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終末まで追いかけよう/Novel by ゐ

終末まで追いかけよう

6,360 character(s)12 mins

▼サイコ野郎な槍に狙われちゃった可哀想な弓の話。またも尻きれトンボ状態。時間があったら続き書きたいな。 ■閲覧/評価/bkmありがとうございましたー! ■2018/3/7~2018/3/13:RR(81位)ありがとうございます(^o^)

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▼時代背景あやふやな謎の現パロ
▼かっこいい槍はいません(重要)

▽何でもいい人向け






女だろうが男だろうが、一人で夜道を歩くなんざ危ねえからやめた方がいいぜ。

ハンドルを上手く捌きながら、美しい顔の男はそう言った。私もその言葉にその通りだなと返す。国道とは言え夜道は確かに危険だ。歩道が無い訳ではないが、昼間と違い夜は歩行者が少ない為、運転の荒い者が誤って歩道に突っ込む危険性だってある。それに私が今着ている服はコートも含め全て黒で統一されたもの。夜に溶け込んでしまい、運転する側から見れば非常に見辛いとも言える。しかしだ、目的が無くこんな夜道を歩いてた訳ではない。静かなところで暮らしたいと都心から離れた辺鄙な田舎に一人で住む私は、家に帰る為の最終のバスを逃してしまったのだ。仕事で珍しくミスが続きバスも逃すほど帰りの遅れをとってしまった。挙げ句は、深夜という時間帯。明日は休みだからいいものの、仕事で疲れた体で家まで三時間もかけて歩くのは骨が折れる。タクシーを拾うにもそのタクシーが通ることはなく、仕方なく国道を歩いていた。通りかかる車があれば申し訳ないが乗せてもらおうと思うものの、時間が時間故に通りかかる車は圧倒的に少なかった。通りかかっても、白髪に褐色肌の大男という私の見た目もあるのか中々停まってくれない。徒歩で帰るしかないと絶望したその時、ようやく一台の乗用車が私を少し過ぎたあたりで停まったのだ。


「君のおかげで本当に助かった。ありがとう」

「いいってことよ。困った時はお互い様ってやつだろ?気にすんな」


少ない外灯の光で時折照らされる美しい顔の男は、人懐っこく笑っていた。とても綺麗な横顔だと思った。深く艶のある青色の長い髪、ルビーのような赤の瞳、白く綺麗な肌。夜だというのに、それらはよく映えていた。それに、容姿だけではない。出会って少ししか会話を交わしていないが、彼は男の私から見ても『いい男』であった。口を開けば皮肉しか出てこないこの私とも気さくに、時折冗談を交えながら会話をしてくれる。彼はとても話し上手の聞き上手だ。十二分に内面も良い。女性にはこの男が更に魅力的に映るんだろうな。年は同じくらいだろうに、どこまでも私とは違う男が少しだけ羨ましい。

「それに……アンタと話したら俺も気分が晴れたわ」


顔を私に向けること無く、赤い目だけが私を見た。ぱちり、と目があってしまい慌てて窓の外に目を外す。目が合っただけなのに、心臓を射ぬかれたようにドキリとした。顔の良い男は、男にも通用するものなのか。私は矢継ぎ早に、なにか嫌なことでも?と返す。


「あー……なんつーか、まあ、ツレと喧嘩してな」


怒り心頭でよ、荷物もそのままに飛び出て行っちまったと言った男の声はやけに寂しそうだった。振り向けば、寂しげな顔でバックミラーを見つめている。それを追って後部座席を見れば、そこには女物のカバンがぽつんと置いてあった。きっと彼女の物であろう。


「大丈夫なのか、彼女を放置して」

「ん?あぁ、アンタを拾う前に連絡が来たんだよ。今日は友達の家に泊まるんだと」

「そうか……でも、君はそれでいいのか?」

「いいって言っても、向こうはどうも俺に会いたくないらしいからな。一方的に言われて切られちまったよ」

「……君と彼女が、無事に仲直りできることを祈っているよ」

「おう、ありがとな」


歯を見せて笑う彼は、とても眩しかった。その顔だけでも彼女をとても愛していることがわかる。どこまでもいい男だ。彼のような素晴らしい男に愛される彼女もまた、きっといい女性なのだろう。


