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イケア、中国で大量閉店。不動産不況と競争激化背景。無印、ニトリも軌道修正進める

経済ジャーナリスト/法政大学MBA兼任教員
写真:ロイター/アフロ

スウェーデン発の家具大手イケアが、中国事業で大きな転換点を迎えている。
イケア中国は2026年2月2日をもって、上海宝山、広州番禺など7つの実店舗を閉鎖すると発表した。1998年に中国へ進出して以来、最大規模の閉店となる。

今回の閉店により、中国国内の実店舗は41から34に減少する。イケア中国は「撤退ではなく、店舗網の再編と転換」だと強調するが、背景には業績の明確な失速がある。

ピークから売り上げ3割減 数字が示す苦戦

中国の都市生活者に「手ごろでオシャレなのライフスタイル」を提案し、2000~2010年代にかけて成長を続けたイケアは、2020年代に入って苦戦している。

2022年に貴陽店(貴州省)と上海・楊浦店を閉店。これが進出以来初めての閉店だった。
2024年度の中国での売上高は前年比7.6%減の約14億6000万ユーロとなり(1ユーロ=184円で計算、約2680億円)、2019年のピーク(約19億4000万ユーロ)と比べて3割以上縮小した。同じアジアでもインドが31%、東南アジアは22%と成長しているのとは対照的だ。

2000年代、中国のイケアは「ライフスタイルのテーマパーク」だった
2000年代、中国のイケアは「ライフスタイルのテーマパーク」だった写真:ロイター/アフロ

不動産不況が直撃 需要の土台が崩れる

失速の最大要因は、中国の不動産不況だ。国家統計局によると、2025年1〜11月の不動産開発投資は前年同期比15.9%減、個人向け住宅ローンは15.1%減少した。

住宅の新規購入や買い替えが減少すれば、家具需要も冷え込む。

中国建材流通協会が発表した《2025年中国都市部建材・家具市場飽和度警戒指数(BHEI)》でも、2025年に全国の建材・家具市場の総面積が前年同期比11.38%減少したことが示されている。

中国の大手家具チェーンを含め、家具業界全体の業績が悪化し、日本のニトリも中国で不採算店の撤退を進めたため、店舗数が減少している。

「家を買い、まとめて家具をそろえる」という、イケアの主要顧客行動そのものが縮小し、市場が拡大する時代には強みだった大型店舗モデルは、需要が細る局面では一転して重荷になっている。

外部環境の変化と国産ブランドの台頭

さらに、競争環境の変化もイケアを追い込んでいる。

中国の家具市場では近年、

  • EC起点で商品開発を高速化する国産ブランド
  • 無垢材や高級感を前面に出す中価格帯商品
  • 「送料無料・設置込み」を標準化したサービス

が急速に浸透し、デザイン面でも北欧風ブームの後退に加え、ショート動画プラットフォームを通じて「クリーム系」「イタリアン・ライトラグジュアリー」といった新トレンドが広まり、イケアのデザインを好んでいた層の一部が奪われた。

トレンドの変化をうまくとらえた中国本土ブランドの代表的存在が「源氏木語」だ。

無垢材ベッドを1000元台(約2万2000円台)で提供し、ECのセールと政府の補助金を活用すれば、800元台で配送・設置込みの商品もある。

イケアは「高いコスパ」を売りにしてきたが、近年はサプライチェーン全体が進化し、供給過剰による内巻(過当競争)が進んだことで、配送費や組み立て費を含めると、「国産ブランドの方が安く、手間もかからない」と感じる消費者が増えている。

かつては「寝ていても儲けられた」中国市場

業績回復を狙い、イケアは2023年以降、大規模な値下げを断行した。
2024年度だけで500品目以上を値下げし、9.9元の商品や“半額金曜日”といった施策も展開した。

一時的に集客効果はあったものの、

  • 利益率の低下
  • 「中価格帯ブランド」から「割引店」へのイメージ転落

という副作用も大きかった。低価格で人は呼べても、ブランド価値の回復にはつながっていないのが実情だ。

かつてのイケアは、中国市場でいわば“躺赢(寝ていても勝てる)”存在だった。

1998年に上海で1号店を開業して以降、

  • 郊外に建つ巨大な「青い箱」
  • 生活シーンを再現したショールーム
  • グローバル調達による手頃な価格

という独自モデルで、急成長する都市部の中間層を一気に取り込んだ。筆者も2010年代はじめに小学生の子どもを連れてよくイケアを訪れていた。モデルルームのように家具が陳列された空間を親子で見て回り、レストランで1元(22円)のソフトクリームを食べる。会員になれば無料でコーヒーも飲める。小さな無料で子どもを預かってくれるサービスもあり、店舗というより2000〜2010年代の中国における「都市生活のテーマパーク」だった。

しかしそのビジネスモデルは2020年代に入り、オンラインで商品を吟味し、店舗で使用感を確認し、オフラインで決済するというタイパを求める都市消費者にのーズと乖離していった。

イケア、無印は小型店にシフト

こうした状況を受け、イケア中国はオンラインと即時配送を組み合わせたビジネスモデルへの転換を進めるとともに、北京・深圳を軸に小型店舗を10店以上新設する方針を打ち出した。

良品計画も2025年夏以降、「無印良品 500」の名称で展開している低価格の小型店舗を、中国に展開している。

スターバックス、イケアなど1990年代にいち早く中国市場に参入し、2000年代の成長ボーナスの恩恵を一身に受けた外資企業が軒並み苦戦し、スシローやサイゼリヤなど日本のデフレで鍛えられた外食チェーンが存在感を高めている。

イケアは中国市場のフェースの変化に対応するために小型化と値下げを進めれば、「イケアならではの没入型体験」「暮らしを丸ごと提案する世界観」が薄れるリスクもある。ジレンマをどう乗り越えるのかが注目されている。

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経済ジャーナリスト/法政大学MBA兼任教員

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社記者、中国・大連に国費博士留学、少数民族向けの大学講師を経て現職。主な分野は中国新興企業、価値観・時代の変容と経済活動、マス向けコミュニケーション。 近著に『崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ』(大和書房)『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。 世界一周一人旅の記録をnoteに執筆中

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