていたからです。
「分かった。では、凛、今日からよろしく頼む」
「え、あー、やっぱり家を選ぶか。分かったわ、私、衛宮邸にしばらく行ってる。いい、ランサーいい子にしてね。家の中で変な所触ると大変な事になるわよ、ね、アーチャー」
ニッコリ笑う赤い悪魔。なんて眩しい笑顔でしょう。
変な所を触らなくても大変な事になるじゃないか。アーチャーは思いました。
この間のペーパーナイフの件とか、その他にも色々。家を片付けているだけなのに、何度危ない目にあったか。ああ、ちゃんと死んでおいてよかった。生きてたら命がいくつあっても足りないだろう。
最近の事だけでなく、ロンドンの生活までズルズル思い出してきたので、命があった事に感謝しなくてはなりません。本当に、いい師匠だったよ、君は。
複雑な思いを抱きつつ(ほぼ嫌味ですが)、とりあえず立ち上がりました。
「場所の提供、感謝する。何かあったらこちらから連絡するから、あー、その、心配しなくていいぞ」
凛の目が死んだようになりました。アーチャーは不思議に思いましたが、主人の奇行に慣れていたので何も言いませんでした。
「はいはい、わかったわかった。邪魔しないわよ、ハイハイ」
「ああ、すまないな、凛。このお礼は必ず」
「ありがとう。じゃあ早速だけど、アーチャー」
「何だね」
アーチャーは悪い予感がしながらも凛に聞きました。
「家に帰って支度するから、荷物よろしくね」
オレはポーターか。贅沢な使い方だな。使い魔としては正解かも知れんが、しかし、お使いをしに現界したのではないのだが。
「了解した。マスター」
言いたい事をグッと堪えてアーチャーは頷きました。まあ、人間の足で歩くなら結構時間がかかりますが、英霊ならさほどかかりません。ただ、霊体化出来ないので、人の目を気にしなくてはなりませんが。
「では一足先にランサーを君の家に置いてくる」
ふと、ランサーが目に入りました。悲しそうな顔をしています。今にもクゥーンと鳴きそうです。
「わかった、一緒に行こうな」
己の甘さも痛感しています。ランサーが人型なら軽く往なせる頼みも、この姿では許してしまうでしょう。全く頭の痛い事だ。
「仲のいい事」
「ところで凛、この犬に英霊としての記憶はあるのか?」
「さあ、そこまで知らないわ。聞きたかったらキャスターに直接聞いて」
あの魔女に聞いて素直に教えてくれるのでしょうか?自分も魔女の怒りに巻き込まれてしまいそうです。君子危うきに近づかず。危ない橋を渡る時は、勝算がある時だけです。ゼロどころかマイナスの状況ではやる気が起きません。
「じゃ、行きましょ」
凛が言いました。
「さて、行くとなると君の問題があるのだが」
そう、ランサーは今犬です。いくら以前はランサーだったとしても、どう見ても犬です。しかも日本では珍しい超大型犬です。アーチャーの腰まである体高は、この犬種の中でもかなり大きい部類です。リードを付けずに散歩しようものなら逮捕されかねません。アーチャーは慎重に首輪とリードを投影し、ランサーに話しかけました。
「これから君にリードを付ける。いいか?外を歩く為だ」
ランサーは信頼の眼差しでアーチャーを見つめます。
何となく、気がひける。犬さんを騙しているようで心がほんの少しだが痛む。
アーチャーは頭を振ってランサーに首輪を着けました。初めちょっと嫌がるように頭を振っていましたが、痛くないと気づいて大人しくしました。
うん、君の青に似た色を投影して正解だ。何とよく似合う。やはり、君は美しい。
アーチャーの意識が意味不明な事をぐるぐると吐き出し、おや、自分はこんなにランサーを好意的に見ていたっけ?と不思議に思うほどです。しかし、その間も隙あらば舐めてくるランサーのおかげで、ちょっと途切れがちではあったのですが。
「ところで、凛。何故君はこの犬になったランサーを預かっていたんだ?それにキャスターとはどこで会った?」
