サロン・デュ・エミヤ
【現パロ】チョコ中毒の槍とショコラティエ弓です。
士郎君が出てきますが槍弓には絡みません。砂かぶりポジ。
2/08 プレオープン
2/14 4で無事開店…Happy Valentine!
くずゆさん(user/9382)が素敵なイメージイラストを描いて下さいました~~!!!!エンッッッ
表紙へのアップ許可頂きました~~( ;∀;)
ホワイトデー[R18]→novel/7932404
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1.
とある市の主要な駅から徒歩十数分。繁華街のはずれにあるその店は看板も出さず、常にシャッターが三分の一ほど降ろされている。シンプルなつくりの飾り窓は、内側が豪奢なカーテンで覆われており、扉はブランデーのような色の重厚な一枚木で一見さんを寄せ付けない。その店の前を毎日通っていても、越してきたばかりの地域住人であれば閉店したばかりのバーのようにも見えているかもしれない。
裏に紹介文が書かれた名刺と、大まかな地図の書かれた紙きれ。PDAが発達した現代で、こんなに足で稼ぐ仕事はない、と青い髪の男はひとりごちる。既に二月に入ったというのに、自宅のカレンダーはめくられていない。にわかの不動産屋より詳しくなったのではないか、という程に本日も歩きどおしであった。目印も何もない店を、わずかなヒントを元に探し出さねばならなかった。とうとう目当ての店に辿り着いた時には、ランサーは首筋から背中にジワリと汗ばんでいた。ファー付きのフードが首を囲む、濃紺のダウンは軽くて温かい。普段は外回りの仕事で重宝するが、この活動量では不要となってしまう。ついでとばかり、店の前でバサリと脱いだ。白いシャツに動きやすいパンツとなる。ダウンは軽く畳んで、嫌みなく自然な雰囲気の来訪者となる。家柄として切りづらい後ろ髪を持つ身であり、日本人の見た目とは程遠い。かしこまりすぎるよりはとっつきやすさを売りにした方がよいと、この国での処世術を会得してきた。
主にフリーのライターをしていると、自己の執着するモノが舞い込んでくることも少なくない。今まさに取材に訪れているこの店は探し求めていたそのものだ。扉に堀りこむように作られた取っ手を掴むと、ズシリと手に馴染む。存外スムーズに開くと、薄暗くムードのある照明が一定間隔でついていた。夕暮れ時の屋外から一歩足を踏み入れると、そこは時が止まったような夜の空間であった。昔ながらの小さな喫茶店のような店内。こじんまりしたテーブル席は二つ。バーカウンターには背の高い椅子が三つ並び、その横には、白く光る横長の透明なショーケース。宝石が並んでいるかのような色とりどりの粒が整然と陳列されている。ランサーの喉がごくりと鳴る。
「いらっしゃいませ」
子供と大人の間、高校生だろうか。年齢なりには平均的な背丈の坊主が、口だけ笑みをたたえてカウンターの奥から顔を出した。白いハンチング帽をかぶり、アッシュブルーの上着はユニフォームだろうか。まだ着せられている感じが否めない。
「どなたかからのご紹介ですか?」
「ええ、言峰氏からの紹介です、と伝えれば店主にお会いできると伺いまして」
頼みの綱の名刺を差し出し、ニコリと営業スマイルを添える。男相手であっても愛想は振りまいておくのがこの仕事の秘訣だ。どこで誰が誰と繋がっているかわからない。
「ああ、だからアイツ今朝から機嫌悪かったんだ…」
作られた笑みも消え失せ、薄暗い店内でもわかる程に少年は肩を落とした。誰に言うでもない独り言。歓迎されないことはあっても、ここまで嫌なオーラを放つ紹介先は無かった。言峰のツテなんか、やはり使うものではなかったか、とランサーは目頭をおさえたくなってくる。
「ちょっと、待っていてくれ」
言峰の知人とでも思われたのか(実際にそうであることは間違いないが)、対応が柔らかく…否、雑になっている。名刺を受け取ると少年はカウンターの奥へ戻っていった。ぼんやりとした店内で一人残される。ランサーは先程から意識を釘付けにさせられているショーケースへと歩を進めた。徹底した温度管理をされているだろうその中の商品は、チョコレート。色違いの茶色が数種類あるプレーンなスクエア型、黄色が美しいドーム型、ゾッとするほど赤いハート型…など、十五種類はあるだろうか。十年前に親がもらってきたとあるチョコレートそのものだ。自分を特殊な道へと誘うきっかけとなった逸品。大人になってからこの店のことを調べてやっと辿り着いた。以前は毎年一つ二つという程度だが、新作が出ていたようだ。だが、ここ数年は新作が出ていないらしい。ホームページなどは勿論なく、今までメディアの取材を受けたことはないそうだ。知人のつてを頼りに店を割り出し、取材交渉をするという名目で来店することにした。
タッ、と静かな足音にのせて、上背のある男が姿を現した。ミルクチョコレートのような肌色をした腕が捲られた白い袖から露出し、作業中であったことを物語っている。
「…取材をされたいと言うのは貴方ですか」
低く通るその声は美しく、女でなくとも甘くとろけてしまうようだった。顔にたたえる不快そうな眉根さえなければ。
「ええ、初めまして。クー・フーリンと申します。ランサーという名前でライターをやっていまして。取材はお受けにならないとお聞きしているのですが」
「そうなんです、何の手違いか話が進んでしまったようで」
できるだけ感じ良く挨拶をしようと努めた矢先、言葉をかぶせてきた。
「ご足労頂き申し訳ないのですが、お引き取り下さい」
凛々しい顔立ちのグレーの瞳は感情を映さず、聞く耳持たずといった体で踵を返し奥の厨房へ戻っていった。これが、ランサーとアーチャーの最悪の出会いであった。
Comments
- ねいねいFebruary 14, 2020