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住んでる場所が田舎すぎて、ダンジョン探索者が俺一人なんだが?  作者: 赤月ヤモリ
第三章 渋谷ダンジョン編

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ep2 シャルロッテさんとお出かけ

 翌日。


 朝方までアニメを見ていた俺は、外が明るくなり始めてきた午前五時頃に就寝していた。異世界無双ハーレムで癒された結果、それはもうすやすやと快眠していたのだが……朝食を作りに来た霜月さんに起こされる。


「す、すみません。昨日夜更かしして……」


「あん? 健康的な生活に気を付けなきゃダメだろーが。今からそんな調子じゃ、大学生や大人になった時『起きたら昼だった』的な生活になるぞ~?」


「うぐっ、気を付けます」


 渋々と身体を起こして洗面所へ。


 すると人間の身体とは不思議なもので、動かしていると先ほどまでの眠気が徐々に取れていく。


 霜月さんお手製の朝食を食べ、珈琲を一口。

 絶好調とはいかないが、かなり目が覚めた。


「さて、それじゃあ報告書作るかな」


 昼食と夕食を作り終えた霜月さんが帰宅。

 静かになったリビングで、俺は忘れないうちに狸原さんに提出するルナリアとテスタロッサに関する報告書の作成を開始した。


 見た目、性格、戦い方や話した内容など。

 出来るだけ細かく記していく。


「見た目の特徴は……美人?」


 とにかく顔が良かったのを覚えている。

 そんな感じで書き終え、メールで送信。


 次に夏休みの宿題に手を付けようとして――不意にインターホンが鳴った。


「は~い」


 誰だろうかと扉を開ければ、そこには夏風に揺れるプラチナブロンドがこんにちは。


 身長差の都合、くりくりとした瞳でこちらを見上げていたのはご近所のシャルロッテさんだった。


「グーテンモルゲン、相馬」


「おはようございます。シャルロッテさん。どうしましたか?」


「別に。昨日一昨日って大変みたいだったから顔を見に。より具体的には身体の調子を確かめに」


「それはそれはご心配をおかけしました。この通り元気ですよ」


 むきっと力こぶを作って見ると、彼女は不満そうに口を歪めた。


「そんなの自分の目で確かめる。いいから入れろ! 日本の夏、あつい!」


「おっと、こりゃ失礼」


 確かに外は暑い。

 まだ午前中なのにうだるような暑さだ。


 昔は「涼しい朝の間に宿題しときなさいよ」なんて母さんから言われた思い出があるが、今となっては過去の物。最近の子供は「うるせぇ、朝から暑いじゃねぇか」的な感じで言い返すのだろうか?


「麦茶でいい?」


「ん、氷入れろ」


「ほいほーい」


 日本に来てから数日。

 最初は戸惑った様子の彼女だったが、今となってはすっかり慣れたらしい。


 言われた通りお茶を準備すると、彼女はゴクゴクと喉を鳴らして飲み干してしまい――カンッとコップをテーブルに置くと、俺を見つめて告げた。


「脱げ」


「えぇ……幼女連れ込んで上裸になるとか流石に絵面がやばいのですが」


「いいから」


「まったく、最近の子供はマセてるんだから」


「相馬だってまだ子供だろ!?」


「そりゃそうだな。……っと、ほい。どーぞ」


 Tシャツを脱ぐと、シャルロッテさんは俺に近付いて観察開始。


 身体に異変はないか。

 胸の魔石式機構に異常はないか。

 そして、義手が装着される予定の左腕に異常はないかを確認。


「……いつ見ても綺麗」


「いやぁ、照れるねぇ」


「そ、相馬の身体の話じゃない! 曾お爺ちゃんの……クリストフ・シュヴァルツコップの魔石式機構の話!」


「あ、そっちか」


「変態! ジャパニーズHENTAI!!」


「この状況でその台詞は本格的にヤバいな」


 俺に幼女趣味がなくて良かった。

 ここに居たのが世紀のロリコンさんだったら……それはもう大変なことになっていただろう。


(というか、いくら田舎で治安が良いからと言って、こんな小さな子を男の部屋に一人で行かせるとか、クラウディアさんには一言二言注意しておくべきだな)


「もう服着ていいわ」


「うい。それで異常は?」


「無いわ」


「そか」


「……」


「……」


 訪れる沈黙。

 麦茶の氷がカランと音を奏でる。


「え、えーっと……それじゃあ俺、これから宿題しようと思うんだけど」


「すれば? 私は気にしないから」


「そ、そう? なら遠慮なく――」


 どうやら彼女は居座るつもりらしい。

 別に困らないからいいのだけど。


 もしかして寂しいのだろうか?

