ハインリヒの帰還
トリアージ(仏: triage)
識別医療行為。
患者の重症度に応じて、治療の優先度を決定する選別を指す。
選別結果は四色のマーカータグを用いて段階ごとに示される。
最優先治療対象は赤、治療不能は黒で表される。
***
メインテーマは【弓兵の不在】
、のはず。
弓兵は業務のようによく消えます。全力全霊で槍兵とマスターが出張っていますが、不在ゆえに致し方ないことと考えます。
――全編において弓兵のヤる気が振り切れています。
概ね弓兵が攻めて槍兵が捌ききっていますが、愛があるかは判りません。
筆者の嗜好により、そこそこの暴力表現を含みます。
個人的にはコメディのつもりですが、おそらくその限りではありません。
健全さに配慮しておりませんので、閲覧の際にはご了承頂きたく思います。
4/16追記
タグありがとうございます。
このようにして頂くモノだったのですね。
ふぃーばーふぃーばー!
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!caution!
この先、弓兵は不在です。
万が一みつけた方は、全霊で見ないふりをしつつ持ち主に連絡をしてください。
錬鉄のハインリヒ
(某FGO 弊カルデアの記録より
―――汚らしく床に座り込んだ男は、ゆるく首を傾いで手もとの紙を眺めている。
ここでは初めて見る形状の媒体だ。
デジタルならば石膏板より軽く海の水ほど膨大な量の情報を持ち運べる端末や、アナログであればそれ単体で撲殺できる重厚な装丁の書籍だとかは、人間・英霊問わず用いられ、そこそこ氾濫しているが。
あれがぞんざいに捲るそれは、ぺら紙をまとめた見るからに簡素で容量も少ない、云えば覚え書きのようなものらしい。それと判じたのは、割に事物には丁重に真摯に当たる質の男にしては目を通す所作がどうでも良さげに見えたからだ。思惑の読み取れない無表情にあえて情感を付けるなら投げ遣り、といったところか。
…っつーか餓鬼か、こいつは。
この通路は決して人通りのない死に筋ではない。ただこの時分には施設所員も英霊も敢えて立ち入る用のない偶発的に生じるエアスポットになる。
普段は、自分以外という括りをもって何人にも隔てなく世話を焼き、『24時間★戦えます(物理・非物理は応相談)』な便利屋を自称するくせ、稀にこうしてひっそりと引きこもり、孤独をなめる。
行動パターンが青二才すぎる、さっさと窒息して浮上しろ。
こういう面倒くさい事態に遭遇した場合、俺の基本スタンスは放置だ。
あのべっちゃり床と仲良くなっている莫迦野郎も他人のなまぬるい干渉などご免だろう。
だが、だが、だが。だが!
ああもう、こっそり穿って座に還しちまおうかなあ。しかし、あれの思惑に乗るのはかなり、癪だ。
「なあオイ。弓兵を見なかったか?」
故に、精一杯の寛容で厭がらせをすることに決めた。
「……弓兵と、そう大きな括りで訊かれてもな。此処にはそれこそ神代からの高名な射手がゴマンと招かれている。情報を引きたいのならば、もう少し詳細にモノを問いたまえ。」
まあ、どの弓兵の所在も知らないが
しれっと、悪びれた風もなく返ってきた応えにぶつんとナニかがキレる音がした。すうと薄く鋭く拾った呼吸の味はひたすら鉄錆びて、赤を脱いでいる男をそれはそれは赫く染め上げた。表情が脱けるのを自覚するから、きもち口の端を吊る。
傍目には、まるで穏やかに微笑んでいるように見えるかもしれない。
「いや、なに。ウチの凶獣がキマイラ相手にはっちゃけちまってな。加減しくじって手前ぇの右半分ブッ飛ばす火力の死棘が暴発しそうになったらしいんだが、どこぞの弓兵が無謀にも、力づくで着弾軌道を修正しやがったんだと。
で。結果、狩り殺しはしたんだが、俗に言うバンザイアタック状態だ。
霊核の損壊は令呪で凌いでも、両方使い物にならん体なモンで、帰還後ソッコー鉄の看護士が出撃したんだが、
だが。