「しかし、何故君はこんな時間帯に車を走らせていたんだ?」

「その友達の家ってのがここから三つ離れた町にあるんだ。明日の朝迎えに行くのもよかったんだが、情けねえことに寝れなくてな……居ても立ってもいられなくて車を走らせてたわけよ。深夜の方が車も少ねえし朝方や昼間より早く着くメリットもある。そんで、アンタを拾った」

「なるほど。君は彼女の迎えの途中だったのか」

「あぁ」

「ならば話は早い。私はここで降りるとしよう」

「ハァ!?」


突然、彼こ大きな声と共に車がピタリと停まる。柄にもなくその声にビクリと体が跳ねると、彼は慌ててすまねえと謝った。別に謝られることでもないが、何故驚いたような声を上げたんだろうか。彼はハンドルを握ったまま、口をポカンと開けて私を見ていた。実に間抜けな顔だ。その顔に思わず笑ってしまうと、彼は少しだけ表情を曇らせた。


「ここで降りるって……アンタそれ本気で言ってんのか?」

「あぁ。これ以上君に迷惑をかけるわけにはいかないからな。私は大丈夫だから、一刻も早く彼女の元に向かってくれ。君の時間を私に割くのではなく、どうか彼女の為に使ってやってほしい。そうだ、乗せてくれた分の金も支払おう。本当に助かったよ、ありがとう」

「待て待て、勝手に降りるな!話を聞け!アンタが大丈夫でも俺は大丈夫じゃねえの!」

「しかし君はここから三つも離れた町まで行くのだろう?私の町とは方向が違う。今なら明け方には向こうに着くだろうからーー」

「いーやダメだ!男とは言え、こんな夜中にこんな何もねえ場所に置き去りになんかできん!アンタも知っているだろ?ここらで行方不明者が続出してるって事件。俺は嫌だぜ、知り合った奴を次の日ニュースや新聞で見るなんて。胸糞悪いってもんじゃねえ。アンタが何を言おうがダメなもんはダメだ」


彼は真剣な顔で私に言った。私は反論しようと口を開いたが、あまりの真剣さに何も言えないまま口を閉じる羽目になった。それを肯定ととったのか彼は楽しそうに笑った。もし私が女性であれば、きっと彼に惚れてしまっているだろうな。どこまでも女性が放っておかない男だと思った。


「せっかくの出会いなんだ。金はいらないから仲良くしてくれよ」


その言葉と共にエンジンが掛かり、車がまた夜の道をゆっくりと進んでいく。



アンタの町に入る前にガソリン入れてもいいかと言われたから私は素直に頷いた。その時にガソリン代も払うと言えば彼はいらないの一点張り。少々問答したが結局は金の代わりにアンタの話をしてくれということに落ち着いた。私の話なんて聞いたところで面白くないだろうに。ほんと、変わった男だ。

走ること数十分、人気の無いガソリンスタンドが見えた。


「このガソリンスタンド、本当に開いているのか?開いてるところなんて一度も見たこと無いが……」

「知らねえのも無理はねえよ。ここ、深夜しか開いてないからな」


そこに入ると、彼は車を停めて降りた。ガソリン入れるだけだけどアンタも降りるか?と言われた。背中を伸ばしたいと思っていたから、あぁ、とだけ返事をして私も車から降りた。田舎特有の静けさと冷たい空気。深呼吸をしてグッと背中を伸ばせば、パキポキと音が鳴る。それを二、三回繰り返せば音も無くなり腰の痛みも消えた。これくらいでいいだろう。助手席に戻る前に、車体越しに彼を見やれば口笛を吹きながらガソリンを入れていた。ただガソリンを入れているだけだというのに絵になる男だな。思わず微笑むと、車体越しに彼の赤い目と合った。


「なんだ、俺に見惚れたか?」


彼の形の良い唇が弧を描く。その挑発には乗らないぞ。残念ながら私にはその顔は効かないぞ、とだけ言って私は助手席に乗り込んだ。自分がつくづく女性ではなくてよかったと思ったのは本日何回目だろうか。女性なら今のは確実に落ちていたな、と他人事のように思う。