 クラウディアさんは朝が弱く、今の時間も自宅の布団で夢の中だろう。


 そんな状況で家で一人居るのも暇だし、ならばと知り合いである俺の家に来るのも分かる気がする。


(今度近所の公園にでも連れて行ってみるかな。いつまで日本に居るかは知らないけど、同年代の友達ってやっぱり重要だと思うし)


 なんて考えつつ宿題を始めようとして——徐に電話が鳴った。


 誰だ? と液晶を見ると、そこには『水瀬正元』の名前。

 可愛い後輩、水瀬七規のおじい様だ。


「はい、もしもし。相馬です」


『こんにちは、相馬くん。実は以前から準備していた例の物が届いたので、その報告と……先日七規を助けてくれた礼をと思いまして。うちに招待したいのですが、暇な日をお伺いしてもよろしいですかな?』


「そうでしたか。俺は基本的に暇ですし、何なら今日とかでも大丈夫ですよ」


『本当ですか?』


「えぇ、それに例の物が届いたのなら、いち早く使ってみたいですしね」


『わかりました。それではお昼時、我が家にお越しください。昼食を準備してお待ちしております』


「はい……あ、ちょっとすみません」


 俺は一つ断わりを入れてから電話を離すと、シャルロッテさんに声を掛けた。


「シャルロッテさん。お昼に七規の家に行くけど、良かったら一緒に来る? クラウディアさん起きるまで暇だろうし」


「ななお姉ちゃんの家? いいの?」


「まぁ、大丈夫だと思うけど……」


 あそこ金持ちだし。

 お金持ちというのは家も広ければ懐も広いのだ。


「すみません、正元さん。自分ともう一人、子供を連れて行ってもいいですか? 七規に良く懐いてる子なんですけど」


『それはもちろん構いませんよ。では、その子のお食事も準備しておきましょう』


「ありがとうございます」


 感謝を述べた俺は、電話を切って時間まで宿題に取り掛かる。


 隣ではシャルロッテさんが母親のクラウディアさんに電話をして「眠そうだったけど許可は貰った」とサムズアップ。


 流石に親御さんに何も言わないのはダメだからね。


 その後はゲームで遊びつつ、時たま俺のノートを覗いては「そこ違う」とご指摘をいただいた。


 高校数学を指摘するとか、ナチュラルに凄い。

 めちゃくちゃ褒めると「相馬の為じゃないんだからね!」と怒られた。

 ならばいったい誰の為なのか。


 そんなことを思いつつ、クーラーの効いた部屋でだらだら時間を潰し――時間になったので家を出発するのだった。



  §



 お昼時。

 うだるような暑さの中、日傘を相合傘しながら俺とシャルロッテさんは七規の家へと向かう。


(……くっそあちぃ)


 都会なら途中で自販機やコンビニがあったのかもしれないが、生憎とここはくそ田舎。


 なにもない。

 暑すぎて畑仕事をしているジジババも居ない。

 多分夕方になるとみんな顔を出し始めるだろう。


 おかげで聞こえてくるのは蝉の大合唱のみ。


「あっつい……」


 お隣でシャルロッテさんもぼやく。


「もうすぐもうすぐ……おっ、あれあれ」


 服が身体に張り付くほど汗だくになりながら到着したのは、見覚えのある巨大な家。


「オー……ジャパニーズ・ゴクドー」


「そんな怖い人じゃないから安心して」


 などと答えつつインターホンをプッシュ。

 「はーい」と聞き馴染みのある声が返ってくると、巨大な門に併設された小さな勝手口から、見慣れた黒髪の少女が現れた。


「いらっしゃい、せんぱい。それにシャルちゃんも」


「あぁ、お邪魔するよ。七規」


「ななお姉ちゃ~ん、あつい~」


 耐えかねたシャルロッテさんが嘆きながら七規に駆け寄る。


 美少女な後輩と美少女なシャルロッテさんの二人が会話する姿は、何とも絵になる瞬間であった。

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