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ギスギスオンライン  作者: ココナッツ野山
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便利なオトコ

 1.クランハウス-居間


 うあ〜ん! スズキ〜! 悪のラスボスが俺の先生を連れて行こうとしてるんだよ〜!

 都合のいい女に慰めて貰っている。

 俺は赤カブトさんとただならぬ仲になったらしいが、そんなことは関係ない。あのAI娘は攻略対象の一人であるに過ぎず、色んなタイプの女を侍らせることでしか俺が思い描くトゥルーエンドに辿り着く方法はない。俺は劣化ティナンのむちむちした太ももに顔を埋めながら歯列をギラつかせた。

 ロリキャラにしては半端に育っていて需要の谷になるポイントをあえて狙いに行った感のあるスズキは俺の頭をナデナデしながら、


「黙ってても良かったんだよ?」


 クロホシ社長のスカウトがあった件を、俺は先生に正直に伝えた。さすがに先生の将来に関わる内容だったので俺の一存で胸に秘めている訳には行かなかったのだ。

 しかしスズキはそうではないのだと言う。


「コタタマは先生と一緒に居たいんでしょ? そういう気持ちを先生は大切にするし、気持ちを伝えるのに行動するのは悪いことじゃないと思うよ。先生は凄く頭いい人だから、コタタマが足を引っ張ることはないと思うし。逆にいい結果になることもあるかもしれないじゃん」


 そ、そう思う? いや、実はさ。ちょっと恣意的に情報を歪めて伝えてたり、とか。軽くね? 印象操作っつーか。シャッチョさーんがモモ氏を道具と見なしてるとか言ってたからさぁ。シャッチョさーんにホモ疑惑があって奥さんと結婚したのはカモフラージュのためなんじゃないかなって。それとなく先生にお伝えを……。


「コタタマはそう思ったってことだよね。それを先生に伝えるのは全然悪いことじゃないよ。悪いのは自分の子供を道具扱いする社長さんでしょ。コタタマは悪くない。大丈夫。私はコタタマの味方だよ」


 う、うん。

 ……段々怖くなってきたぞ。この女は俺が何しても俺の味方という態度を崩さない。俺の顔面を包み込む柔らかい太ももの感触は、まるで麻薬のようなイケナイ甘美さだ。底なし沼のような快楽にハマってしまいそう。

 スズキの囁くような声が甘く響く。


「ゲームなんだから楽しまなくちゃ。気持ちいいことだけしよ?」


 それいいなぁ。

 俺はスズキエンドに片足を踏み入れて……。

 不意に引き戻された。


『コタタマ! メイヨウが危ない!』


 リチェット。俺はガバッと起き上がった。メイヨウがどうした?

 ささやきを飛ばすが、返事がない。返事をする余裕がないのか。

 俺は振り返ってスズキを見る。

 スズキはにこりと笑った。


「出掛けるんでしょ? 行ってらっしゃい。私は待ってるから。帰ってきたら続きしようね」


 いや、もう少し休んでから行く。

 俺はスズキの太ももに頭を乗っけた。ぐりぐりと顔を埋めていくと、スズキがくすぐったそうに身をよじる。


「あ、こらっ」


 ここにある太ももを放っていくことは俺にはできない。スズキエンドに真っ向から立ち向かい打ち破るのだ。負けるもんか! がんばれ、俺!



 2.中国-海上都市ニャンダム


 くそっ、遅かったか……。

 半端ロリの誘惑にもめげずに現地入りした俺は、【ギルド】であふれ返る海上都市を目の当たりにしてほぞを噛んだ。

 隊列を組んだ【ギルド】に徒党を組んだプレイヤーが突っ込んでガンガンと武器を振り回している。硬い。【歩兵】じゃない。知らない兵科だ。【重装歩兵】ということになるのか。突出したプレイヤーの腹に押し当てられた銃口が火を吹く。

 腹から千切れたプレイヤーが血反吐を撒き散らしながら悪態を吐く。


「くそっ、再生が……。コイツ、何か……」


【心身燃焼】のリジェネは入っているようだが、再生が遅い。俺は知らない人に駆け寄って声を掛ける。

 おい、何があった?


