就活で「スタバのバイトリーダー、君が4人目」と言われた妹がきっかけ…新人編集者が書籍『脇役さんの就活攻略書』に込めた想い
2024年に出版社・ダイヤモンド社に入社し、書籍編集局に配属された新入社員4人は、4月からnoteで『ひよっこ編集見聞録』を連載してくれていました。そして、その“ひよっこ”たちにも巣立ちの時期がやってきました。初めて編集を担当した本が書店に並び始めているのです!
今回は第二編集部に所属する森遥香(もり・はるか)さんのインタビュー記事の後編です。「企画立案から本の完成まで」を初めて一貫して経験した新刊『脇役さんの就活攻略書』が誕生したきっかけや、本づくりに込められた想いについて聞きました。
悩みが尽きなかった就活時代
――後編ではまず、『脇役さんの就活攻略書』という企画を考えたきっかけについて教えてもらえないでしょうか。
森遥香:私自身の就職活動は、アメリカに留学している時に始まったので、半分はアメリカでの寮生活中にやっていました。
同じ寮にいた日本人の学生と就活のことをずっと話していたんです。「結局学歴なんじゃないか」とか「私たちみたいに留学している子って意外と日本にいっぱいいるから、留学経験は就活で受かるかどうかと本質的には関係ないんじゃないか」みたいな話をしていました。
就活って、1年以上かけてみんながすごく悩む大きな話題じゃないですか。私は留学中に『絶対内定』を持って行っていたんですが、それを読みながら生活を乗り切れたという経験をしました。就活本が「お守り」とか「精神安定剤」みたいな。だから就活本を作ってみたいと思っていました。
――留学経験がある森さんは「脇役さん」とは思えないから、「なんでこういう企画を思いついたんだろう?」と少し不思議でした。
森:留学中に悩んだ経験に加えて「東京コンプレックス」を抱えていたというのもあります。
私は大阪の大学に通っていたんですが、大阪と東京だと参加できるインターンシップの数が全然違いました。「出版社に行きたいなら絶対東京の大学に行こう」みたいな記事とかも多くて。「私もう無理じゃん」って思ったこともありました。
あと、就活の面接でしゃべると言葉に詰まっちゃう、みたいなコンプレックスも感じていました。自分が就活生の時に悩みが尽きなかったっていうのが大きいですね。
「自分は脇役みたい」妹の言葉が企画に
森:それと、「脇役さん」の企画が生まれた直接的なきっかけは、妹のエピソードです。
私には3歳下の妹がいて、去年ちょうど就活をしていました。その妹がカフェのスタバ(スターバックス)のバイトをしていたので、それを「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」としてずっと就活で話していたんですよ。「スタバのリーダーで、飲食の売り上げを何パーセント上げました」みたいな話です。
ある時、大手保険会社のインターンのための選考で面接官にその話をしたら、「いやあ、スタバのリーダーの話、今日だけで4人聞きました」って言われたらしくて。
――あー、『脇役さんの就活攻略書』の中にも「就活ではバイトリーダーが大量に現れる」って話が紹介されていましたね(34ページ)。
森:そうなんです。妹は「今日候補者と面談する中で4人も同じような話を聞いていて、耳にタコができました。正直なところ、あんまり記憶に残らないんですよね」と指摘されたようです。それから「今回、森さんはあんまり受かる見込みがないかもしれないんですけど、次からはもうちょっと違うガクチカを話した方がいいかもしれないですね」みたいな話もされたそうなんです。
それで妹から「今日の面接官にこんなこと言われたんやけど。でもうちなんかそれ以外に話すことないやん」と相談を受けて。
――実際にスタバのバイトを頑張ってきたわけですもんね。
森:「アルバイトのリーダーの経験以外、自分に就活で戦えるものってない」って妹も言っていました。「それ以外の話をしたって、長期インターンとかすごい経験をしてきた学生に勝てるわけじゃないから、どうしたらいいの?」みたいな話になって。私も「分からん」ってなったんですけど、よくよく考えたらそうやって悩んでる子っていっぱいいるんじゃないかって思ったんです。
元々私が就活してた時の経験に根底の問題意識みたいなものはあったんですが、妹のこのエピソードが『脇役さんの就活攻略書』を企画した直接的なきっかけでした。
書籍の企画の相談をしていた時に、その話を怜子さん(*1)にしたんですよね。「妹が『自分が就活の脇役みたいに感じるんだよね』って言ってたんです」って話をしたら「それいいね!」って言ってくださって。
*1 森さんの直属の副編集長である田中怜子さん。主な編集担当書に『人生の経営戦略』(山口周・著)、『独学大全』(読書猿・著)などがあります。
