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もし、勤めている会社がM&Aされたらエンジニアはどう行動するか?

に公開

はじめに

こんにちは!元Poetics、現ナレッジワーク所属のryogaと申します!

この記事は、KNOWLEDGE WORK Blog Sprint11本目の記事です!

「株式会社ナレッジワーク」は2025年の7月1日に「株式会社Poetics」を吸収合併し事業と組織体制を一つにするM&Aを行いました。
当時、入社一年目のPoetics社でエンジニアをやっていた私の視点からM&Aされる側の過程で起こったことなどを書いていきます。もしスタートアップで働いているエンジニアの方がいれば、将来のM&Aの経験に備えてぜひ参考にしてください。

なぜM&Aが発生したか?

M&Aの目的にはいろいろあります。
する側の目的: 経営基盤の強化 / プロダクトの強化 / 組織の強化
される側の目的: 事業再建 / 新規事業への参入
などなど。

今回のナレッジワークとPoeticsのM&Aの目的を当時のプレスリリースから抜粋します。

本吸収合併は、両社の事業・組織体制を統合し、共通のビジョンのもと、両社の技術と人材が連携することで、営業担当者向けのセールスAIエージェントの開発・提供をさらに加速することを目的とするものです。
ナレッジワークは、大手企業様向けにセールスイネーブルメントAI「ナレッジワーク」を提供しています。これまで、営業資料の発見・共有を支援するナレッジ領域プロダクトや、商談準備を支援するワーク領域プロダクトを通じて、営業担当者の商談前プロセスを支えてきました。一方で、Poetics社は商談解析AI「JamRoll」(商談の書き起こし・要約、CRM/SFAへの自動入力)において、営業担当の商談後のプロセスを支援してきました。今回「ナレッジワーク」と「JamRoll」を連携・統合することにより、営業担当の商談に関わるあらゆるプロセスを支援することが可能になりました。

簡単にいうと「プロダクトの親和性が高く、両者が参入したい領域に一緒に挑める」の一言に尽きます。

  • ナレッジワークでは商談の書き起こし & AI の領域に参入したかった。
  • Poeticsは商談前後の領域に参入したかった。

この目的がマッチしたというのが今回のM&Aにつながったと言えます。

詳しくはCEOのKJがNoteに書いてくれているのでぜひ読んでみてください。
https://note.com/kojiasano1103/n/n7f4bab37b0b3

M&Aの時系列について

まずは簡単に私のPoetics入社からのM&Aの時系列を以下に記載します。

時系列 出来事
2024年3月1日 Poetics社に入社
2025年1月4日 上長のEMの方が退職し、EM代行を請け負う
2025年3月3日 当時の社長(現CAIO)のHazumuさんよりM&Aをする旨を告げられる
2025年3月〜4月 DueDiligence[1]の期間
2025年4月28日 Poetics社の全社員にM&Aを行う旨を告げられる
2025年4月30日 KWの全社員にM&Aを行う旨を告げられる
2025年5月1日 Poetics社がナレッジワークの子会社化
2025年5月〜6月 簡易的なPMI[2]を行う
2025年7月1日 M&Aを経てナレッジワークに入社

(まだ入社して1年しか経ってないのに私がデューデリやるんすか!!)

事前にM&A知らされた時の私の気持ちです。
当時CEOだったHazumuさんから1on1でM&Aをするという事実を唐突に知らされました。
M&Aについては全くわからなかったのでMTGが終わってからはM&Aについて調べたり、買収される側はどうなるのか、何をするのか?などをAIと壁打ちしたりなど、その日は一日中混乱していたと思います。
ということで、スタートアップにいる良いプロダクトを作っている皆さんであれば、誰しもM&Aの可能性はあってデューデリに参加する可能性があることを頭の片隅に置いておくといざという時に役に立つかもしれないです。

DueDiligenceについて

DueDiligenceはM&Aにおける対象企業の調査のプロセスのことです。
基本はM&Aする側の調査活動なので、Corpの担当者とかでない限りはM&Aされる側のエンジニアが主導して対応することは特にありませんでした。財務DDとか法務DDとかはマジで大変そうだった。
私が技術DDで依頼されて行ったのは以下の3つでした。

  1. チーム体制やインシデントへの対応、deploy運用の体制などの組織や運用に関しての質問への対応
  2. CTO / VPoE へのプロダクトのシステム概要や課題などの全体説明
  3. 人事責任者 / CTO との面談

