初恋は実らない
槍弓初投稿がパラレルってどういうこと?で、すみません。
学園パラレルの無駄にシリアスです。
皆、別人に近い&モブ女子が結構出でくるので注意して下さい。
誤字・脱字がありましたらお気軽にお知らせ下さいませ。
まさかの100users入り、ありがとうございます‼︎フォローして下さった方にも感謝です!
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夕暮れ時の教室。
陽の光が暖かみのある色で机や椅子を照らす中、忘れ物をしたと声に出しながら同じクラスのランサーがやってきて、委員会が長引いてたまたま教室に一人で居たアーチャーと目が合った。
ランサーとアーチャーは、同じクラスになった当初に衝突しており、その後、小競り合いを続けていたが、1ヶ月も経つとお互い性格が合わないと割り切り距離を取る仲となっていた。
だからアーチャーはランサーが教室に入ってきて視線が合おうとも声はかけなかったし、何事も無かったようにカバンを手に取り帰り支度を続けた。
ランサーも一瞬眉を顰めたが、自分の机に向かい、忘れ物らしいノートを手にして急ぎ教室を出て行こうと踵を変えた。
その時、ランサーの束ねてある長い青い髪の一房がふわりと揺れ、教室の橙色と混じりあった。
アーチャーはそれを無意識のうちで目で追う。
素直に綺麗だと思った。
キラキラと光って見えた。
何かすごく特別なものに思えた。
相手が背を向けていたから、気付かれないと思って油断していたのだと思う。
いきなりランサーが足を止め、アーチャーに振り返った。
またばちりと視線が合う。
「お前、俺のこと好きなのか?」
唐突だった。
唐突過ぎて、アーチャーは言葉が理解できず何度か瞬きをした。
ランサーはアーチャーを正面から見据えてはいたが、いつも何かしら感情を乗せていた紅玉の瞳には何も感情が無かった。
それに気付き、アーチャーは冷水を頭から浴びたようにザッと体温が下がるのを感じた。
手先が冷える、変な汗が出る。
アーチャーはランサーに伝えるべく何かしらの言葉を探したが、いつもの嫌味が全く頭に浮かばず小さく口を開け息を吐くだけに至った。
否定しなくては、誤解を解かねば。
だが、口から音にならない。
何分と経過したのか分からない中、アーチャーの返事を待たずして、ランサーは小さく言った。
「気持ち悪りぃ」
それを聞いてから、アーチャーはその後のことをよく覚えて無い。
気付けば夕暮れだった教室はすっかり暗くなっていて、初秋の寒さが身を包んでいた。
カバンを強く握りしめながら、意味が分からないとアーチャーは思う。
何故、あんなことをランサーは言い出した?
勘が鋭い男だ、何か好意的なものを私から感じたのだろうか?
正直、憧れなら少なからずあった。
真っ直ぐな精神と性格、黙っていれば美しい相貌。
自分とは正反対で羨望していた。
だが、それだけだったはずだ。
それだけのはずだったのに、あんなに動揺する自分がおかしい。
胸が痛く感じるなんておかしい。
涙が出そうだなんて…。
「帰ろう」
ここで何時迄も思案している場合ではない。
家にはまだ幼い小学生の弟が待っている。
アーチャーは力なく立ち上がり教室を出た。
暗い廊下を歩きながら、ひたすら明日が来ないことを祈った。
恋を自覚する前に、こうしてアーチャーの初恋は終わりを告げた。
「それで、現在もまだ引きずっていると」
「…引きずっていない」
「引きずっているではないか、同じ高校を受けるぐらいに」
「違う、家からここが一番近かったからだ」
「俺が分からないでか」
「うるさい」
アーチャーは鶏肉と大根と絹さやの煮物を口に入れ、向かいに座っている佐々木を睨んだ。
「おお、その煮物は美味そうだな。一つくれ」
他のクラスメイトなら怯んでしまうアーチャーの睨みもどこ吹く風と、悪びれもしない佐々木にアーチャーは無言で弁当の煮物を差し出した。
嬉しそうに箸に取り、佐々木はもぐもぐと食べる。
二人は中学で知り合い、高校も一緒の所に進んだ。
アーチャーは元々人当たりが良い訳では無く、人との交流をあまり好まなかったが、佐々木は興味のある人物にはアピールしていくタイプだった。
出会った時も佐々木からアーチャーに積極的に話しかけ、整った涼しげな笑顔で誘っていた。
アーチャーは歯に着せぬ物言いと、流麗さを持つ佐々木が嫌いではなかった。
