【槍弓♀】記憶あり【腐向】
古代?パラ(novel/1280564)の記憶ありver。本当は記憶ありが最初にできたてたんですが、それってどうよと思ってやめたら思いついちゃったので携帯でぽちぽち打ってみたら溜まった、という。 ■続きはきっと皆さんの心の中に…………(・∀・)イイコトイッタ!! ■伝説は変わりません、ご安心くださいw 一夫多妻制を導入する前にセタンタがエミヤさんを恋愛の意味で好きなんだと理解してもらわなければなりませんし、スキル:鈍感A+をなめてもらっちゃ困ります! ■10/22追記 ■続きできましたー(novel/1692917)
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彼が目覚めたのは彼女が十にもならない時分だった。正確にいうならば、彼女に彼であった時の記憶が蘇ったのは、だ。
彼は彼女が彼女として生まれる前にアラヤの守護者として存在し、サーヴァントとしてある少女に忠誠を誓い、更に守護者となるその前には半人前の魔術師であり、正義の味方を目指していた少年だった。
彼の記憶が蘇った当初、彼女は困惑したがそれはすぐに治まった。今は今、過去は過去でしかない、と。
今の女になってしまった姿をかつてのマスターや過去の自分であった者に見られるというならばまた違ったのだろうが、知られる心配もない。
今彼女が生きるのは彼が生きた時代よりも千年単位も過去、彼の時代に古代、神代と呼ばれていた時代だ。普通であれば彼の生きていた時代よりも後に生まれそうなものだが、おそらく守護者をしていた弊害のようなものだろう。
彼の知り合いで古代に生きた者などいなかった………訳ではないが、たった数人だ。会う事などないだろうし、会ってしまったとして己がわかるはずもない。彼女はそう結論を出してそれまでと変わらずに日々を過ごした。
両親を亡くし、肌の色を気味悪がられてはあちこちを流れ、その果てに拾われたのは森に居を構え半ば世捨て人として暮らす老婆だった。才がないと苦笑されつつも魔術を教わりながら穏やかな日々を過ごしていった。
そんな彼女の平穏が俄かに揺らいだのは魔術の師であり養い親でもある老婆の言葉からだった。
「なかなかしつこいねぇ、さすがは光の御子だ」
仕様がないから出迎えておやりと老婆に言われ彼女は自分が呼吸を忘れていた事に気が付いた。わかったといつも通りに答えたつもりだが、さて、万事において鋭い老婆を欺けたかどうか。
彼女の知る光の御子といえば一人しかいない。彼の記憶にある槍のサーヴァント。青い髪に青い甲冑、赤い瞳を持った、初めて彼を殺した男。青を纏った少女とはまた違う、彼を彼たらしめた青。英雄の中の英雄。
森への闖入者に対して鳥がけたたましく鳴いている。人を寄せ付けぬよう老婆が敷いた結界は正常に作用し、彼の者を惑わせていた。諦めて森から出ようとするか、老婆からの迎えがなければ抜けられない。
彼女は陰鬱な気分でため息を吐いた。
ここは彼の英雄が生きた時代だったのか。
フードを目深にかぶり呼吸を整える。未来に当たる世界で生きていた彼を知る者など今はどこにもいない。それは目と鼻の先にいる者だとて例外ではない。そのはずだ。それは重々わかっているのだが、足の運びはどうにも鈍い。
生前も、彼は彼の英雄を苦手としていた。自分とは違うまばゆいばかりのその存在を。特にあの赤い目は己も知らぬ心の内全てを見透かされそうで落ち着かなかった。けれど老婆が客として迎えると決めたのだ、彼女に否やはない。
もう一度、深くため息を吐いて足を踏み出した。
「腹減った………」
セタンタは森の中で今にも鳴りだしそうな腹をさすった。小腹を満たそうと入った森に近づくなと言われていた事を思い出したのは延々歩き回った後だった。
獲物は見つからないし、腹はますます減ってくる。方向を見失って出口もわからないときた。こうなったら森に住み着いていると噂の魔女を訪ねるしかないと半ば意地になって歩いていたのだが、魔女の住処どころか狐の窖すら見つからない。
どうしたものかと持っていた槍にもたれかかる。このまま飢え死になど笑い話にすらならない。
ふいに聞こえたがさり、と己以外が立てた音に身構える。槍を向けた先にいつの間にか人間が立っていた。
フードをかぶっているせいでどんな容姿かは窺い知れない。それでもフードからのぞく口元が褐色をしているのは見てとれた。
森に住む魔女かとも思ったがそれにしては若すぎるように思えた。幻術の類いで惑わせているのかもしれないが。
