富貴で子育て、新旧住民が協力 移住者相次ぎ4月から中学校再開

大野博
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 高野山の東のふもとにある和歌山県高野町の富貴地区。高齢化率が7割近い過疎の集落に近年、子育て世代の移住が相次いでいる。子どもを地元の学校に通わせたい移住者の要望に応えようと、高野町は2019年度から休校になっていた町立富貴中学校を今年4月から再開する。

 富貴地区は江戸時代までは高野山の寺領で、かつては高野山の寺院に野菜などを納める「雑事(ぞうじ)登り」という営みを担う村落の一つとして栄えたという。1955年には2700人を超えていた人口は、現在300人前後まで減少。高齢化率は68・85%で、町全体の44・96%を大きく上回る。

 そんな富貴地区に2020年前後から、子どもがいる家族の移住が目立つようになった。

 大谷剛志さん(42)の家族と富貴地区との出会いは16年夏。たまたま告知を見つけた川遊びイベントに参加し、当時50代の移住者が営む「おやこカフェ」を知ったことだった。

 「街では子育てに追われる生活だったけれど、子どもたちは豊かな自然のなかでのびのびと遊び、大人もゆっくりできる」。そんな居心地のよさにひかれて定期的に通うようになり、翌年から古民家を借りて橋本市内のマンションとの2拠点生活を始めた。21年、長男の小学校入学を機に、富貴に移住した。

 富貴地区から町中心部の高野山小・中学校までは車で約1時間かかる。山間部の険しい道のりで、冬季には雪で通行できないこともある。

 「富貴が大好きで移住してきたのだから、富貴の学校に通いたい」。町はそんな移住者たちの要望を受けて20年、休校を経て廃校になった富貴小学校の跡地に高野山小学校富貴分校を開設。24年には富貴小学校が再び開校し、現在の児童9人はいずれも移住者の子どもという。富貴中学校は富貴小の校舎内に併設され、今年4月に3人が入学する予定だ。

 大谷さんら移住者は元からの住民と力を合わせ、富貴を発信する様々なイベントを手がけている。森の中の広場でマルシェを開いたり、小学校の旧校舎だった倉庫を改修したホール「フキシネマパラダイス」で音楽会や映写会を催したり。

 最も多くて6世帯いた子育て世代の移住者は、現在4世帯。大谷さんは「興味を持って住む場所を探している人もおり、流れは決して止まっていない。後に続く人たちを呼び込むきっかけを、自分たちの手でつくっていきたい」と話す。

 ただ、課題となっているのは、住む場所がなかなか見つからないことだ。町は移住希望者のニーズに応えようと、空き家を売却や賃貸に出す意思があるかどうか所有者に確認する調査を、全町にさきがけて昨秋から富貴地区で進めている。

 高野町の平野嘉也町長は「再開を決断した学校をどうしたら末永く維持できるのか。行政と地域住民が責任を共有し、一緒に考えて、良い循環をつくっていきたい」と話している。

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