ーーバタンとドアを閉めた時、ドアと座席の隙間に何かを発見した。

白いカードのようなもの。何となく気になりその隙間に手を滑り込ませた。上手く指で挟んで引っ張りあげる。


「え、」


微笑む女性とその女性であろう名前が書かれた免許証ーーそれだけなら良い。それには、乾いて赤黒く変色した『何か』が付着している。咄嗟にそれをコートのポケットに忍ばせてしまった。理由は簡単だ。私はこの持ち主の名前を知っている。

彼女は、彼が先程言っていた行方不明者の一人だからだ。

しかも三日前に行方不明になったばかり。今朝読んだ新聞にも大きく彼女のことが書いてあった。彼女は優秀な演奏家で、大きな演奏会に行く途中に行方不明なった。目撃情報は一切無し。ニュースでは彼女の両親がさめざめと泣いていた。捜査で分かったことは、私の住む町の隣町に住む彼女はどうやらここの近くで行方不明になったと言うことだけ。

まさか彼が?いや、そんなわけない。あんな人の良い彼が誘拐?殺し?そんな馬鹿な。


「そんなわけ………」


突然、窓をノックされた。

大袈裟に音の方へ顔を向ければ、彼の赤い目がジッと私に向いていた。背中に嫌な汗が伝う。ここで不自然な動きをしたらダメだ。私はなんとか冷静を装いつつそっとドアを開けた。大丈夫、落ち着け。彼がそんなことをするばすがないだろう。これは何かの間違いさ。


「大丈夫か?随分と顔色が悪いが」

「あ、あぁ……大丈夫、ちょっと疲れただけだ」

「それならいいんだけど……俺、ちょっと飲み物買ってくるわ。アンタも飲むか?」

「すまないが、コーヒーをお願いするよ……」

「わかった。ちょっと待っててくれ」


た動物の尾のように一つでまとめられた髪の束を揺らしながら彼は小走りで店に向かう。彼が見えなくなったことを良いことに、私は大きく後ろを振り向いた。可愛らしい女物の鞄が今だけは恐ろしく目に映る。恐る恐る手を伸ばして、震える指で中を開ける。

瞬間、息が止まった。

形は留めているが叩き割られたのか悲惨な状態となっている携帯電話。血にまみれた財布やポーチなどの小物入れ。咄嗟にその鞄を投げ捨てるように元の場所に放った。彼の言葉が、全て、嘘だったことを理解した。彼女なんて最初からいない。たまたま通り掛かったのも、新たな獲物を探していただけだ。私を気遣った優しさも警戒心を解くためのものでしかない。彼の言動全てが、獲物を狩るための道具でしかなかったのだ。

最初から何もかも全て、彼が仕組んだ罠だったのだ!

全身の血が一気に凍りつくのを感じる。


「彼が……人殺しを……」


殺される。逃げなければ、彼女と同じように殺されてしまう。逃げるなら今しかない。ドアノブに手を掛けたその時ーー鼻唄を歌いながら彼が運転席に乗り込んだ。彼は、私の顔を見て人懐こい笑顔を浮かべて手に持った物を手渡した。


「コーヒー買ってきたんだが……やっぱアンタ顔色悪いな。本当に大丈夫か?」


彼は、心底心配そうな顔で私の顔を覗く。その顔はどこからどうみても嘘偽りの無い善意に溢れた顔だった。しかし、それを易々と信じれるほど私も馬鹿ではない。こうして油断させるのが彼の手口なんだろう。恐ろしい、なんて恐ろしい男だ。私は彼を刺激しないように当たり障りの無い返事でトラベラーリッドのコーヒーを受け取った。ここで挙動不審なことをすれば即殺されてしまう可能性が高い。冷静さが欠けてる今、落ち着くことが何よりも重要だ。震える手を誤魔化し、コーヒーを口に含む。だが、熱さだけで味という味は分からなかった。それでも緊張状態の体は水分を欲していたのかゴクゴクと飲み下していく。ハァと息をついた頃には中身は半分以下となっていた。