「俺が聞きたい。巫蠱呪画が解けたと思ったらイキナリ【ギルド】が攻め込んできた。総督府のほうからだ」


 ……クロホシか? だが、ヤツは他星系に行くと言って……。いや、そうか。暫定エイリアンの連中は複数のアバターを操れるんだった。ナルトの影分身みたいな感じなのかもしれない。

 クロホシは【賢者】の勧誘をしている。オムスビコロリンの元にも現れたのだろう。それで何かあったという訳か。

 どうする。クロホシが居るならクロアリは使えない。支配される恐れがある。

 ……この状況だ。ティナンは避難を済ませているだろう。エンフレに化けて突っ込むしかない。ロストの危険性はあるが、俺にはウッディが居る。他のゴミどもとは違う。

 むっ、変身できない。お出掛け中かな?

 いや、ウッディの仕業だったようだ。


(シンイチ。あの男には関わるなと言ったろう。お前は……私よりもメイヨウとかいう女を選ぶのか)


 そうじゃないんだ。ウッディ。俺の話を聞いてくれ。


(イヤだ。お前がどうしても【黒星】の元へ行くというなら私は手伝わない)


 ……ウッディ。お前、饒舌になったな。


(聞け、シンイチ。私はやろうと思えばお前の身体を操れる。その段階まで育った。もう手遅れだ。私の言うことに従え)


 なら操ればいい。何故そうしない?


(……勝手にしろ。私は知らないからな)


 ウッディはおヘソを曲げてしまった。

 ウッディ? ウッディや。……返事がない。

 くそっ、ウッディには頼れないということか。仕方ない。帰ろう。

 俺はいそいそと帰り支度を整えるが、酔いどれに絡まれた。


「チェンユウ。金を貸してくれないか」


 仙人サマ……。あんた、ここで何を。

 スィシーは言った。


「金だ。持ってないのか?」


 ……メイヨウ辺りならたんまり持ってるんじゃないか。


「メイヨウはどこだ」


 あっち。


「そうか。お前も来い」


 イヤだよ。俺は帰るの。あんた一人で行ってくれ。

 するとスィシーはニヒルに笑った。


「チェンユウ。知らないのか? 金を貸してくれるのは友人だけだ」


 それ友人かなぁ?

 素朴な疑問を口にする俺を仙人サマは有無を言わせずにグイグイと引っ張って行く。

 クソ虫さんたちが銃口をこちらに向ける。仙人サマが歯車を浮かべる。


「邪魔だ」


 酒に溺れても人間戦略兵器は健在だった。

 仙人サマの天地を揺るがすような一撃がクソ虫さんたちを一掃する。

 突破口が開いた。クォリティの高いモブキャラが一斉に動く。


「スゲー! 仙人か!?」


 いえ、ただの飲んだくれです。

 ……あのな、スィシーさんよ。あんたは仮にも仙人なんだから酒にハマっちゃマズいだろ。お仲間は何て言ってるんだよ?


「あれから山には戻ってない。チェンユウ。私は分かったのだ」


 何を?


「高みを目指すとは先人を蔑ろにすることではない。先人とはつまり文化だ。文化。すなわち酒だ」


 やめろやめろ。穴だらけの理論武装してんじゃねえ。なんか俺が悪いみたいな流れになるだろ!


「この私にこうまで影響を与えるとは。これが奇跡片、か」


 そんな訳あるかぁ! 自堕落の原因を俺に押し付けるのはやめろぉ!

 飛び交う銃弾を仙人サマはまったく意に介さない。さすがに銃弾を避けるのは無理みたいなのだが、変に気を利かせた中国ゴミどもが【心身燃焼】を打ってカバーしてきた。くそっ、余計なことを。

 命の火を燃やした仙人サマが道のど真ん中を歩いていく。俺を連れて。

 スィシーはニコリともせずに言った。


「友さえ居れば金には困らない。良いことだ」


 チャイニーズの猛反撃が始まる。




 これは、とあるVRMMOの物語。

 ATMコタタマ。



 GunS Guilds Online


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