幼なじみの桜#3【チェリーロック】
「飲み会、ここにしよ!」
お互いの家から一番近いファミレス。
3年前、オレが桜にフラれた店だ
ここでお酒を飲んだことはないし、来ること自体久しぶりだ。
「久しぶりだね。えっ、Wifiやめましただって」
入口の貼り紙を見て、なんだか楽しそうな桜。
『そんな事あるんだな』
割といつも空いてたイメージだし、色々削るところは削るという感じなのかもしれない。
変わらないものなんてそうそうないんだろう。
それでも店内の様子は、あの頃と変わらない。
当たり前のように、あの時の記憶がよみがえる。
桜はあれをどう捉えてるんだろうか。
数ある告白のうちの一つである事は間違いないが。
桜の心中が分からない。
そんなオレに追い打ちをかけるように、窓際の席に向かう桜。
四人掛けテーブルで、ソファ側と椅子側で別れている。
よりによってこの席かよ・・・
ざわつく感覚を悟られないようにそのままついていくと、桜は座らずにくるっと反転してオレを見る。
『ん、どっち座るんだ?』
「〇〇はそっちね、奥」
『ああ・・・』
窓際のソファ側に腰を下ろすと、間髪入れず隣にぽふっと桜が座る。
『は?なんで桜もこっちなんだよ;;』
「いいの!」
『よくないわ;;オレそっち行くから』
「ダメ、隣がいいの!」
なんなのこれ・・・
あの時と同じテーブルだが、座り方がだいぶ違う。
出口を塞がれているうえに、バグった距離感のせいで右肘に桜の柔らかい部分があたってどんどん奥に追いやられる。
「ねえ、何飲む?一緒に見よ、んー」
テーブルの上で両手をタブレットに伸ばすと、大きくて柔らかそうな身体の一部がしっかりテーブルに乗っかって、むにっと形を変える。
すごい迫力だ。
なんとか意識と視線を散らしながら、タブレットを桜に手渡す。
「何飲む?ビールとか?」
『いや////まあなんでもいいけど』
軽く裏返ったオレの声に嬉しそうに顔をあげる。
少し口を緩めてからタブレットに視線を戻す。
「んー、結構いっぱいあるんだね。何がいいかな・・・あ!ねえねえ、焼酎?ボトルキープできるって!」
『ボトルって、そんなに飲まないだろ』
「えー、ボトルキープしよーよ、ボトルキープ!」
『桜・・・言いたいだけだろ』
「なんでもいいって言ったじゃん」
『言ったけど』
「ねーえ、お願い」
たぷたぷに潤んだ目でオレを見る。
ずるいやつだ。
程なくして初めての焼酎ボトルと氷のセットがネコ型ロボットによって届けられる。
「わあー、すごいすごい!」
初体験にずいぶんとテンションが上がってしまった桜。
絶対ファミレスで経験するもんじゃないと思うけど。
「これどのくらい入れるのかな。半分くらい?」
『多いって;;オレやるから』
ボトルを奪いとってから桜のグラスに焼酎を注ぐ。
「えー、もっと入れてよー」
『いや、これで炭酸とかで割るんだって』
「あ、そうなの?」
『まあ、最初はそれがいいと思うぞ』
「◯◯のも桜が入れてくるからね、ここ座っててよ!」
はあ・・・
おとなしく従うしかないのか?これは
初めての焼酎は意外にも桜の口にあったらしい。
「美味しいー、ジュースだねこれ」
『ジュースで割ってるからな』
「ねえ、これ全部飲んじゃったらキープにならないね」
『一回でそんな飲まないだろ;;』
頬を赤らめて楽しそうにオレを見る。
桜とはいつも一緒にいるが一緒に酒を飲むのは初めてだし、隣に座ることもあまりない。
ただでさえバグった距離感はアルコールでお亡くなりになったようだ。
さっきからオレの心臓がずっとうるさいのは、たぶんオレのせいじゃない。
「ねーえ」
『ん?』
「桜の事、太らそうとしてる?」
『何の話だ?』
「◯◯もポテト食べて!」
『え、ああ・・・』
山盛りだったポテトに手を伸ばす余裕が無かったせいで、桜ばかり食べていたようだ。
「はい!」
桜の細い指に摘まれた短めのポテトが目の前に差し出される。
いや、これはさすがに
「はい!」
ぐいっと口元に近づいてくるポテトを右手でキャッチして、口に放り込む。
『食べてるから;;』
直接食べなかったのが不満だったんだろうか。
前屈みに顔を覗き込んで睨んでくる。
桜は威嚇してるつもりなんだろうけど、ただただ可愛いだけ。
誤魔化すように目の前のグラスをぐいっと開けると、コロッと表情を変えて嬉しそうにボトルを開ける。
「桜がやるからね。何入れてくる?炭酸?しゅわしゅわ?」
よくわからないワードとともに小首を傾げる
なにそれ、可愛いんだが・・・
『任せる・・・』
オレはここから立たせてもらえないらしい。
「ねえ、この前の話だけど。私もうちょっとふっくらした方がいいの?」
『ん、何の話だ?』
「だから身体の話!〇〇はどっちが好きなの?」
「身体ってどっちでもいいだろ、そんなの;;」
「よくないのっ!」
・・・・・・
「ふっくらしてるほうが好きならするし、このままがよければちゃんとキープするから」
・・・・・・
「ねーえ、どっちが好き?」
どっちって;;そんなの;;;
・・・・・・
迫ってくるたぷたぷの眼。
・・・・・・
これはどうしたら・・・
『えっと;;』
「んぅー」
桜のたぷたぷの眼がだんだん閉じていく。
ん?
