「日本の女性たちは、結婚している人も独身の人も、子どもがいる人もいない人も、みんなそれぞれの状況で本当に頑張っています。その努力が周囲から正しく評価され、自分でも誇りに思えるようになってほしい。誰であっても自分らしい輝きを探求できるような社会になってほしいと、心から願っています」
『仕事をしながら母になる 「ひとりじゃないよ」心がラクになる思考のヒント』(KADOKAWA)の冒頭でこのように語っているのは、内田舞さん。『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書)などの著者も多くある小児精神科医だ。
共著者である感染症疫学者の塩田佳代子さんはこのように語っている。
「日本人としてアメリカで働いていると、日米の制度や価値観の違いに気づくことはよくあります。日本の女性が働きにくい環境に置かれていて、中でも子育てしながら働くのは簡単でないだろうと私は感じています。そして、子育てしている当事者だけでなく、周囲の人たちも含めて、みんなが苦しい状況になっているのではないかと」
ハーバード大学で小児精神科医として働く3児の母と、ボストン大学で感染症学者と獣医として働く2児の母。妊娠・出産・育児が重要でかつ大変なことというのは誰にとっても共通することだが、医師や感染症疫学者という職業に就き、海外で働く二人はどのようにして「仕事をしながら」母になっていったのか。ふたりの体験に基づいた言葉は、肩に力の入った女性たちをふっとゆるめてくれる。
本著から抜粋してお届けする前編では、塩田佳代子さんが実体験を通して「クオータ制」に代表される「女性限定の枠」の制度がなぜ必要なのかを感じたエピソードをお伝えする。
女性の活躍を阻害しかねない発想を持っていた
これを話すと長くなるのですが、女性の活躍を阻害しかねない発想を、私自身が持っていたことがあり、今でも深く反省しているんです。
日本の大学で学んでいた10代から20代の頃、私は「女性限定採用枠」や「女性限定の奨学金」の公募を見て、どうしてこういう制度が必要なのか理解できず、むしろ抵抗感さえ抱いていました。限定の枠を作ってもらわなくても、性別関係なく同じように評価してもらって採用されたほうが嬉しいと。また当時は、「将来母親になっても、寝る時間を削って頑張ればきっと全部できるはずだ」と思っていたし、実際にそういう生き方をしていたのですね。
そのため、女性だからというだけで、なぜ別のサポートが必要なのかが純粋にわからなかったのです。想像力も勉強も足りなかったですね。
周りに母親として子どもを持ちながらキャリアを積んでいる人がいなかったので、話を聞くこともできませんでした。実際に、私が所属していたとき、獣医学専修には女性の教授は一人もいませんでした。私が東京大学に入学した年は珍しく女性の学生の割合が20%を超えたと入学式で言っていたのを覚えていますが、その背景や問題を若い頃はもっと理解しようとしなかった。
そうして時間が経って自分自身が母親になる年齢になったとき、やっとさまざまなことに気がつきました。妊娠や出産を通して、ある意味、強制的に気づかされたと言ってもいいでしょうね。
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