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性的同意とは何か
性的同意とは、性的行為を行うことに対する同意である。キスの同意ならキスの同意だし、セックスの同意ならセックスの同意。
まるで進次郎構文みたいになったが、重要なことだ。なぜなら、こんな簡単なことを理解していない人があまりにも多いのだから。
先日、がバズった。賛同的な反応が大半を占めたが、「騙されたりしたとしてもホテルに同行した以上、性的同意とみなされても仕方ない」というような反論(?)も少なからずあった。レイプ肯定派としか言いようがない。
この機会に、性的同意とは何なのか、また、何でないのかについて書き留めておきたい。

1. 性的同意とは性的行為を行うことに対する同意である

冒頭に書いたことの繰り返しとなったが、これが最も重要なことだ。ラブホテルに行く同意とか、家に来る、家に上げる同意とか、ましてや車やカラオケボックス等で2人きりになる同意とかは性的同意ではない。性的行為に対する同意だけが性的同意である。
相手が一定の行為に同意してくれたことによって、性的同意を得られる確率が高まることがあるのは確かだ。騙したりせず普通に誘ったのにラブホテル同行を承諾されたら、性的同意も得られる確率はおそらく99%を超えるだろう。しかし、あくまでそれは性的同意そのものとは異なる。
これは就職活動にたとえるとわかりやすい。書類審査、一次面接、二次面接、最終面接を経て、内々定が出た後に正式内定が出るような企業を想像してみよう。ラブホ承諾は内々定に近いとはいえるかもしれない(繰り返すが、騙したりせずに誘った場合に限る)。家に来る・上げる承諾は、まあ二次面接を通って最終面接に進んだくらいの重みはあるかもしれない。でも、あなたはまだ採用はされていない。
就職活動なら、内々定を得たから、ましてや最終面接に進んだからといって、「明日から出社してよいのだ」などと主張する人は誰もいない。それなのに、性的同意に関してだけは、同意とみなすラインを勝手に前倒しして、レイプを肯定したい人が少なからずいるのが現状なのだ。
しかし実際には真逆である。次に述べるように、性的同意については「内定」すらないので、就職活動よりも本当は厳しいからだ。

2. 性的同意に事前約束はない

性的同意を事前に得ることはできない。仮に事前に約束してもその同意に拘束力はなく、常にそのときの意思だけが意味を持つ。
思考実験をしてみよう。あなたは女性である。あなたはマッチングアプリで知り合った男性と意気投合し、会ったらセックスしようと約束した。しかし、実際に会ってみると、見た目の印象も写真とは違うし、話したらつまらない自慢話や他人の悪口ばかり言うし、不潔で悪臭がした。あなたにはセックスを断る権利があるだろうか。
解答。あるに決まっている。また、恋人間や夫婦間のように、継続的に性的な相互独占関係を結ぶ合意はある場合であっても、個々の性行為について別途同意を要することは常識だろう。
このように、性的同意はリアルタイムの同意だけが意味を持ち、事前の約束は(性的同意を取れる確率が高まるという意味を除いて)意味を持たない。いったん行為が始まってからでさえ、相手方は断る権利を持つ。
それこそ、ラブホテルに行く同意が、その同意をした時点で暗黙にセックスの同意を含んでいたとしても意味はないのだ。だって、その場ではやりたくなかったんだから。それが全てだ。

3. 性的同意は言語的同意とは限らない

性的同意について上述のような話をすると必ず出てくるのが、「それではいちいち"私とセックスしませんか"と誘わなければならないのか。野暮ではないか。誘われる側もそのようなことは望んでいない」という反論だ。
たしかに性的な誘いにおいて、露骨に性行為を意味する言葉を避ける文化はある。しかし、実はこの点は全く問題ない。性的同意は、言語的な明示のものでなくても差し支えないからだ。
たとえば、漫画等のフィクションで「顎クイ」と呼ばれる動作がある。キスの準備動作として、相手の顎や頬に手を当ててこちらを向かせるということは現実にもよくある。
この場合、相手にもキスをする意思があるならば、「顎クイ」は単なる合図にすぎない。力を入れなくても相手の顔は合図を察してこちらを向くし、口は開くし、キスをすれば舌を絡めてくる。「キスしていいですか」などとは誰も言っていないが、キスの同意があることは明らかだ。これが黙示の性的同意である。
逆に、相手が首に力を入れてこちらを向くまいとしていたり、口を閉じていたりする場合、同意はないことになる。刑法的には不同意わいせつ罪(刑法176条1項)が成立する。
性交渉でも同じことだ。「押し倒す」という表現があるが、実際に力をかけて押し倒す必要があるならそれはレイプである。同意のあるセックスにおいて、男性が女性を「押し倒し」ているように見える場面では、女性が自分の意思で倒れ込むので、むしろ男性は衝撃をやわらげるため、背中側に手を添えながらベッドに寝かせる必要がある。
このように、黙示の性的同意も性的同意である以上、「きちんと性的同意を取らずにセックスするな」と言ったところで、何ら野暮な結果にはならない。

4. 同意の有無と証拠の有無は別問題

この点も議論の混乱しがちなところだ。私は弁護士だから事実の有無と証拠の有無を分けて考える習慣がついているが、ひょっとしたら、分けて考えることのできない人の方が多数派なのかもしれない。
明示にせよ黙示にせよ、同意を得て性行為をしたとしよう。しかし、その同意の証拠が残るかというのは別問題だ。神の視点からは同意があっても、他人(裁判官や捜査官など)の視点からはそれがわからない、ということはあり得る。あり得るというか、デート中にずっと録音録画をしている人など通常はいないので(いたらそれはそれで違法行為になるし)、性的同意の決定的な証拠は、ない場合の方が多いかもしれない。
この問題についての解決策は、「ない」と答えるしかない。「そのとき同意していても後から覆されたらどうするんだ!」と言う人がネット上には大勢いるが、「ゼロリスクを求めるなら一生セックスしないでください」としか言いようがない。
普通の人は、そのとき同意していたのに後から覆して警察に駆け込んだりはしない。そういう人間への不確実な信頼をできないなら、性行為は諦めるしかないと思う。交際関係、婚姻関係など、関係の安定性が高まるほどリスクは減るが、決してゼロにはならないのだから。
しかし、虚偽告訴のリスクだけをそんなに重視すべき理由ってありますかね。あなた他人の前で丸腰で全裸になってセックスするんでしょ。何ならそのあと眠ったりするじゃん。普通に考えて危ないよね。相手は自分を刺し殺したりしないと信頼しているからセックスするんじゃないの?と。
まあ、あくまでゼロリスクを求めるとして、通り魔や交通事故が怖いからといって街に出なければ生活はできないが、セックスをしなくても生活は破綻しない。そう考えると、そんなに怖いならセックスしなければいいじゃんとしか言いようがない。

5. まとめ

以上、性的同意は①性的行為に関する、②リアルタイムの同意であり、③黙示でも成立すること、ただし、④同意の有無と証拠の有無は別であることを述べてきた。
①から③までは、ぜひとも実践してほしい。必ずきちんと同意を得て性行為をすれば、性犯罪で訴えられたりするリスクは劇的に減るだろう。
しかし、きちんと同意を取っても、その証拠がないこと(④)による僅かなリスクは残存する。
あくまで④によるリスクを気にする人は、セックスをしない以外の解決策は究極的にない。一生セックスをしないのがお薦めである。
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