組織や運用に関しての質問

これはただただ現状を正直に伝えるだけで良いです。
私が入社した時点では特に文書化されたルールとかはなかったので、Deployとインシデントへの対応に関してどのように進めているかの現状を軽く文書化して提供などはしました。

スタートアップだとマンパワーでどうにかしている企業も多いと思うので、こういうのを文書化していないところも多いと思います。
突如くるM&Aに備えて、普段から各種運用フローはすべてきちんと文書化してナレッジにしておくのが良いと思います。

システム概要や課題などの全体説明

これは 2025年3月末 に実施しました。
今回のM&AではナレッジワークからCTOがオフィスに来て、プロダクトの技術的な説明を行う場が設けられました。
この時間には他の従業員にも完全にオフィスへの入室を遮断して、昼頃に訪問いただいてから日が落ちて暗くなるまでみっちりシステムの説明を行いました。

この過程を経て、私が学んだきちんと伝えるべき情報は以下だと整理しました。

  1. 大まかなシステムの構成やデータの流れ
  2. 内部のメインとなるアーキテクチャがどうなっているか
  3. DBやStorage等のデータ設計
  4. システムにおいて負債やボトルネックとなっている箇所

当時、認証まわりのリプレイスを行っていたのでその部分はよくわからなかったので「わからない」と正直に伝えたりはしていました。
全てを完璧に回答できる必要はなく正直に全てを伝えるのが大事だと思います。
ただ、こういう説明が苦手な人もいるとは思うので、ある程度打ち返せるような準備はしておいた方が良いと思います。

どうでもいいですが、当日はCTOのmayahさんと休憩の時間に技術の話をしたりして割と盛り上がった記憶があります。そういう細かいアイスブレイクも今思えば大事な時間だったかなと思ってます。

mayahさんの前回のBlog Sprintの記事はこちら。
https://zenn.dev/knowledgework/articles/c48539d2f35ecc

人事責任者 / CTO との面談

これは 2025年4月10日前後 で実施しました。
こちらは当時はキーマンインタビューという形でMTGを設けられました。
事前にナレッジワークに関する理念やスタイル、目指す姿などの資料を共有いただいていたのでそれに軽く目を通してからMTGを行いました。
このインタビューを行う前にはM&Aを予定していることを事前に知る人を数人増やしてengチームからは3名が面談を行っていました。

当時、私がインタビューを受けて感じた目的は以下かなと理解しました。

  1. キーメンバーがナレッジワークの文化とある程度あっているか
  2. キーメンバーの技術力等の大まかな把握
  3. 相互の不安解消とM&Aに向けた納得を深める場
  4. 組織統合のための相互理解

特に4を一番メインで考えているのかなというのが伝わってきました。

当時、実際にそうはならないと思いますが、「自分の受け答えの一つがM&Aの判断に影響を与えるかもしれない」と思いながら臨みました。

実際にインタビューを受けて自分が感じたインタビューの目的を果たすための準備はできていたと感じてます。

一応した準備は以下で、

  • ナレッジワークの理念についての熟考とそこで感じた疑問など
  • いくつかの技術的な質問
  • どういうメンバーが所属しているか(たまたま知り合いがいたりした)
  • ホームページ巡回

こういうインタビューの場で最も大事だなと感じたのが全て正直に答えて自身のことを知ってもらうこと相手のことをきちんと知る姿勢をとることかなと感じました。

このインタビューの中でナレッジワークの理念であるイネーブルメントについて質問された時に良い回答がすぐに出せなかったことだけはしばらく後悔していました。ただ、ここでの後悔がのちに組織の文化について深く考える良い機会になったなとも感じます。

DueDiligenceまとめ

M&Aを告げられてから約2ヶ月、とんでもないスピードでDueDiligenceが終わりました。
エンジニアの立場としては、経営判断の一部に巻き込まれているだけではありますが、

  • 正直に答える
  • 受け身ではなく、共にDDを乗り越える

という姿勢を常に取るのが大事だと思います。

余談ですが、後でCTOのmayahさんと話したら、「M&Aは初めてだから、進め方は自分の知識が薄い部分についてはChatGPTにも相談しながら進めていたよ」と笑いながら話していました。

次はPMI(Post Merger Integration)

DDが終わったら次はPMIが待っています。これはM&Aする側、された側、全てのエンジニアが関わるプロセスです。
PMIは一般的に「M&A後に統合の効果を最大化するための統合プロセス」を指します。
M&Aしてはい終わり、だとお金かけて会社買った意味がないですからね。