話していくうちに気が合うことも分かり、今では大体のことは理解し合う仲だ。
そして、ランサーのことも然り。
「見ていて辛くはないのか?奴は最近、取っ替え引っ替えとの噂だぞ」
佐々木の言葉にアーチャーは一瞬動きを止めたが、すぐに何事も無く白米を口に運んだ。
「そんなもの、高校に入った時から知っている」
只でさえ目立つ容姿のランサーだったが、高校で槍投げを始め、めきめきと頭角をあらわし大会で何度も優勝するほどになった。
快活な性格で会話も面白いとなれば、人気者になる。
しかし、どうにも女癖が悪くそこだけは彼のマイナス点だった。
そして人気者だけに、知りたくも無い情報が勝手に向こうから入ってくる。
「そうさな、奴は色んな意味で有名人だからな」
佐々木は自分で話しを振ったくせに特に興味無さげで、コンビニのおにぎりを食べ始めた。
ただのコンビニのおにぎりなのに、佐々木が食べると何故かやたらと絵になる。
佐々木も目を引く容姿だからだろうか。
周りの女子達の視線がかなり痛いがこれはもういつものことだ。
アーチャーはだんだん慣れてきてしまっていたが、その女子達の熱い視線の中に自分が入っていることなど全く知らない。
「噂をすれば何とやらだな」
佐々木が言うのと同時に、見慣れた鮮やかな青い髪の長身が教室のドアから体を覗かせていた。
「おーい、昼食おうぜ」
「あ、ごめん。今、行くー」
昼を誘われた女子は、頰を薄っすらと染め、手には可愛らしく包まれた2人分の弁当を持ち、嬉しそうにランサーの後を追って行く。
何ともお似合いのカップルですねという図だった。
「先月の娘とは別れて、今はあの娘と付き合ってるのか」
呟く佐々木に、アーチャーはツッコミを入れる。
「佐々木も人のこと言えた義理では無いだろ、最長半年ではなかったか」
「俺はまた違うだろう、後腐れなく、お互い納得の末に綺麗に別れている」
「威張ることでは無いな」
結局のところ、どちらも取っ替え引っ替えに変わりない。
アーチャーは佐々木が好みそうなおかずを、自分の弁当から取り分けてやった。
そして佐々木も普通に食べる。
これは毎回のことだ。
女子からの視線が、更に熱を増していることに残念ながら当人達は気付かない。
「まあ、限界が来たら言え。慰めぐらいはしてやるさ」
「気持ちだけは有難く受け取るが、あとは遠慮しておこう」
ランサーの姿を見て、何も思わない訳ではない。
ただあの日の痛みと、虚無感と絶望感を超えるものはアーチャーには無い。
あの日、1度自分は死んだのではないかと思うほどだった。
どうにか家に帰りはしたものの、余程酷い顔をしていたのか弟に心配され、すぐ休むよう言われた。
それをアーチャーは拒否し、晩御飯の調理にかかろうとしたが涙目の弟に止められてしまった。
あとは弟の勧められるまま過ごし、夜布団に入ってから、学校に噂が流れたら自分は終わりだなとぼんやり思った。
次の日、弟にはやはり心配されたが学校に行った、特に休む理由が見つからなかったからだ。
学校では何も無く、ランサーの性格上、言いふらしてはいないと思ったが一抹の不安があったアーチャーは安堵の息を吐いた。
ランサーの態度も変わり無く、昨日のことがまるで嘘のようだった。
嘘だったら良かった。
でも、嘘では無いから、アーチャーの胸には小さいが深い穴が空いている。
高校生になった今も確かに空いている。
「さて、アーチャーよ、本日の予定は何か入っているか?」
「いや、勉強するぐらいだな」
「すまんが、英語を教えてくれぬか」
「では、俺には古文だな」
「分かった、放課後残ろう」
アーチャーは弓道部、佐々木は剣道部だったが後1週間もすれば試験となるため、部活は休みだ。
特にやることも無い2人は、大体は真面目に勉強をする。
放課後になり、ああだこうだと話しながら勉強していると、クラスメイトの何人かも参加してきた。
「アーチャー、ここの和訳ってどうなんの?」
「watch outは危ないって意味だから…」
「マジか、知らなかった…」
「やっべぇ、全然分かんねー」
「え、何、ここ出んの?」
「出るぞ」
「ふむ、諦めるのも一つの手だな。お、ここ間違ってるぞ」
最初のうちは騒がしかったが、そのうち1人2人と抜け、結局アーチャーと佐々木だけになった。
日は傾きかけ、校内は静かになっていた。
「さて、そろそろ帰るか」
「そうだな、ちょっとトイレに行ってくるから待っててくれ」
「分かった」
アーチャーは廊下を出るとトイレに向かうべく、左に曲がった。
