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花も嵐/Novel by いみさん

花も嵐

1,662 character(s)3 mins

リメイクです。そして学パロでなおかつおにゃのこ槍×弓です。槍は押せ押せごーごーなアグレッシブガールです。まあ槍の性別を女にしただけで口調は何も変わってません。以上を踏まえまして閲覧お願いいたします。

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 チャイムも鳴り終わり教師が出て行けば、生徒のお喋りは一段と騒がしくなる。隣の女子が友人と昨日のテレビが何やらと話しているのを耳にしながら教科書の整理をする。次は古典だったか、と記憶を辿り机の中からノートと教科書を引っ張り出した。ふう、と一息。そろそろ彼女がやってくるだろう。大人しくしているのが一番無難である。
 その時。ばたばたばた!と廊下から威勢の良い足音。教室の扉を盛大に開け放ち、椅子や机や人でさえもなんのそのとすり抜けて背中に飛び付かれた。今日も相変わらずだ。
「――っ」
「アーチャー、会いたかった!」
 甘ったるい声と吐息が耳元にかかり、思わず身を竦ませた。伸びてくる白く細い腕が胸元に絡む。アーチャーは背後からぎゅうぎゅうとかかる重さに眉をしかめながら。背中に感じる柔らかな感触にいたたまれなくなる。こればっかりは分かっていても慣れない。
「退きたまえ、ランサー」
「い・や」
「…胸が当たってるんだが」
「当ててんの」
「女性として恥じらいを持て」
「今さらだろ。もう何回この会話してると思ってんの」
 百も承知だ。が。こっちの身にもなってほしい。周囲の男が羨ましいだの何だの言う声が聞こえたが、一度この熱烈なアプローチを受けてみてほしい。肉食系男子も腰を抜かすレベルだ。そりゃあ確かに見てくれは非の打ち所がない美女だが、わたしはおしとやかな子がタイプなんだ。
「いいから退いてくれ。君はよくてもわたしは慣れん」
「アーチャーったら純情だな」
「それで結構。わたしは相手の顔を見て会話がしたいのだが」
「え、おれの顔が見たいってこと?嬉しい!」
 そういう意味じゃないのだが、ランサーは喜んで解放してくれたので結果オーライだ。ランサーは前の席の椅子を拝借してわたしの正面に座る。かわいらしく両手に顎をのせてにこりと笑った。

「今日もアーチャーは可愛いな!」

 ああこの台詞がなければよかった。かわいらしいとか思わなきゃよかった。
 明らかにその形容詞は自分に当てはまらないし当てはまりたくない。
「眼科に行くことをおすすめする」
「つれないとこも可愛いな。おれと付き合おう?」
「どこのナンパ男の台詞だ…」
「アーチャー限定のナンパ女です!」
「満ち足りた顔で言うな」
 ぷう、と頬を膨らませたが、ランサーはすぐに楽しげに唇に弧を刻む。ぱちりと大きな目を細めて、見返してくる。鮮やかな赤色が柔らかく光るのに少しだけ、ほんの少しだけどきりとした。
「あ、チャイム鳴っちまう」
 ランサーの声にはっとする。時計を見れば、あと2分ほどで次の授業のチャイムが鳴る時間だ。ほんとはギリギリまで居たいけど、遅刻したらアーチャー怒るもんね。そう言ってランサーは肩を竦めて立ち上がる。至極残念そうに、重い溜め息を吐いた。
「長いお別れの時間だ、寂しいぜ」
「たかが50分だぞ」
「50分!長い!しかもおれ数学なの、余計長く感じるぜ」
「寝るなよ」
「それは約束できないな」
 憂いを帯びた表情から今度は悪戯っぽく笑ってみせる。ころころ変わる表情に自然と微笑みが溢れる。しかし時間もないので早く戻るように促すと、わかってるよと言ってランサーは右手をひらひら振った。
「アーチャー」
「む?」
 顔を上げると、頬に触れる柔らかい感触。女子の悲鳴や男の歓声に教室が一気に沸き上がる。軽い音を立てて離れていくのを呆然と見送った。
「ほっぺ奪っちゃったー。なんつって!」
 語尾を跳ねさせて、女性らしく小首を傾げウインクをしてみせると、急ぎ足でランサーは教室を去って行った。

 唇はふたりっきりの時になー!

 追い討ちをかけるかの如く廊下から聞こえた言葉についに机に突っ伏した。衆人環視の中で何なんだあいつ。羞恥心はないのか。囃し立てるクラスメイトに反論する気力もない。冷めやらぬ喧騒の中で、甲高いチャイムが間抜けに響き始めた。

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