PMIにも色々あるんですが、エンジニアは「プロダクトの統合」と「組織の統合」の二つに大きく関わることになると思います。

プロダクトの統合

Poeticsが提供していたJamRollを ナレッジワークのプロダクトのAI商談記録として動作させるようにするプロジェクトJが始動しました。
これは M&Aが完了して子会社化した5/1 ~ 完全に吸収合併する7/1 の間にプロダクト統合を完遂させ、8月には提供できる状態にする必要がありました。

統合のプロセスとしては

  1. ナレッジワークをIdPとしてOAuth認証を行う
  2. ナレッジワークからAI商談記録(旧JamRoll)にログインできる状態を作る
  3. モバイルアプリへの対応とUIの出し分け対応
  4. QAして簡易的なPMI完了

を行いました。
また、ナレッジワークが求めるセキュリティ水準にプロダクトを持っていくために脆弱性診断を行い、対応も行いました。

このプロセスにおいて大変だったのが

  • まだナレッジワークの社員ではなかった
  • 各種ツールが分離されている状態のためコミュニケーションが難しい

特にSlackやdrive, notionなどが分離されていたため、プロジェクト管理やコミュニケーションが難しかったです。
ここで大事にすべき行動は限られたツールでも齟齬が起きないように頻繁にコミュニケーションをとることです。
技術的なことも大事ですが、それよりもちゃんとコミュニケーションをとって一緒にPMIを完遂させるという意識が大事です。
OIDCの仕様が問題ないか、環境の提供がうまくいっているか、対応が漏れているデバイスはないか、QA観点に齟齬がないか、などPdMやEMだけでなく全てのメンバーが意識することが成功につながる秘訣だと思います。

結果、5月中に全ての開発が終わり6月は脆弱性診断への対応とQAに時間を割くことができ、7月は品質の向上に注力し8月の提供に間に合わせることができました。
簡易的とはいえ、当初想定していたPMIのプロセスは、大きなトラブルなく進めることができました。
Poeticsが提供していたプロダクトをナレッジワークで提供できるようになりましたが、半年経った今でも絶賛PMIは進行中です。
吸収合併後のよりPMIの詳しい流れはナレッジワークがSRE Kaigiに参加した時のセッションでM&A後の統合の進め方に関するスライドが以下に公開されています。
技術的な話がメインで記載されているスライドですので、ぜひ合わせてご覧ください。

組織の統合

組織の統合に関してはナレッジワークの方々が本当に気を遣ってくれていろんな取り組みをやってくれました。
おかげさまで、吸収合併後もスムーズに業務を進めることができましたし、今となってはみんなナレッジワークの社員として馴染むことができています。
やってくれた施策としては

  • 合同セレモニーとランチ会
  • ナレッジワークとPoetics双方のリーダーの紹介をするイベント
  • 人事の方がPoetics全員に向けてオファーレターを提示
  • エンジニア全体での歓迎会
  • 中途入社と全く同じオンボーディング
  • 不定期で制度の説明会
  • M&Aから3ヶ月は人事の方が定期的に1on1
  • 有休等が不利益がないように移管して説明

などなど。
社長が「今回のM&AはCEOとCTOでPoeticsの社員を全員採用した」と言ってくれているので、オンボーディングにも妥協が見られなかったのがすごかったです。

ただ、私は一つ考えてました。「こんなに至れり尽くせりで良いのか?」
組織の統合に大事なのは双方が統合を成功させるという意識なのではないかと。
ナレッジワークに入社してから色々ナレッジワークという会社からの享受を受けました。
逆に統合を成功させるためにはこちらからも歩み寄る必要があるかなと考えていたので、私は以下を積極的にするようにしてました。

  1. ナレッジワークの方が主導してくれているイベントごとには予定が合えば基本参加する
  2. なるべく挨拶を早めにする(Slackでもリアルでも)
  3. 会社の文化について考える
  4. Poeticsで提供していたプロダクトについて知ってもらう機会を設ける

イベント参加

ナレッジワークでは部活動はないんですが、個別で趣味が合う人が集まって作る #z-comm-xxx チャンネルというのが存在します。
M&Aが決まってすぐにそこのサバゲーが趣味の方々が良いタイミングで開催をしてくれたのでせっかくならと参加したりしました。(5月上旬)
飲み会にも参加させていただいたりしたんですが、M&Aしてすぐなんてのは話題が尽きないので参加し得ですしPoeticsのことを知ってもらうのにも良い機会でした。
飲み会とかにも積極的に参加するようにしたのは良かったなと思ってます。
(でも今考えるとこういう飲み会に参加する人は同じ人ばっかりだったかもw)