そこで偶然にも、ランサーと昼を取っていた女子と会う。
同じクラスの女子だったが、交流が無いため正直アーチャーは名前がうろ覚えだった。
だが、名前すら知らない女子でも、アーチャーは放っておくことが出来なかった。
その女子が泣いていたからだ。
「…大丈夫か?」
「う、ッ…」
涙を拭うためか、目元をごしごし擦る女子にアーチャーはゆっくり近く。
「そんなに強く擦ったら、傷がつくぞ…」
制服からハンカチを取り出し、女子に渡す。
「ッ…う、あり、がと…ぅ」
俯いて体を小さくして泣く姿に、どうしても胸が痛む。
「事情は話さなくて良い、ただ私は君を慰めたい。それは良いか」
女子は一瞬驚いたように顔を上げたが、みるみるうちに大粒の涙を溜めて更に泣き出してしまった。
「うあ、ッ、うわァーん!」
「え、あ、す、すまない!」
「…お前達、何をしてるんだ」
「さ、佐々木!」
「会話が筒抜けだぞ。とりあえず、教室に戻れ」
佐々木が教室に促すが、アーチャーは当初の目的を思い出した。
「いや、ちょっとまずトイレに行かせてくれ」
「あー…、行ってこい」
トイレから急いで戻ると、女子は落ち着いたのか目は赤いものの涙は止まっていた。
女子の向かいの席に座り、声をかける。
「大丈夫か?」
「う、うん、ありがとう」
「そうか、なら良かった…」
「何があったかは分からんが、そう気を落とすな。今はあれだが、いつかは過去になる」
佐々木の言葉に女子は辛そうに少し笑い、聞いてもらっていい?と訪ねてきたので、アーチャーも佐々木も黙って頷いた。
それから女子は言葉を探しながら、ゆっくりと話し始めた。
「ランサー君にね、違うって言われちゃった…。何がね、違うのかは分からないけど、私じゃ無いんだって」
膝の上で拳を作り、言いながらまた目に涙がうっすら浮かぶ。
「ごめんって、謝られちゃった…。私が無理矢理付き合って貰ってて、謝るのは私の方なのに…」
「君は、それで良いのか…」
「うん…、短かったけど楽しかった」
私が作った美味しくないお弁当を、いつも食べてくれたしと泣きながら笑う。
女子は何回か深呼吸をし、アーチャーのハンカチで涙を拭うと帰るね、ハンカチは洗って返すからと言った。
アーチャーはさすがに心配で家まで送ろうとしたが、彼女からそこまで甘えられないと断られ、教室から出て行く姿を見送ることしか出来なかった。
「…何がしたいんだろうな、ランサーは」
アーチャーが、ぽつり呟く。
「さあ、俺には見当もつかんな」
佐々木はアーチャーを見る。
表情は、影に隠れて分からない。
「彼女が駄目なら、私など話にならない訳だな」
「…何も、お前まで悲観することはなかろう」
佐々木はアーチャーの腕を掴み、引き寄せる。
抵抗無く自分の肩に頭を預けるアーチャーに、佐々木は目を閉じた。
「泣くな」
「泣いてない」
「限界が来たら慰めてやると言っただろ」
「そうだったな…」
自分でも、限界なんだろうと思う。
引きずる思いは月日が経つごとに辛くなり、まるで呪いのようだ。
今まで無駄に大切にし、先延ばしにしてしまっていたがそろそろ潮時かもしれない。
初恋は実らないとよく言うが、正にその通りだ。
それを後生大事している自分は、前にも後にも進めない。
佐々木と別れ、重い気持ちと体を叱咤して家に帰る。
中学生になった弟は何か感じ取ったようだが、何も言わなかった。
普段通りに過ごし、明日のために睡眠を取ろうと布団に入るがどうにも眠れない。
暗い天井を見ながら、今日の色々な出来事や考えが頭の中を巡る。
彼女のこと、自分の気持ちのこと。
終わらせて新しく始めないといけないこと。
そう言えば、もうすぐ卵の賞味期限が切れるというどうでもいいことまで頭の中に浮かんできた。
確かホットケーキミックス、牛乳、バナナもある…。
思い立ったら何とやらで、アーチャーは布団から出るとキッチンに向かった。
「甘い物やバナナは嫌いではないか?」
「え?」
「皆に分けている。私が作った物だが、君も良かったら食べてくれ」
昨日の女子に、夜中に作ったバナナのカップケーキをアーチャーは渡した。
ラッピング用品など無かったから、ラップで包んだ可愛げのない物だったが、女子は嬉しそうに受け取った。
「え、アーチャーくんが作ったの?凄いね、ありがとう!」
空元気かもしれないが、女子からは笑顔が見れた。
アーチャーも笑顔を返し、カップケーキを欲しがるクラスメイトに配る。
