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住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?  作者: 赤月ヤモリ
第三章 渋谷ダンジョン編

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ep19 初めての『ダンジョン配信』

 のの猫の後方には、キャップ帽を被った笹木さんの姿も発見した。


 明るい茶髪の彼女は、俺と目が合うとにこやかな笑みを浮かべて会釈。


「こんにちは、相馬くん。今日はよろしくね」


「こんにちはです。笹木さん。こちらこそよろしくお願いします」


 この人から感じる妙な安心感はなんだろうか。

 のの猫とは違うタイプの美人で、どこか落ち着いた感じ。

 ……そうか。


 松本さんや友部さん、霜月さんたちみたいな『ザ・大人』な雰囲気が漂ってるんだ。

 のの猫とそこまで年は離れていなかった気がするけど、彼女はいい意味で大人っぽくないしね。


 のの猫は『配信者』。

 笹木さんは『社会人』って感じだ。


 そんな二人は周囲から姿を隠すように帽子を目深に被っている。


 二人とも先日のロック・ビートル戦以来、そこそこの有名人となっており――特にのの猫の場合は今最も話題のダンジョン配信者と言っても過言ではない。


 そしてそれは、事件のあった夜叉の森では特に顕著。

 こうして姿を隠すのも仕方のないことだろう。


「それじゃ、とりあえず着替えて一階層に集合するにゃ~。配信開始までまだ時間があるとはいえ、移動にも時間がかかるからにゃ~」


「ですね」


 そうして俺たちは手短に着替えを済ませ、ダンジョンへ。


 一階層で合流すると、今後の動きを話しながら配信を行う予定の階層まで歩いて向かう。道中に出てくるモンスターは俺とのの猫の相手ではなく、特段体力を消耗することなく目的地に到着。


 そこで配信の準備と、流れの再確認を行って――いよいよ配信開始時刻となった。



  §



:wktk

:Sランク探索者が配信って、何気に世界初じゃね?

:他Sランクは配信っていうより地上波で扱われるレベルやしな

:それに比べて相馬はダンジョン配信者もどきwwレベル低すぎww

:こんなとこにもアンチ居るのかよ

:アンチは無視

:相馬って配信者じゃないし喋りは苦手そう

:↑そのための猫ちゃんコラボやろ

:のの猫と相馬付き合ってる説

:相馬はのの猫ガチ恋勢やしなww

:今気付いたけど『KAGENEKO』がNGワードに登録されてて草

:草

:マジやんけww平仮名カタカナ漢字やと送信できねぇww

:影†猫だと行けるぞ!ww


 配信開始前の待機時間。

 コメント欄には様々な意見が飛び交っていた。

 ある者は純粋に応援し、ある者はアンチ活動に勤しみ。


 だがしかし、全体的な雰囲気はSランク探索者に対する興味が占めていた。


(――そろそろ時間だな)


 やがて配信開始時間となり、画面が切り替わる。


:ん?

:お!

:きたか?

:始まった!


 切り替わった画面に映し出されたのは雄大な自然の景色。

 それと同時に俺は語りだす。


「青い空、美しい森。それらを綺麗に反射する湖面」


:ん?

:あ?

:?

:?

:なんか始まった?


「自然豊かであるものの、この地球上のどこにも存在しない未知なる景色。そこに現れるモンスターの姿は、まさしくファンタジー小説その物。……ここは夜叉の森ダンジョン二十二階層」


 配信画面に映るのは、言葉通りの光景。


 自然豊かな森と湖、そして遠くで釣りをする三人の探索者。

 ……なんであいつら居るの?


 配信場所は教えてないので完全な偶然だとは思うけど。


 まぁいいや。

 カメラを持つ笹木さんも気付いたのか一瞬画面が止まったが、直ぐに動かして——そのレンズを俺へとまっすぐに向ける。


 配信確認用の画面には、左の服の袖をぷらぷらと風に揺らす俺が映し出されており、それを確認してから言葉を続けた。


「毎年行われる『一度は行ってみたい! 国内ダンジョンランキング!』で五年連続堂々の一位を獲得している夜叉の森ダンジョンの中でも、特に美しいと語られるこの場所から、本日はお送りしたいと思います。……おっと、申し遅れました。お相手は(わたくし)、Sランク探索者の相馬創が務めさせていただきます。どうぞ短い間ではありますが、よろしくお願いしますね」


 ふっ――決まったな。


 一切噛むことなく言い切ったぜ。

 一種の満足感を抱く俺はコメント欄へと視線を飛ばし——。


:草

:旅番組かな?

:見覚えがあると思えばそれやん

:なぜ旅番組?

