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幼なじみの桜#8(完結)【2度あることは何度ある】

「ちゃんと、桜ちゃんと話して!」

うるみの手の感触が、胸ぐらにまだ残る。

迫真のおせっかいのおかげで、ようやく自分の気持ちに向き合う覚悟ができる。

3年前にも伝えた気持ちを、もう一度正直に伝えよう。

今も、あれからずっと、桜を思い続けていることを。

きっと今までのように隣にはいられなくなるだろう。

桜がオレに求めているのは、仲のいい幼なじみの関係なんだから・・・

それでも今までのように気持ちを偽って、居座り続けるよりはいくらかマシな終わり方になるはずだ。





いつものファミレス、いつもより重いドアを開ける。

静かな店内の中で、窓際の席にいる幼なじみを見つける。

名前のかかった焼酎のボトルと二つのグラス。

テーブルの中央で山をなすポテト。


『桜・・・ほんとに待ってたんだな』


声をかけるまで気付かなかったようだ。

「あ;〇〇・・・」

顔を上げた桜の目の縁が、ほんのり赤い。


「来て、くれたんだ・・・」

『待たせて悪かったな・・・』

そのまま桜の向かいに腰を下ろす。

「あ、今お酒やるね;;」

慌てた様子でボトルに手を伸ばして、オレのグラスに焼酎を注ぐ。

とぽとぽっと音を立てて、ボトルが空になった。

「あ、無くなっちゃった。ごめんね。私けっこう飲んじゃったから;;」

『桜・・・』

「注文するから、ちょっと待って;;」

『桜・・・』

タブレットに伸びる手をそっと掴んで名前を呼ぶ。

『泣いてた・・・のか?』

確認するまでも無いことを、あえて口にする。

オレの言葉に傷ついて、目を赤くしている桜。


「・・・泣いてないよ」

説得力の無い否定の言葉とともに、ぽろっと目尻からこぼれる。

『桜・・・』

「ごめん・・・だって。来てくれた。〇〇が来てくれたから・・・よかった・・・」

こんなことで泣かせてしまうとは・・・

心底自分が情けなくなる。

桜の心中が分からない。

『なんで・・・』

桜をまた傷つけてしまいそうで、喉が固まる。



「だって、諦められないんだもん」


「ずっと、好きなんだもん。もう、ずっと。ずうっとだよ・・・」


「ねえ、ずっと桜のそばにいて?合コンとか行かないで?」



「桜のこと・・・好きになって?」


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一気に畳みかけられて、脳がぐるぐる回る。

「ダメ?ダメなの?」

『いや、そうじゃなくって;;』

「おっぱいも、もっと大きくなるように頑張るから!!」

『頑張るって;;十分おっきいだろ;;』

「ほんとに?でもほんとはもっと巨乳がいいんでしょ?」

『ええと;;;一旦待ってくれ;;』

状況整理が追い付かず、目の前のグラスに入った焼酎をそのままくいっと飲み干す。

常温のアルコールがじわっと脳に効く。

『あのさ、桜・・・』

グラスをテーブルにおいて、小さく息を整える。



『オレ、フラれたよな?』

「え?」

たぷたぷのうるうるが、絵に描いたようなキョトン顔をする。

『3年前。ここで告白して・・・』

「うん、フラれた・・・でも〇〇はその後もずっと優しくて、一緒にいてくれるんだもん!忘れるなんて無理だよ!」

「いつか好きになってもらえるかもって思っちゃうよ!」

『えっと桜?;;オレがフッたことになってないか?』

「うん、だって・・・付き合うわけないって・・・忘れろって・・・言ったよ?」

たぷたぷに潤んだ眼が、ずっとオレを見ている。

忘れろ・・・

確かにオレが言ったな・・・






ーーーーーー

ーーーーーー

三年前。高校の帰り。

家の近所のファミレスの窓際の席に向かい合って座る。

ついさっき告白で怖い思いをしたばかりの桜。

震える手を包み込んで安心させることができるなら。

その資格がほしかった。

『……桜』

「ん?」

『オレと、付き合ってくれないか』

言い終わるまでに、喉が渇く。

「え;;」

・・・・・・

「えぇ;;;」

・・・・・・

「えぇと;;待って;;;ちょっと待ってね;;;;」

桜の目が、ぱちぱちと瞬いて困った様子で取り乱す。

「えっと、その;;;」

・・・・・・

ついさっき告白で怖い思いをしたばかりの桜に身勝手な思いをぶつけて追い打ちをかけて

こんなに困らせて・・・・

なにをやってんだオレは・・・


「えっと;;;」

・・・・・・

「ちょっと、ちょっと待ってね;;」

・・・・・・

優しい桜のことだ、オレを傷つけない言葉を探してるんだろう。


『ごめん、ごめんな・・・』

「え?」

『付き合うわけないよな。幼なじみってだけだし、オレたちは』

「あ、え、待って待って;;;えっとそうじゃなくって;;;」

慌ててオレを気遣う桜をこれ以上見ていられない。



『ごめん、さっきのは・・・忘れてくれ』

泣き出してしまいそうな表情でたぷたぷとオレを見る。


「・・・忘れるの?・・・忘れなきゃダメなの?」

『ああ・・・』

・・・・・・

・・・・・・

『どうかしてた。もう2度と言わないから・・・忘れてくれ』

・・・・・・

・・・・・・

「・・・うん・・・分かった」

『・・・ごめんな』

桜の顔を見ることができなくて、視線を落とす。

テーブル上で存在感を放つポテトの山が、脳の裏側にこびりついた。




ーーーーーー

「あの時、付き合う?って言ってくれてびっくりしちゃって」

「あれ、もしかして夢?とか思ったりして」

「すごく嬉しかったけど、〇〇は優しいから」

「困ってた私の為に言ってくれたのかなって」

「でもずっと大好きだったからやっぱり嬉しくて」

「なんて言ったらいいかわかんなくなっちゃって」

・・・・・・

・・・・・・

「でも、もう忘れろって・・・」


目の前で桜からひとつひとつこぼれる言葉が、3年前の光景と重なって色を変える。