夜中に大量に作り家族を驚かせたが、アーチャーの気持ちはすっきりしていた。
料理に集中していると雑念が入らなくていい。
電子レンジで膨らんでいくカップケーキを見詰めて、ランサーへの気持ちを改めて捨てようと決めた。
「マジで美味い…」
「美味しい!」
「プロかよ」
アーチャーのカップケーキを大勢で褒め称えるという謎のクラスと化した中、異様な雰囲気を察したのか他のクラスの男子が顔を出した。
「え、何騒いでんの?」
「いやさ、アーチャーがカップケーキ作ってきてさ、すげー美味いの」
「へー、俺も食いたい!まだある?」
「分かんね、アーチャーあるかー?」
「あと2、3個だがあるぞ」
アーチャーが呼ばれて、他のクラスの男子にカップケーキを渡そうとした所で、男子の隣に居るランサーに気付いた。
「ッ…」
何を臆する事がある。気持ちは整理しただろ。
己に言い聞かせ、ランサーの視線を感じつつアーチャーはカップケーキを男子に渡した。
「口に合うかは分からん」
「いや、ちょうど腹減ってたしありがたいわ」
「なあ、俺にはくれないのか?」
ランサーがアーチャーの手の中にあるカップケーキを指差す。
「欲しいのか…?」
まさか欲しがるとは思わなくて、アーチャーは少し驚いてランサーを見た。
「美味いんだろ、くれよ」
何故かどこか不機嫌なランサーは、言いながらアーチャーのカップケーキを手に取り、ぱくりと一口食べた。
「…何だこりゃ、すげー美味い」
それから物凄い勢いでカップケーキを食べ終え、アーチャーの腕を唐突に掴んで歩き始めた。
「お前、ちょっと付き合え」
「は?え、ちょ、授業が…!」
このまま何処かに連れ去られたら、完璧次の授業には間に合わなくなる。
どうにか腕を振り解こうとしても、ランサーの力は思ったより強くて解けない。
アーチャーもそこそこ鍛えているのに、何故か力の差がある。
最終的に死角になる後ろから暴力に訴えるかと、アーチャーが物騒なことを考え始めた所でランサーの足が止まった。
屋上に続く階段の踊り場で、逃げられないように壁に背を当てられる。
「……」
「まさか、男に壁ドンするはめになるとは思わなかったぜ…」
「奇遇だな、私も同じことを思った」
女子達がキャーキャー言っているやつだと、理解はしている。
しかし、こうも簡単に同じ男にやられると些か腹が立つものだ。
そうでなくても授業をサボらされていて、アーチャーの眉間には自然と皺が深まる。
「で、何の用だ」
「お前さ、俺のこと好きだよな?」
何の悪夢だと思った。
今朝方捨てたものを、この男は今更拾おうとしている。
「好きじゃない」
真剣なランサーの目を正面から見返すことは出来なくて、アーチャーは視線を外して答えた。
「はあ?何で」
苛立った声でランサーは聞き返す。
「何でって…」
言いたくない。
言って、傷付きたくない。
まだ胸の穴は開いていて、自分で広げるようなマネなどしたくない。
でも、今ここではっきり言えば、全てから解放されるかもしれない。
アーチャーは唇を噛み締めた後、言葉を絞り出した。
「君が、私のことを好きじゃないからだろ」
いくら思っていても成就されない恋は苦しい。
恋に恋なんてしていても、嫌われた今では楽しくない。
だったら何時迄も引き摺ってないで、捨ててしまえこんなもの。
「さあ、もう良いだろ。離せ。大体、いつの話をしてい…る」
アーチャーはランサーを睨んだが、そのまま止まった。
「何だそれ。いつ俺がそんなこと言った」
表情は変わらないが、明らかにランサーの瞳に怒りが写っている。
掴まれた腕には力が入り、指が肉に食い込んで痛いと感じるほどになった。
「…君は覚えてないだろうが、言った」
アーチャーはランサーから向けられた感情が理解出来ず、ぐるぐるする頭でなんとか答えた。
「中学の時、教室で気持ち悪いと」
アーチャーの発言に眉間に皺を寄せ、暫く考えていたランサーは、あれか!と授業中にも関わらずいきなり叫んだ。
幸い、誰も来ることは無かったが心臓に悪い。
「あれは…って言うかお前、あの頃からかよ…。マジか…」
一人ブツブツ言って何やら落ち込んでいるが、アーチャーにはさっぱり状況が分からない。
腕は解放されたが、真相が知りたくて動けずにいる。
そしてランサーは、更に混乱することを言ってきた。
「あれは、お前に言ったんじゃない」
「は?」
あの日、あの教室には二人だけしか居なかった。
それは間違いない。
では誰に?
