辺野古沖転覆事故を海のプロの目から考察
本日、辺野古沖で2隻の船に分乗し、平和学習に参加していた同志社国際高校の生徒1名と船長1名が転覆し、亡くなってしまうという痛ましい事故が発生しました。心からお悔やみ申し上げます。
報道の断片的な情報での判断は稚拙ではありますが、船長歴30年以上の私の目から見ると疑問に感じる点が幾つもありました。尚、本記事は現在の情報だけで考察していますので、詳細な情報が入り次第内容を変更する可能性があることはご容赦ください。
疑問① 2隻とも転覆
先ず、2隻とも転覆したことに驚きました。一般的に1隻転覆するだけでもレアな案件なのに2隻が続けて転覆してしまうということは理解に苦しみます。何か特殊な要因がない限り2隻とも転覆なんてあり得ない。もしかしたら、先に転覆した船を助けようとしてもう1隻も転覆したのかもしれません。まだ詳細な情報が無いのでなんとも言えませんが、相当特殊な状況だと言えます。
また、本日は天候のリスクが低かったと思います。冬の沖縄は北風が吹くことが多く、本日も辺野古沖は北寄りの風数メートルだったようです。辺野古は名護市でも南岸なので北寄りの風は島陰になりそんなに大きな波は立ちにくいと思います。ただ、リーフ等がありますのでもしかしたら三角波等が立ちやすいのかもしれません。亡くなられた船長さんはかなり長いこと抗議船の船長をされていたようですので、現場海域のことはよくご存知だったかと思います。
このニュース動画を見る限り、リーフ付近は一定の波の高さはあるように感じます。ただ、ベテランの船長さんが問題なしと判断し出航をされた後の事故なので、急な天候の変化があったのかもしれませんね。沖縄タイムスの速報では高波を受けてとのことです。
追記(3月16日20:00)
まさかの海上保安部の船まで転覆したとのこと。ということは、現場海域のコンディションが非常に悪かったのかもしれません。つまり、船長の気象海象の判断ミスという線が強いのかもしれません。
追記(3月17日10:00)
やはり、予想通り転覆した船をもう1隻が救助しようとして転覆したようですね。そうじゃないと2隻とも転覆するはずがありません。しかし、ただでさえ小型かつ満員の状況での救助は2次災害に繋がる可能性が高く、船長として正しい判断とは言えません。速やかに海上保安部に救助要請をすべきでした。
追記(3月17日15:40)
現地の方の情報によるとうねりが1.8mあったようです。となると、このコンディションにも関わらず23フィートの船に満員で出航するなんて自殺行為でしかありません。
疑問② 乗船人員の多さ
今回転覆したのは「不屈」と「平和丸」。
不屈は時事通信の引き上げ写真を見る限り、ヤマハFW23カディで間違いなさそうです。注目はブリッジが無惨にも大破していること。ただの転覆ではこうはなりません。どうやったら固いFRPが転覆でこのような破損をしたのか、マリン業界人としてかなり気になります。岩礁に乗り上げたのでしょうか。また、定員10名に対し8名乗船なので定員オーバーではないですが、小型のFW23に船長+生徒8名は当日の気象海象を考慮すると、流石に乗せすぎな気はします。
平和丸は下記のリンク先のブログを見る限り、いわゆる和船タイプで115馬力の船外機を搭載していることから、絶対とは言えませんがヤマハW25〜27かな?と思われます。もし、W25ならば標準は8〜10名、W 27ならば定員11名なので乗組員2名+旅客10名なので定員変更の臨時検査を受けたのでしょうか? その上でパンパンに乗せている状況かと思われます。
小型船はかなり軽いので不安定。特に学生は素人なので作業船を見るのに夢中になって片舷に寄りすぎた可能性があります。そこに運悪く高波を横波で受ける状況になってしまったら十分転覆の可能性が出てきます。当社のイルカウォッチングでも修学旅行団体の受け入れの際はその点を相当気をつけます。イルカが出てきたら一斉に片方に移動しようとする。当社では現場に就く前に必ず左右のバランスを取る必要性を注意喚起します。
また、もう一つ考えられるのがトップヘビーの状態になっていた可能性が考えられることです。トップヘビーとは重心が高い状態を言いますが、生徒がデッキに座っていたら復原力が強いボトムヘビー状態になりますが、立っていたら重心が高く復原力が小さいトップヘビー状態になります。