オレのペースで勝手に告白して、勝手に自己完結していたのか。

桜には桜のペースがある。

そんな当たり前のことを見落として。

桜もオレのことを好きと思ってくれていたのに。

桜より先に答え合わせが終わって、胸が詰まる。

嬉しいとか、もったいない期間を過ごしたとか、自分側の都合はどうでもよくて。

3年間、桜をずっと不安にさせていたことが、心に重くのしかかる。

それでも、今すべきことははっきりしている。


『桜、ごめん』

突然の謝罪に桜の表情が、また不安そうに揺れる。

「・・・やっぱり、ダメ、なの?」

『違う。そういうごめんじゃない』

これ以上、間違えるわけにはいかない。

テーブルの上で震える小さい手を包み込んで、しっかりと桜を見据える。

『桜・・・』


『焦らなくていい、いくらでも待つ』


『だからゆっくり考えて返事してほしい』


『2度目になるけど』


『オレと、付き合ってくれないか』






「え;;」

・・・・・・

「えぇ;;;」


・・・・・・


「えぇと;;待って;;;ちょっと待ってね;;;;」

桜の目が、ぱちぱちと瞬いて困った様子で取り乱す。


「えっと、その;;;」


・・・・・・


桜の視線がテーブルの上をさまよう。



・・・・・・


・・・・・・

これ以上間違えるわけには行かない。

・・・・・・


・・・・・・

いくらでも待つ。


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


そうは、言ったけど


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・



こんなに待つのか?


・・・・・・

・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


・・・・・・


桜が事態を飲み込んで、返事をくれるまでの時間は想像以上で。


体感としては、10分間、いや15分間を少し超えてきた。







ーーーーーー

「うー・・・頭痛い・・・」

翌朝。大学に向かう電車の中。

座った瞬間から、いつものようにオレの右肩に頭を乗せてくる桜。

『飲みすぎたな』

「でも、お酒おいしかったよね。昨日も」

『まあ・・・』

「ねーえ、今日も行こ」

『いやいや、頭痛いんだろ?連続で行かないでも』

「えー、桜と飲もーよ。ボトルもキープしてあるんだし」

『あのな・・・』

苦笑しながら言いかけて、ふと口をつぐむ。

『ん?』

「ん?」

桜が、不思議そうに顔を上げる。

たぷたぷの眼が「なあに?」と言っている。


『桜、もしかしてだけどさ。昨日のことって・・』

「うん、覚えてる覚えてる」

食い気味に言ってくる。

「昨日もおんぶしてくれたよね。背中あったかかったよ////」

『いや、そこじゃなくて・・・ボトル・・・』

「ん?」

たぷたぷのうるうるが、あざとく首をかしげる。

家の前で顔を合わせた時から、普段と変わらない様子に違和感を感じていた。

オレがつくまでけっこう飲んでたっぽいけど


マジで覚えていないのか?


「〇〇?どうしたの?飲みすぎた?」

たぷたぷのうるうるが身を寄せて器用にオレをのぞきこむ。

これは天然なのか・・・

それとも・・・


先輩から言われた言葉が脳をかすめる。

3度目の正直・・・だな、これは・・・


「〇〇?ねーえ、聞いてる?桜のことちゃんと見て!」

口を膨らませたたぷたぷのうるうるが、密着していた身体の接地面をさらに増やしてくる。


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まあ、どっちでもいいか。


オレの次の台詞に選択肢は無いんだから。





『桜・・・やっぱり今日飲みに行くか?』




大学に向かういつもの電車の中。


小さな桜の花が嬉しそうに開いた。



【終わり】




最後までお付き合いありがとうございます。
無事?完結しました。
さくたんもうるみんも書いてて楽しかったです。あと先輩も。
皆さまのおかげで楽しく続けています。
皆さまにも楽しんでいただけたら嬉しいです。
感想いただけたらもっと嬉しいです!お願いします!
ありがとうございましたー!







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コメント

4
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isamu

こんな感じも良いなぁって思って、面白い終わり方でした。 酔っ払た時の言葉だからある意味本音だよね。 〇〇は今後その言葉を胸にずっとさくたんの傍に居られるね。 楽しく読ませて頂き…

2
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ぬめたけ

最後までお付き合いありがとうございました。 終わり方気に入っていただけたらよかったです。 おかげさまで書きたいとこまで書けました。 相変わらず余白だらけの終わりなので、またいつ…

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miesque

さくたんの泣きながらの告白、、 読みながら泣いてしまいました、、からの~もう、、、やっぱり〇〇が鈍感ですれ違いコントになってたんだな(笑) さくたんの頑張りが、おっぱいトークも含…

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ぬめたけ

すれ違いコントでしたね、さくたんの頑張ってた感出てたらよかったです。 お気に入りに入れて嬉しい!書き手冥利につきます。 おかげさまで最後まで楽しく書けました。ありがとうございま…

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