「俺自身に言ったんだ」
「…?」
アーチャーは本気で分からなくて、少し首を傾げた。
「お前への気持ちを計り知れない自分に言った」
「何を言っている…?」
「…だからあの時、俺もお前のことが気になってたんだが、それを素直に認められなくてごちゃごちゃした自分に対して言ったんだよ!」
通じないアーチャーに痺れを切らし、ランサーが一気にまくし立てた。
「そ、それはつまり…」
「遠回りしたけど、お前のことが好きだ。だから、もう一回俺を好きになれ」
相手の勝手な話にアーチャーは正直ちょっと呆れたが、拒否することなんて出来なかった。
今朝の今朝まで好きだった、どうにか気持ちを切り替えた相手だ。断る方が無理だった。
「…善処する」
それでも今まで苦しんだ分、素直に答えるのは癪だったので性格悪く返す。
「あー、可愛くねーなお前。…それじゃあ、キスしよーぜ」
「何でさ⁈会話の流れがおかしいだろ!」
「おかしくないだろ、両思いなら良いじゃねーか」
「いやいやいやいや、そう言うことじゃなくて」
迫って来るランサーを、必死に赤い顔でアーチャーは押しやるがやはり止まらない。
「ラン…んぐッ!」
「大きい声出すなよ、授業中だぞ」
ランサーに口を手で塞がれ思い出した。
確かに授業中だ。
だいぶ大きな声を二人で出していたが、授業中だった。
すっかり忘れていた。
大声を出すはめになった相手をアーチャーは恨めしく睨むと、にかりと綺麗に笑って返された。
「前言撤回する。お前、やっぱり可愛い」
揶揄われたことを理解する前にランサーの整った顔が近付き、本当に口を口で塞がれ、アーチャーはそれどころではなくなってしまった。
「ふ、ぁ…!」
リップ音と共に何度も角度が変わり、重なりが長くなる。
舌が口内に入ってくることは無かったが、ランサーの舌がぺろりとアーチャーの唇を舐めたところで、アーチャーに色々と限界が来た。
「い、いつまでする気だ、たわけー!!」
当たり前だがこの叫び声で気付かれ、先生に二人ともこってり叱られたのだった。
「良かったな、長年思っていた甲斐があったというものだ」
「ありがとう、佐々木…」
「 ふむ、俺は何もしてないぞ」
次の日、アーチャーは佐々木に簡単に昨日のことを話した。
佐々木は目を細め涼やかに笑い、喜んでくれた。
「しかし、前からお前のことを思っていたのなら、何故他所の輩とばかり付き合っていたのだ?」
「それは自分の気持ちが分からなかったのと、素直に認められ無かったせいだと言っていたが…」
「何だそれは、さっさと腹を括れば良いものを、ただ周りを傷付けて迷惑な話だな」
確かにその通りなのだが、同性を好きになるのを受け入れるのは難しいことだとアーチャーは思う。
自分だって暫くは自問自答していた。
あの時に粉々になったものを拾い集めて、胸の穴を自覚して、やっと初恋だと納得したのだ。
「それで佐々木、申し訳ないんだが…」
「察している、ランサーと昼を取るのだろう?」
「ああ、だが安心してくれ。佐々木のおかずも作ってきた」
言いながらカバンから青いハンカチに包まれた弁当箱を出し、佐々木に渡してきた。
佐々木は目を丸くした後、苦笑を返す。
「いやはや、これは些かまずいのではないか」
「まずい?何がだ?」
やはりと言うか何と言うか、アーチャーは全く分からない様子でハテナを頭に飛ばしている。
「…まあ、ランサーに恨まれるのも一興か。初恋が実らなかったのは、俺だけだしな」
「佐々木、一体何の話をしているんだ?」
「何、こちらの話だ。ほら、待ち人が来たぞ」
教室のドアを佐々木が指し示すと、ランサーが物凄い顔でこちらを見ていた。
怒っている、明らかに怒っている。
「不機嫌だな、どうしてだろう?」
真顔で疑問がるアーチャーに、ついに佐々木は声を出して笑った。
Comments
- September 23, 2022
佐々木😭😭😭😭