「いい飲みっぷりだな」


どこから出したのか彼は口元に煙草を咥えていた。手に持ったライターがシュボッと音を立てて煙草の先端を焦がしていく。彼は、紫煙を吐きながら私の方に顔を向けた。

その顔はとてもゾッとするほど美しく笑っていた。


「それで……逃げ損なったアンタは、これからどうやって俺から逃げるつもりなんだ?」


彼の言葉にーー私は、言葉を失った。


「見たんだろ、免許証も後ろのバッグの中身も。で、どうするんだ?どうやってアンタは俺から逃げる?教えてくれよ、なあ、エミヤ」

「ど、うして……なぜ、私の名前を……」

「さあ?何でだろうなァ……そんなことよりいいのか逃げなくて」


逃げないならありがたく捕まえて喰っちまうぞ。

そう言って伸ばされた手が私の首筋を撫であげた。ただそれだけなのに、目の前の男が私にはとても恐ろしく見えた。私は、突き動かされたようにドアを開けて転がるように外に飛び出した。

恐ろしい。なんだあの男は。

もつれる足を叱咤して無我夢中で走った。早く、早く、ここから少しでも離れないと殺されてしまう。そのことばかり考えながら、補整のされてない道をただ走る。逃げろ。逃げろ。はやく、逃げなければ。頭の中は、少しでもあの男から遠ざかることでいっぱいだった。心臓はバクバクと音を立てている。全速力で走っているせいか呼吸が苦しい。

その時、不自然に膝から崩れ落ちた。

体が痺れたように動かない。なんだ、これは。どうしたんだ私の体は。なんとか上半身を起こそうと腕に力を入れてもドシャリと崩れ落ちてしまう。まさか一服盛られたのか?と考えた時、ハッとした。


「クソ、あのコーヒーか……!」


思わず拳を地面に叩きつけた。怒りと悔しさが込み上げてくるが、もう遅い。自由の効かない体は、思考能力すら奪っていく。それでも私は逃げることをやめなかった。匍匐前進になりながらも前へ進む。恐怖からか、あの男がここへ向かっているような気がしてならない。息を飲むと、自分の遠く後ろからエンジンの音と砂利を踏みしめるが聞こえた。

あの男が来ている。

振り返ると二つのライトが見えた。ゆっくりと、それは私との距離を詰めていく。来た、あの男だ。ずりずりと這う私をゆっくりと追い詰めて、停まった。


「そんなとこで横たわってどうした?逃げるんじゃなかったのか」


車から降りた男がゆったりとした足取りで私の方へと足を進めてくる。来るなと吠えても、この男はそれすら愉快そうに笑った。それもそうだ。こんな無様な格好で威勢だけがいいなんて笑い者にしかならない。男の長い脚が私の体を跨ぐ。青い髪を垂らして、男は綺麗に笑った。


「俺が怖いって顔してるぜ」

「黙れ……この、キチガイが……!」

「おーおー威勢がいいな。可愛い顔が台無しだ」


男の靴先が私の顎を持ち上げる。唾でも吐いてやりたい気分になるがそれすらも出来ない。悔しい。この男の前では非力な自分がだ。体格も身長も大して変わらないと言うのに、無力な獲物だという現実を今まさに突きつけられている。男の腕が私の胸ぐらを掴み上げる。全身の痺れのせいで、逃げることはおろか体を捩ることさえ許されない。男の顔が、鼻先がくっつくほど顔を近づけられる。宝石のように赤く美しい瞳が、ひどく濁っているかのように見えた。


「ああ、お前可愛いなァ……俺に懐く姿も可愛かったけど、そうやって俺に怯える姿もすげぇそそる……」


そう言って、なにをするかと思えばやんわりと下唇を吸われた。じわじわと吐き気が込み上げてくる。いやだ、やめろ、わたしにさわるな。痺れた体に薄れていく意識の中では、男を突っぱねることはおろか、言葉を吐くことさえままならない。男の顔すらだんだんとぼやけてくる。だめだ、しっかりしろ、でないと、


「次は俺とイイコトしようぜ、エミヤ」


わたしは、きっと、このおとこに、ころされてしまう。



end.

Comments

  • わんわんお
    June 16, 2025
  • July 18, 2023
  • emikof
    February 22, 2023
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