凶獣処置く間に、単独行動バカがなんと消えちまったんだと!いやー、さすがの剛胆なマスターも焦ってよ、翁の歴々総出でいま、弓兵狩りの真っ最中なんだわ。
なあ?誰だろうな?そのはた迷惑な弓兵野郎ってのはよ?」
言いながら久々にこめかみの辺りが疼く。下手すりゃあと五、六は紅眼が開いてしまうかもしれん。
自制が利くのは赤銅の娘の姿が浮かぶからだ。別れ際、あの気丈なマスターの白っぽくなった唇からぽつりと溢れた呟きが、耳について離れない。
『思わず見ちゃったんですよ。アーチャーのこと。』
***
半壊した凶獣を看護士に託した後、弓兵は消えた、
らしい。
よもや霊基が消滅したものかと医務室は一時騒然としたが、慌てふためいた優男が仕事をしたようだ。施設内で随時追跡しているという英霊のバイタルを呼び出すと、微弱過ぎて場所は特定できないものの確かに反応はある。そう告げられたマスターは、真顔で高らかに宣言した。
『帰還早々、皆さんすみません。狩りの時間です。』
あの時の眼の据わりっぷりといったらなかったよ、とは万能の巨乳の言だ。施設中のモニタリングビューを洗っても補足できないと知るや、即座にハサンを召集しきびきびと索敵を命じる。俺が直接居合わせたのはこの辺りからだ。
『百貌の姐さんズはブロックAから順に探索、同時進行で封鎖。呪腕さんはここで統括補助、華麗な情報整理ヨロです。あ、ダヴィンチちゃん警報と館内放送はオフ、オフ!』
『え~、ブラフ噛ませて追い込んじゃおうよ!』
『通じる相手ならよいですが、あの腹芸ゴルゴには逆に読まれちゃいます。捕縛担当は静謐ちゃん、臨戦で待機。とりあえず致死量はギリで。言うだけは言いましたよ。』
待とうか?ギリで抑えるんだよ、越えちゃダメ絶対。いいね?物騒な指示トびまくりだけど最優先は治療なんだよね???
『Dr.浪漫、落ち着きましょう?そんなの当たり前じゃないですか、徹底的に殺す所存です。マシュ!今日の夕食メニューなにかな?!』
『マスター大変です!本日はブーディカさんお手製コテージパイとシチューだそうです!』
『ちくしょうお腹減りました!探索時間を制限します。標的を30分以内に締め上げて晩餐です。』
NOT標的!しかも黒タグ目前の真っ赤っかな重傷者!認識を!上書きしろ!!!
『すまないマシュ。もう一踏ん張り協力してくれ。皆々さんの心配を。空腹を。そして超過勤務の憤りを!思いの丈を全て、あの分からず屋に叩き付けよう。』
『私に否やなどありません、万事了解ですマスター。可及的速やかにミッションを遂行します!』
おっしゃー!状況開始じゃい!!
嗚呼...マシュまでヤル気を発露してしまった…。操作卓と指図する赤銅とに忙しなく打鍵しながら頭を抱える小うるさい男の喚きが随所に入っていたが、概ね話はこんな流れだ。
外見は可憐でも、中身は苛烈に花咲いていくふたりの娘たちのカラ元気っぷりには鬼気迫るものがある。無理やり奮い立たせるテンションに興を惹かれて、ブリーフィングルームを駆け出て行くマスターを軽く呼び止めた。
『ったくあの阿呆は、どうしようもねえな。居りゃあ口さがなさにムカつくし、姿が消えても面倒ときた。』
全くです、と。鼻息荒く同意が返ってくるモノと思っていたら妙な間に、娘の顔をのぞき込む。その眼を見て息を呑んだ。 感情の伺えない琥珀の瞳は死人のようにその瞳孔をかっ開いて、今しがたまでわやわやと騒いでいた上気はなく血の気の失せた顔は能面のように固い。
『いいえ。わたしのせいです。』
思わず見ちゃったんですよ。アーチャーのこと
ぽつりと溢してしまった述懐には、小娘らしからぬ悔恨があった。
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はじめまして。 言葉選びのセンスの素晴らしさに感動してコメントさせて頂きました!紙次さんの文章とても好きです!微量ながらこっそりと応援させて頂きますo(`^´*)