公園を出て歩きながら、アーチャーは凛に尋ねました。凛は肩を竦めながら答えます。
「公園近くでキャスターにすれ違ったのよ。物凄く怒っていて、私の顔を見るなり言ったの。
『この駄犬を片割れの所に持って行ってちょうだい。ああ、マスターの所でもいいわ。とにかく、あちこちで私の目に触れないで欲しいのよ。全く、顔がいいと思ってる男なんて碌なもんじゃないわ!』
『え?キャスター、何のこと?』
『あれよ、あの犬!』
『うわあ、大きな犬。あの犬がどうかしたの?』
『ランサーよ。姿を変えてやったわ。その犬にはお似合いよ。しばらくその姿で相応しい目線に立って、犬の心を満喫するといいわ』
で、柳洞寺に帰って行ったってわけ」
「結局面倒事を押し付けられているではないか。全く……」
これ見よがしに額に手を当てて頭を振るアーチャーを見て、凛がニヤァリと笑いました。
「まあ、そうだけども。アーチャー、キャスターは“片割れ”の所に持って行けって言ったのよね」
「な、何が言いたい」
「いやあね、言わせたいの?」
そういうとこだぞ遠坂。
「言いたくないのならいい」
「誤魔化しちゃって」
聞こえてるぞ、凛。何がクスクスだ。全く。
「皆んな公認なんだから、いいじゃない、堂々としていれば、ねぇアーチャー」
「コソコソなど初めからしとらん」
「あら、ご馳走様」
もう少しお淑やかにしておけばいいのに、すぐ本性が見える。そういう所だぞ。
言いたい事は山ほどあれど、ここは黙っておきます。災いは遠ざけておいた方がいいに決まっていますから。
遠坂邸に着いて、凛は荷物を作る為にバタバタと動き回りました。一応2週間の荷物です。年頃の娘さんなのでどうしても多くなります。部屋から次々物を出してはスーツケースに纏め、日常品はアーチャーが、魔術道具は凛が持って行く事になりました。
その間ランサーは大人しく居間で寝ていました。少し疲れたようです。あれだけ興奮すればさもありなん。嬉ションしなかっただけでも良かったと思わなければなりません。
遠坂家はペットいえ、使い魔としても生き物を飼ってはいなかったようです。水をあげるのに犬用の器がなく、とても高価な陶器を使わざるを得ませんでした。あれだけ舐め回したのですから、そりゃもう口も喉も乾いているでしょう、器は空っぽになっていました。
そうだ、餌をあげていなかった。アーチャーは思いましたが、犬として扱っていいのか、ランサーとして扱っていいのかアーチャーにはまだ判別がつきませんでした。それで水だけ置いて荷物を作っていたのですが、さすがに出かけるとなると声をかけずにいられません。
「ランサー、凛を送ってくる。待っていてくれるか?」
けれど、ランサーは起きませんでした。疲れたのだろうとアーチャーは無理に起こす事はせず、ランサーの前から離れようとしました。そこへ、赤い悪魔の声がかけられました。
「ランサーを家で1人にしとかない方がいいわよ」
確かに。もしランサーがうっかり何かの罠にかかってしまったら、常でも危ないのに、犬の身ではさらに命の危険があるのではないでしょうか。
「だが疲れて寝ている」
凛がやれやれとため息を吐きました。
「なら、外に繋いでおいてよ。結界があるから簡単に外には出られないし、家の中より危なくないわ」
「なるほど」
アーチャーは納得して頷きました。犬は、もとい、ランサーは寝ていて動こうともしていません。アーチャーは諦めてランサーを抱え、外に出ました。玄関より少し奥に手頃な木を見つけ、そこにリードを繋げて言いました。
「いいか、すぐに帰る。大人しく待っていてくれよ」
頭を一撫でしてアーチャーは立ち上がりました。寝ている様子がとても気になったのですが、「アーチャー、早く行くわよ!」なんて言われたら行かずにはおられません。仕方なく、急いで帰る事を肝に命じて、用を済ませる為にその場を離れました。
それが間違いの元でした。
Comments
- ねいねいMay 13, 2020