天国のあの人と話せたら…被災地発「風の電話」が今や17か国400か所に、ウクライナ避難民の利用も
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東日本大震災で亡くなった大切な人へ、回線のつながっていない受話器から思いを語りかける岩手県大槌町の「風の電話」をモデルとした電話ボックスが、米国やドイツ、南アフリカなど計17か国の400か所以上に広がっている。ロシアのウクライナ侵略やコロナ禍で愛する人を失った遺族らも足を運ぶという。絵本化や映画化もされ、悲しみを癒やす「グリーフケア」の手法として海外の専門家も注目する。(大船渡通信部 広瀬航太郎)
ワルシャワでは「愛しているよ」「明日も生きる」
ポーランドの首都ワルシャワ。大使館が密集する街の一角に「風の電話」と看板が掲げられたガラス張りのボックスがある。回線はつながっていない押しボタン式の電話機が一つ置かれている。2022年5月の設置後、年間4000人ほどが訪れている。
地元在住の作家カタルジナ・ボニさん(43)が、岩手県沿岸の被災地を取材した経験から設けた。「別れを告げる間もなく愛する人を失った状況は、コロナ禍も共通していた。行き先のない悲しみを受け止める場が必要だった」と語る。
ボックス内には自由記述のノートもあり、「愛しているよ」「明日も生きる」など、亡き友や離ればなれになった家族へのメッセージも残されている。ウクライナ侵略後、避難民の利用が多くなったという。
大槌町に登場したのは15年ほど前。病気でいとこを亡くした佐々木
ベルリン国際映画祭(2020年)で、震災の津波で家族を亡くした少女が再起へ向かう物語「風の電話」(諏訪敦彦監督)が特別表彰を受けると、海外でも広く知られるようになった。
今では佐々木さんの庭園にも各国の外国人が訪問しているといい、「時代や国を超えて『亡き人と思いは通じる』と信じる人は多い」と実感する。
各国の「風の電話」を紹介するウェブサイト「My Wind Phone」の運営者で、米ニュージャージー州在住のエイミー・ドーソンさん(59)によると、今月11日現在、南米を除く計424か所に置かれ、うち300か所は米国内にあるという。ドーソンさんは5年前、闘病していた次女エミリーさん(当時25歳)を亡くしたものの、「つながらなくても、娘のナンバーにかけると不思議と心が落ち着く」と言う。
米パデュー大のヘザー・サーバティサイブ教授(心理学)は、「故人や他者との『つながり』を守る一つの手法として興味深い。同じ境遇の利用者が、互いを思いやれることも世界に広がる要因だろう」とみる。
◆ 風の電話 =岩手県大槌町に2010年12月に設置されたのが始まりとされる。回線のないダイヤル式の電話を置き、周辺を吹く風を「聞こえるもの」の象徴として名付けられた。14年には絵本「かぜのでんわ」(金の星社)が出版された。