挨拶

減るもんじゃないしやり得です。
M&Aなんてする側もされた側も初めはドキドキするものなので、された側が最初に足を踏み入れたら良いと思います。敵対的買収とかじゃない限り歓迎してくれるでしょう。
当時のSlack

会社の文化について考える

ナレッジワークという会社は社員全員に本当に文化が行き渡っている会社です。
全ての社員が理念やスタイルを言えると思います。
そんな会社に違う文化の会社で働いていた人がいきなり合併するわけなので、文化についてはこちらから歩み寄っていく必要があるのです。
人によって合う合わないは絶対あると思うんですが、自分が意識していたのは以下でした。

  • 無理に文化を意識しない
  • 文化に合わせるのではなくて過去の経験などから文化を咀嚼して自分に落とし込む

特に後者を意識するのは大事だと思ってます。
理念やスタイルなんてものは具体的に作られていないことがほとんどだと思います。自分の過去の経験の中で文化として理解できるものから自分のものにしていくのが大事かなと思い行動していました。

Poeticsのプロダクトについて知ってもらう

簡易的なPMIが終わったとはいえ、今後はナレッジワークのプロダクトの一つとして提供していくことになるわけです。
全てのengが「AI商談記録」を触る可能性がある、と考えると今までどのようなシステム構成になっていてどういうデータ構造になっているのか、どういう負債があってどう解消していく予定なのかを正しく知ってもらう必要があるわけです。
そこで、吸収合併して最初の週に勉強会を1時間開催してFigJam上で簡易的にシステムの説明を行う場を設けたりしました。
ざっくり知ってもらうには十分で、その後深く知る必要がある方には別途ハドルで詳しく説明したり、MTGを設けたりなどして柔軟に知ってもらう機会を設けました。

PMIまとめ

統合後は本当に全員が混乱します。
その混乱を混乱のまま放置してしまうか、全員が前を向いて進むことができるようになるかは双方の歩み寄りが不可欠となると思います。
それほど大事なのがPMIというプロセスです。

PMIに関しての詳しい内容はVPoEのhidekさんとPdMのmadaiさんが対談している記事でも詳しく語っていますのでぜひご覧ください。
https://note.com/knowledgework/n/nbce1a85f35cb

今後の展望

ナレッジワークとPoeticsのM&AにおけるPMIというプロセスは一通り終わりましたが、より成果を出すための統合活動はUnite Projectとして今後も動き続けています。
インフラの統合 / プロダクト間連携 / 組織の融合 / クロスセル強化
などなど、まだまだ会社としてもエンジニアとしてもやるべきことが山積みです。
統合が終わった、と言えるのはいつになるのかは誰にもわからない状態ですがそういう状態がずっと続きつつもできることをやっていくのが大事なのかなと思います。

M&Aを通じて学んだエンジニアの行動指針

M&Aはいつ起きるかわかりません。
今後はどんどんM&Aも増えていくことでしょう。
その時に備えるのが大事だと思います。

  • 運用フローやシステム構成図、開発フローなどを文書化して最新の状態を保つ
  • 大雑把でも良いのでシステムの全容について説明できるようにしておく

という普段からできる準備はしつつ、

  • わからないことは「わからない」と正直に伝える
  • される側からも積極的に歩み寄る
  • 双方の適切なコミュニケーションがM&Aの成功につながる

これらの姿勢を持って臨むことが非常に大切です。

最後に

ナレッジワークは文化が根強い会社です。
特にスタイルという考え方があり

  • Act For People(人のために)
  • Be true(誠実に)
  • CraftsmanShip(こだわりを持って)

を大事にして行動をしています。
M&Aの各プロセスにおいてもこのスタイルの考え方というのは大事だと思います。
もし、皆さんがM&Aを経験することになったら、ナレッジワークとPoeticsのM&Aのことを思い出してこのスタイルをもとに行動してみると良いM&Aができるかもしれません。

https://knowledgework.com/philosophy/style-policy

脚注
  1. M&Aにおける対象企業や技術、プロダクトなどの資産の調査活動。略して「DD」や「デューデリ」と呼んだりする ↩︎

  2. M&A後の統合プロセス。本記事ではプロダクトの統合に関してをPMIと呼ぶ ↩︎

株式会社ナレッジワーク

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