そのままオレの肩に不時着する。
『桜?』
無防備な唇と完全に閉じた両目。
どこで寝てんだよ・・・
飲みすぎたんだろう。そのおかげでなんとか助かった。
それにしても・・・
肩にもたれかかる桜を起こさないように脳内でため息をつく。
なんでオレにこんな顔みせるんだよ
こっちは3年前にフラれてるんだぞ
ーーーーーー
ーーーーーー
「ごめんね、また助けてもらっちゃって」
『いや、オレこそもっと早く様子見に行けばよかったな』
「ううん、ごめんね」
例のごとく桜が告白される立会をした日。
なかなか戻ってこない桜の様子を見に行くと、相手にしつこく迫られていた。
いつかのようにカットインして桜を連れ出してきたというわけだ。
『大丈夫か?』
「え、私は大丈夫だよ、全然;;」
『そうか・・・』
また、オレを安心させる為に無理に笑う。
「なんかお腹すいちゃった。ご飯食べてかない?」
『え、ああ・・・』
家の近所のファミレスの窓際の席に向かい合って座る。
迷った末に注文した山盛りのポテトにはほとんど手をつけていない。
ドリンクバーで取ってきた炭酸を飲む手が少し震えている。
やはり怖かったんだろう。
もうずいぶん前から桜への気持ちは自覚している。
オレにその資格があるのなら
この手を包み込んで安心させてやることができるのに
そんな一方的で身勝手な想いから
ついさっき告白で怖い思いをしたばかりの桜に告白をする。
『・・・桜』
「ん?」
『オレと付き合ってくれないか?』
・・・・・・
・・・・・・
長い沈黙と、テーブルの上で山を成すポテト。
この光景を忘れた事はない。
ーーーーーー
ーーーーーー
『桜・・・そろそろ起きろって、帰るぞ』
「え、あれ。ごめん、なんの話してたっけ?んー、思い出せない」
『とにかくもう帰るぞ////』
「んー、これボトルは、どうするの?」
『このペンで名前書いとくみたいだな』
「ん、じゃあ書いとくね」
〇〇と桜
2人分の名前が書かれたラベルがボトルにかけられる。
「2人のだからね!」
店を出て歩き出すと、ふらふらと桜の足元が揺れる。
『おい、大丈夫か?』
「うん、大丈夫大丈夫」
まったくそうは見えない。
家の近所で気は進まないが、桜がけがをするよりはましだ。
『ほら、肩つかまれって』
「え、おんぶ?やった」
『いや、おんぶって;;』
背中にたぷたぷと押し付けられる強すぎる感触。
「ねーえ、しゃがんでー」
『わ;;わかったよ///』
背中にたっぷりと桜を感じながら家まで送り届ける。
近所でよかった、いやよくないんだが。
『今日は電話しないでいいから、早く寝とけよ』
「ええー--」
不満そうに口を尖らせる仕草が可愛すぎて、もはや憎たらしい。
『ええ、じゃないだろ。もう桜と酒は飲まないからな』
「それはやだ。分かった、寝る」
『じゃあな』
「ねーえ、忘れてる!」
反転しようとした右肘が絡め取られて、むにっと桜にめり込む。
「桜におやすみは?」
桜の心中は分からないが、白旗を振らないとロックされた右肘が解放されない事は分かる。
『・・・おやすみ、桜////』
「ふふ・・・おやすみ。また明日ね♡」
【続け・・・】
続き書きました。
読んでいただいてありがとうございます。
さくたんも最後までがんばって書こうと思います。
応援してもらえたら嬉しいです!感想待ってます!
ありがとうございましたー!





〇〇じゃないけど、さくたん可愛い!! 読みながら妄想しちゃった(笑) こんなさくたんと一緒に飲みたい。 ヤバい😱没入し過ぎだ。 てな感じでとても楽しんでいます。 次回作もよろしくお…
ありがとうございます😭 感想めっちゃ嬉しいです! さくたんとお酒飲みたいですね。 次も頑張れる気がしてきましたー!
さくたんの態度から間違いなく両想いっぽいんだけど、どこかで〇〇が思い違いしてるんだろうな、、、 酔っ払ってる可愛さったらないですよねぇ(笑) ちゃんとくっつけるのか次の展開が楽…
いつも感想に元気をいただいています。ありがとうございます😭 酔ったさくたんが書きたくて、無理矢理飲ませてしまいました。 また飲ませたいですね。 ありがとうございますー!