ひきこもりから連続起業家の家入氏、CAMPFIRE年内上場目指す
- キャンプファイヤーの評価額は最大2000億円
- 家入氏がIPOに携わるのはGMOペパボ、BASEに続き3社目
かつては学校でいじめられ、何年も引きこもり、貧しくて大学も行けず家計を支えるために新聞配達をしていた家入一真氏。それから20年以上が経ち、42歳となった現在、自身が創業した日本最大クラウドファンディングCAMPFIRE(キャンプファイヤー)を10億ドル以上で上場させる準備中だ。
キャンプファイヤーは、個人や小グループのオンラインでの資金調達を支援しており、今年注目の新規上場(IPO)の1つ。2011年の設立以来、5万件以上のプロジェクトの資金調達をしてきた。家入氏はブルームバーグとのインタビューで、評価額は最大2000億円で今年中の上場を目指していることを明らかにした。
家入氏がIPOに携わるのはキャンプファイヤーが3社目。日本では典型的な成功の道からは外れたが、技術系の新興成長企業の上場で財を成した若い経営者の1人だ。2014年には東京都知事選にも出馬した。
Kazuma Ieiri at the company’s headquarters in Tokyo.
社会不安を抱えていた10代の頃、自室でプログラミングコードを学んでいた家入氏は、「インターネットによって声を上げることができて僕は救われた」と話す。「そういった人を一人でも増やしたいというのは、ずっと、根っこにある」と語る。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、キャンプファイヤーのようなサイトの必要性は高まっている。客足の落ちたカフェやレストラン、中小企業が収益を補ったり、失業した人が新たな事業を立ち上げるために利用している。2020年には、流通取引総額が前年の3倍以上の200億円に達した。
キャンプファイヤーで元インターンだった鶴岡裕太氏が設立し日本で最も成功したスタートアップ企業のひとつであるBASEの立ち上げにも携わった。BASEは新型コロナ感染拡大の直前に上場して株価は6倍以上(株式分割を考慮した実質ベース)に上昇した。出家した仏教徒でもあり、ベンチャーキャピタリストでもある家入氏は、お金のためにやっているわけではないと言う。貧困の中で育ち、経済的に困っている人を助けたいという思いからだ。
子供の頃にいじめられた家入氏は、10代半ばで学校を辞めてから、何年も自室で「ひきこもり」となった同氏にとっての心の拠り所は、同じような経験をした人たちが集まる掲示板のチャットだった。大学入学資格検定に合格し、新聞配達の奨学金制度で芸大を目指し準備をしたが受験に失敗。親が事故に遭い働けなくなり家計を支えなければならなくなった。
会社員になったが、すぐに向いていないと気付いた。なかなか会社に馴染めず、辞めたり解雇されたりを何回か繰り返した。起業したのは、生活のためには人と関わらずに済むビジネスを自分で作る必要があり、「そうだ、インターネットを使ってなにか仕事ができたらいいなというのが最初のきっかけだった」と話す。
2001年に、個人向けにインターネットサーバーを貸し出す最初のビジネスを立ち上げた。新聞配達をしていたことからpaperboy&co.(ペーパーボーイ)と名付けた会社の前身だ。成長する市場に目をつけたことが功を奏し、ライブドアの堀江貴文氏とGMOインターネットグループ創業者の熊谷正寿氏の2人から同時に買収提案を受けた。
Ieiri speaks during an interview on June 9.
ペーパーボーイは2004年にGMOの連結子会社となり、2008年に家入氏が新興市場ジャスダックに上場させた。創業1社目は現在GMOペパボとして、GMOの数ある事業部の1つになっている。
キャンプファイヤー設立は、他のスタートアップに投資しながら次のビジネスを考えていた時に、1人でひきこもり、何もできない日々を送っていたことから、他の人の資金調達を手伝うことを選んだという。家入氏は「お金があるか、応援してくれる人がいるかなど、生まれてきた家庭環境で格差が生じる。しかし、インターネットという民主化技術を使えば、解決できるかもしれない」と話す。
松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、日本ではクラウドファンディングの市場は拡大しており、業績は伸びているという。ただ「うまくいっていない会社もありクラウドファンディングはなかなか難しい」と指摘する。
家入氏は、IPOを目指す理由の1つとして、会社を大きくして手数料を下げたいという。資金調達する側に「1円でも多く渡すことができるようにするのが我々の使命で、そのためには流通取引総額をもっと大きくする必要があり、まだまだ投資が必要になる」と語った。
— 取材協力 Komaki Ito