「悪魔のような制度」自治医大・修学資金3766万円“一括返還”巡る訴訟で原告側が意見陳述「家族か医師免許かの二択、迫らないで」
「税金だからこそ法律にのっとった契約であるべき」
A氏は意見陳述で「自分の判断をすべて他人のせいにしたいわけではない」とも述べ、自己責任論を一度受け止めた上で制度の構造的な問題を指摘。 「この裁判は私一人の事情にとどまらない。同じような制度の下で、家族か医師免許かという二者択一を迫られないようにするためのものでもある」と述べた。 また会見でも「税金だから何をしてもいいということではない。税金だからこそ法律にのっとった契約であるべきだ」「声を上げることもできずにいた先生もいる」と主張。制度改善を訴えた。
1月の甲府地裁判決「追い風なのは間違いない」
原告側は今後の期日で民法と消費者契約法に関する主張を展開する予定。 今年1月には、地域枠制度を巡り、適格消費者団体「消費者機構日本」が山梨県の違約金条項の差止めを求めた別件訴訟で、甲府地裁が消費者契約法9条1号・10条違反の不当条項と認定し、請求を全面認容する判決を出した。 判決は、総額936万円の修学資金とその利息の返還によって県の損害は「十分に填補される」とし、これとは別に最大約842万円の違約金を課す条項を過大な負担と評価。 自治医大の制度と山梨県の地域枠制度は仕組みが異なるが、高額な金銭負担を課す構造は共通する。原告代理人の伊藤建弁護士は会見で「われわれのケースとは似ているが、だいぶ違う部分もある。ただ追い風なのは間違いない」と評価した。 次回期日は6月8日で、判決は早くとも来年以降になる見通し。
自治医大側は「合意のうえで貸与」主張
なお、自治医大は弁護士JPニュース編集部の取材に対し、次のようにコメントした。 「本学では、経済的事情により高い資質や志が行き場を失うことのないよう広く門戸を開き、条件を満たすことで返還を免除する『修学資金貸与制度』によって、入学金・授業料が実質不要となる制度を実施し、経済面から学生の志を支えています。 この制度により、本学に入学された学生の方々は平等な学びの機会が得られ、本学の教員も一丸となって、学生の方々の志や社会の要請に応えようと総合医の育成に取り組んでいます。 在学中に貸与した修学資金は、医師となった卒業生が一定の年限を出身都道府県における地域医療に従事することで返還が免除されます。これまでに3800名以上の卒業生がその志を実現し返還が免除され、返還が免除された後も約7割の卒業生が出身都道府県に留まり、それまでの経験を活かしながら、地域医療に貢献しているところです。 しかしながら、免除の要件を満たさない場合には、在学中に貸与した修学資金(本来大学に納めるはずの修学資金)は返還いただくことになっています。 これらの修学資金貸与制度については、受験生に公表されており、本学の理念や制度にご賛同いただけない方はそもそも本学を受験しないという判断が可能です。もしくは受験して合格しても、入学するかはご本人の選択に任されています。 実際の貸与にあたっても、本学と学生との間で貸与契約を締結し(学生が未成年の場合には親権者が連帯保証人となり、親権者の同意のもとで締結し)、合意のうえで貸与しており、本学が学生に対し貸与制度を強いているかのような評価は妥当ではありません。また、本制度が憲法違反であるとの指摘も全く当たりません。 係争中の本事案については、訴訟前から先方に対して再三にわたり、大学の姿勢と考え方を伝えて、修学資金の返還を求めてまいりました。本事案で原告となっている医師は、上述の本学の制度を理解した上で本学を受験し入学され、本学との貸与契約に基づき修学資金の貸与を受けて本学にて医学を学び、その結果医師の国家資格を取得されている方です。 そして、その後、当該医師の判断で、地域医療に従事することを断念され、貸与契約の返還免除の要件を満たさなくなったことから、本学は、同貸与契約に基づき、当該医師らに対して返還を求めており、かかる返還請求は、契約に基づく正当な対応であると考えております。 本学としては、引き続き修学資金の返還を求めていくとともに、この制度の社会的意義の大きさ、憲法はもとより関係法令に適合していること等について、今後も必要な主張を尽くしてまいります」
弁護士JPニュース編集部