「何者だ」
「師匠〈マスター〉の使いです。光の御子を迎えに行くように、と」
声は若い女のもので自分といくばくも年は離れていないようだった。魔女の使い魔か、もしくはそれを騙る森に住む何かか。
悪意は感じられないが用心するにこした事はない。悪意がなくとも妖精には無邪気に残酷なものもいる。
「どうぞ、こちらです」
踵を返し歩いていく無防備な背に向けて槍を繰り出した。ぴたりと背を貫く寸前で止まった槍に気付く素振りもなく女は歩いていく。
「――お前、何者だ」
セタンタは刺のある声で問うた。
この女が使い魔や妖精ならば気付かないはずがない。それにこの女は相当な腕前の戦士である筈だ。尚のこと気付かぬはずがない。
強者には敏感なセタンタの勘がそう告げていた。
女は一旦足を止めると振り向きそして、セタンタを一瞥しただけで再び背を向け歩き始める。それが無性に腹立たしく、セタンタは力任せに槍を振るった。
が、槍はあっさりと躱され何が起きたのかわからない内にセタンタは地面に転がっていた。
おそらく投げられたのだろうが、ふんわりとした感覚から女が自分を全く攻撃しようとしていない事を理解した。事実、身体はどこも傷まない。
なるほど、合点がいった。ここまで実力に差があるなら警戒も威嚇も必要ない。どんなに無防備に見えても――、いや、無防備に見えた時点で既に勝敗は決していた。
女にとって自分は赤子も同然に違いない。どんな大人にだってここまで簡単にあしらわれた事などなかったのに、それを大して年も変わらぬだろう女にしてやられたのだ。先ほどまで感じていた腹立たしさは霧散して代わりに女に対する憧れや敬意といったものが湧いて出た。
「すごいな、おまえ!」
転がされたままそう言えば女は僅かに動きを止め、それからためらいがちに手を差し出した。その手を取り、立ち上がった拍子にちらりと女の瞳が見えた。よく磨いた刃物のような色をしていた。
「きれいだな」
感じたままを言葉にすれば女は首を傾げた。その仕草が幼く見えてセタンタは知らず笑みを深くした。
「知ってるだろうけどオレはセタンタ。お前は?」
「エミヤと言います」
「いい名前だな。
森の魔女ってエミヤじゃないよな、エミヤは使い魔か? いつも何してんだ? 暇なら遊びに来いよ。エミヤみたいな奴ならみんな大喜びだ」
矢継ぎ早に話しかけるセタンタにエミヤは少しばかり狼狽えた様子で
「師匠の弟子です」
と返したのみだった。セタンタは構わず続ける。
「へえ、すっげえ強いから使い魔か何かかと思ったぜ。それと別に敬語とかいらねぇって。まだ騎士でもなんでもねえし、エミヤの方が年上だろ?
なあなあ、それでいつもは何してんだ?」
先を行くエミヤに小走りで追い付き隣に並ぶ。見上げたエミヤの横顔はフードに隠れて見えない。
「師匠の手伝いを」
エミヤはやはり一言で返した。前ばかりを見ているエミヤの袖を引き、こちらを振り向いた彼女に満足して笑う。けれどやはり顔が見えないのは面白くない。
「なんでフード被ってるんだ? 取れよ。顔見てしゃべりたい」
「……どうかご容赦を。私は人前に出られぬ姿をしていますので」
「かってに決めるな。そんなの見てみなくちゃわかんないだろ、さっきちょっと見えたけどすごくきれいだったぞ。それから敬語はいいって言った」
エミヤの困っている気配は読み取れたがセタンタは引かなかった。ややあってエミヤは息を吐いた。
呆れと諦めと、それから安堵の混じるため息だったと感じたのはセタンタの願望だろうか。エミヤは観念したようで静かにフードを取った。
セタンタの目に映ったのはエミヤの言った人前に出られぬ姿などでは決してなく、むしろうつくしいとさえ言えるような少女の姿だった。
雪のように白い髪、この辺りでは珍しい褐色の肌、髪と同じ色をした長い睫毛に縁取られた鋼を連想させる瞳。とても、とてもきれいだった。
少ない語彙を振り絞ってエミヤを誉めようとセタンタが口を開いたその時――、
ぐううう
盛大に響いた腹の音に空腹を思い出した。
エミヤは腹の音にきょとんとした後、目を細めた。僅かに口元が綻んで、眉間の皺が緩んで、まるで小さな花の蕾がささやかに咲いたような。
おそらく、その瞬間。
セタンタはエミヤに恋をした。
***
内心、ランサーまじ美少女!とか思ってるエミヤさん。
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- わんわんおJanuary 24, 2025