――そこから「脇役」という言葉が生まれたんですね。
森:そこから始まりました。「今の就活生に向けて嘘偽りのない本を出そう」って。
妹の話もそうですけど、「就活って受かる人は受かるけど、受からない人って全然受からないよね」「で、自分って受からない人の方に入ってる」という悩みを知り合いから聞くことが多くて。それって、「受かる人は主役のように輝いてる。でも自分は脇役なんじゃないか」みたいな問題意識が多くの人にあるんじゃないかって思ったんです。
だから「脇役さん」をコンセプトにした就活本を出したいと。
――子ども時代に漫画やゲームで主人公気分を味わっても、成長するにつれて「あれ? 自分って主人公じゃないのかな」と実感するタイミングが増えると思うんですが、その大きな一つが就活かもしれませんね。
森:そうですね。現実を突きつけられる瞬間というか。
受験も現実を突きつけられますけど、一般入試だったら「点数」という分かりやすい指標があるじゃないですか。でも就活は「人から評価される」ってところがまた怖い。就活で落ちると、「自分って人から受け入れられない人間なんだ」と思ってしまうこともあるかなと。
――妹さんのときはフィードバックがあったみたいですけど、就活で落ちた時って「お祈りメール」だけ届いて、何で落ちたか分からないですもんね。
森:そうですね。「何がダメだったんだろう……」って本当に落ち込むことが多いなって感じたのも、この本を作ったきっかけですね。めっちゃ苦い思い出がいっぱいあるんだから、「企画を立てるところから始める1冊目の本」としていいんじゃないかと思って。
本の中には「脇役さん」の就活生を3人登場させているんですが、その人たちに語らせた内容は、最も就活生目線で書かれていると自負しています。著者さんの言い分を100%鵜呑みにはせず、正直に思ったことをつぶやくように意識しました。
例えば「面接が終わった後に手書きのお礼状を送ろう」って著者さんが書いているんですけど、それに対して「面倒すぎない?」って反発させたりとか、「ガクチカでアピールできることが本当に何もないんですけど大丈夫ですか?」と心配事を言わせたりとか。
大学生の時の気持ちを思い出して、登場人物3人に率直な意見を語らせました。
「No No Girls」と「脇役さん」の共通点
森:少し話が飛ぶんですけど、「No No Girls」ってご存じですか?
ラッパーでシンガーのちゃんみなさんと、SKY-HI(スカイハイ)さんが立ち上げたBMSGっていう事務所が主催したガールズグループのオーディションプロジェクトです。ここから7人が選ばれて「HANA」っていうグループが誕生したんですけど、『脇役さんの就活攻略書』を制作しながら、このオーディションに、どハマりしまして。
そのオーディションの応募メッセージは「身長、体重、年齢はいりません。ただ、あなたの声と人生を見せてください。」という変わったものでした。コンセプトが、「見た目がかわいい子を選ぶんじゃなくて、他人から『NO』を突きつけられた人たちを集めます」ってことなんです。
例えば、体格や年齢が原因でアイドルになるのを「NO」って言われた人が応募していたり、応募者それぞれがコンプレックスを抱えていて。そういう人たちのためのオーディションだったんです。
このNo No Girlsが、『脇役さんの就活攻略書』にめっちゃ似てるなと思って。
――どういうところがですか?
森:就活生も何かしら自分にコンプレックスがあるじゃないですか。で、どこかしらのタイミングで面接官から「NO」って言われる。それで「自分は主役じゃなくて脇役なんだ」と落ち込んでしまう。
でも「NO」って言われても、それは自分に力がないからとか、自分の歩んできた人生が悪かったとか、そんな風に思う必要は一切なくて。これまでの努力や思いを聞いて、「YES」って受け入れてくれる会社が全国どこかしらにはあるはずで。それで、その会社の見つけ方っていうのは、正解があるんだよっていうことが、この本の第4章「脇役さんの『企業選び』」に書いてあります。
「エントリーシートや面接で落とされ続けても、自分にはどこかしらに強みがあるんだよ」っていうのを伝えたいなと思いながら、この本を編集しました。
なので、この本の登場人物である「脇役さん」たちのモデルはHANAなんです。3人の中に「ちか」って脇役さんがいるんですが、この名前はHANAのメンバーであるCHIKAさんから取っています。
――なるほど。森さんがどんな想いで『脇役さんの就活攻略書』を編集したのか、すごくよく分かりました。次の編集本も楽しみにしています。ありがとうございました!



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