転覆した原因は正確には分かりませんが、基本的によほどの高波でなければ転覆はしません。やはり横波を受け、さらには重心のバランスが悪かったのではないかと個人的には考えます。これが当社のような19トン型の旅客船ならば10人程度が動いてもほとんど影響はありませんが、不屈や平和丸のようなスモールボートならば大きな影響を受けます。
また、下記のニュースにある通り、現場海域の一部は流れが早く複雑だったようです。浅い海域は流れや波の変化が大きく注意が必要だと言えます。
追記(3月17日16:00)
詳細な情報がわかってきました。やはり波が高くなりやすいリーフ付近で高波を受けたことで転覆した模様。しかも、海上保安部が注意喚起をしていたなんて笑えません。
当時、現場海域には波浪注意報が発令されていた。監視警戒中の11管は、不屈、平和丸の順に縦列で揺れながら航行してきた2隻に、「波が高く危ないので注意してください」などとメガホンで安全航行を呼びかけていたという。
ただ、不思議なのは海上保安部も抗議船は無許可だったことは知っていたはず。旅客船の運航基準ならば発航中止であり、それを無視して運航したら検挙されます。やはり、活動家には保安部も弱腰なのかもしれません。
こちらも予想通り、定員いっぱいの乗船でしたね。
我々旅客船事業者の目から見ると、こんな小さい船に定員MAXで修学旅行生を乗船させるというのは理解に苦しむ対応です。現在、運輸安全委員会の調査がスタートしました。時間はかかりますが詳細な原因は必ず明らかになるかと思います。
疑問③ 不定期航路の登録(届出)は行っていたのか?
船で人を乗せて運航するには運輸局からの認可(定員12名以下は登録)が必要です。
特に知床遊覧船事故によって安全基準が大幅に強化され、かなり厳しくなりました。また、修学旅行を手配する旅行会社側も運航事業者側のチェックも厳密になり、許認可や船客賠償保険、安全体制などの確認を詳細までチェックするようになっています。
無料の場合は許可は不必要ですが、あくまでも船主が所有する船に、友人や関係者を「無料」で乗せる場合、または自らの業務(調査、監視、作業など)のために乗員を乗せる場合に限られます。今回は修学旅行生ということもあり、海上運送法上の登録は必須。もし未登録ならば完全に法令違反となります。そこを旅行会社は確認しないことはあり得ない。登録済みの船だったら良いのですが・・・
追記(3月17日11:45)
今ライブで記者会見を見ていますが、引率の先生が乗船していないなんてありえないですね。杜撰な管理、思想が偏っている活動家と先生の個人的な繋がりで実施した抗議活動体験。知床遊覧船事故もそうですが、事故は起こるべくて起きます。基本的に海難は気象海象や機関故障以前に船長の遵守事項を果たしていない人災で起きる確率が高い。今回学校側も不定期航路事業の登録(届出)があるか確認していないこと自体あり得ないですし、旅行会社は反対したか止めたかと思います。もし、黙認していたらその旅行会社の社員はコンプライアンス違反で社内で処分されます。私が知る限り、大手旅行会社の営業マン及び法務部・仕入れ部署は知床遊覧船事故以降かなり安全関係は念入りに確認をします。実施できたのは金井船長と繋がりがあった先生が強引に押し切ったのではないでしょうか。そうでない限り乗船できません。
追記(3月17日16:00)
こちらも予想通り、旅行会社は関わっていませんでした。前述の通り無理なんです、こんな船を手配することは。
そして、これも予想通り無許可船でした。
まとめ
推測ばかりで書いて申し訳ないのですが、やはりプロの目から見るとなかなか特殊な条件が多く、疑問が湧いてしまいます。2隻とも転覆したこと、船が大きく破損したこと、かなりの小型船に定員いっぱいに乗船させていること、登録の有無。時間が経つにつれて真相が明らかになってくるとは思いますが、船長歴30年以上かつ旅客船事業の経営者、修学旅行生の受け入れを行っているものとして今回の海難事故は他人事とは思えず記事を書きました。
追記(3月17日16:10)
ほぼ全てが予想通りでした。無許可船、旅行会社は関わっていない、定員フルでの出航、リーフ付近での高波。完全に人災と断言しても問題ないと言えます。市民団体、学校ともに大きな責任を追うことになるかと思います。
改めまして、亡くなられた皆様、そのご遺族に心よりお悔やみ申し上げます。早く真相が解明されることを切に願っております。
改めて情報を整理した記事を書きました。
ここから先は
メンバーシップ
¥ 1,200 /月
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?



購入者のコメント