:ワイの知ってるダンジョン配信とチガウ……

:もっとSランクのドカーン! って画が見れると思ったのにくっそ穏やかな滑り出しで草ァ!

:相馬くんって、ちょっとズレてるんだね

:↑影†猫だしね


 ふむ、まずまずの反応と言ったところか。

 しかし準備していたのはこれだけではない!


「さて、それでは早速モンスターを探しに……」


「ちょ、ちょーっと待つにゃー!」


「こ、この声は!?」


 若干棒読みな演技に言葉を返すと、画面は横にずれて恥ずかしそうに頬を染めながら演技するのの猫の姿が映し出された。


 彼女は頬をひくひく痙攣させながら続ける。


「そ、ソウマサン! この旅の同行人を忘れて貰っちゃ……貰っちゃ……」


 どんどん頬を朱に染める猫ちゃん。

 可愛い。


 やがて彼女の動きが完全に静止。

 数秒してぷるぷると震えだしたかと思うと、もう我慢できないと言わんばかりに口を開いた。


「や、やっぱりやめない!? めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど!?」


「ちょっと猫ちゃん。打ち合わせ通りにやってくださいよ」


「でもこれ——も、もっと普通な感じでやり直そ!? 何て言うか内輪ノリの極致みたいな感じがしてちょっとツラいんだけど!?」


 最近意識して付けていた『にゃ』も忘れ、素の言葉で嘆くのの猫。

 そんな姿もまた可愛い。

 ぎゅっと抱きしめたい。

 一生離したくない。

 まだ捕まえてないけど。


「けど予定決める時は猫ちゃんもノリノリだったじゃないですか! 『絶対に面白いにゃ!』『爆笑間違いなしにゃ!』って」


「あ、あの時は東京から移動したばかりで寝不足やら深夜テンションやらで……い、いざ実際にやってみるとすごく恥ずかしいんだもん!」


「えぇ……そんな無責任な」


:俺たちは何を見せられているんだ?

:ここまで夜叉の森の二十二階層という事以外情報ゼロ

:ぐっだぐだで草

:照れ猫可愛い!!

:確かに内輪ノリが過ぎるww


 のの猫はコメント欄をチラリ。

 すると、コホンと咳払い一つ入れて表情を切り替えた。


「そんな訳で……飼い主のみんなこんねこ~! 万年Cランクから最近Bランクに昇格しそうなのの猫さんだよ~! 本日はお知らせしていた通り、今話題沸騰中の日本唯一のSランク探索者! 相馬創さんとコラボするにゃ~!!」


:こんねこ~

:こんねこ


「こんねこ~」


:こんねこねこ~

:さっきまでの無かったことにしてて草

:恐ろしいまでの切り替えの早さ、俺でなきゃ見逃しちゃうね

:……あれ? 今挨拶に相馬混じってなかった?

:つか相馬くそデレデレで草

:ガチ恋勢だもんね、仕方ないね


 しまった。

 いつもの癖で視聴者と一緒に挨拶を返してしまった。


 ここ最近、猫ちゃんと言葉を交わすことは増えたけれど、こうして『配信者のの猫』を真横で見たのは初めてのこと。こちとら中学生の時からガチ恋しているのだ。デレデレになるのも仕方ない。


 なんて思っているとポケットのスマホがバイブ。


 『今配信中だし見ちゃダメじゃん』と気付いた時にはもう遅い。

 液晶には焼き肉屋で知り合ったカップルの彼女さんからのメッセージが表示されていた。


【相馬くん鼻の下伸ばし過ぎ! もっとちゃんとして! お姉さん、知り合いとして恥ずかしいから! あと視線も猫ちゃんばかりじゃなくて、カメラも意識する事!】――【は、はい!】


【それと後で猫ちゃんのサイン貰ってください…】


 そう言えば彼女さんものの猫古参勢だったね。


【わかりました!】と返信してから、俺は言われた通り顔に力を入れる。意識的にはいつも七規に見せるような表情を心掛ける。


 きっと七規は俺がダメな人間であるとすでに気付いているけれど、それでも俺は彼女の前でいつも格好をつけている。


 何故だか、そうしなきゃいけないと思うから。


 表情を作った後は、のの猫とカメラを同時に意識することに努める。


:相馬いきなり決め顔してて草

:スマホ見てたし知り合いに怒られたか?

:つか配信中にスマホ見るなw

:これが日本初のSランク探索者か

:悪い奴では無いんだろうけど……たぶん馬鹿なんだろうなぁ


 そんな感じで配信は始まるのだった。

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― 新着の感想 ―
悪いやつじゃないけど馬鹿www
NGワード設定で確定してて草
初めて正しい評価がなされようとしてる…色んな意味で。
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