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    【インタビュー】M!LKの吉田仁人が作詞作曲を手掛けたソロ作品『さえない暮らし』。彼はなぜ新たな表現に向かうのか?

    【インタビュー】M!LKの吉田仁人が作詞作曲を手掛けたソロ作品『さえない暮らし』。彼はなぜ新たな表現に向かうのか?

    ポジティブもネガティブも感じながらいちばん大事にしなきゃいけないことが「さえない暮らし」だと思っている

    ──“ロータリー”は、変わり続ける街の景色と別れの喪失感の描写を重ねていますね。

    主人公は上京して大事な人を見つけて、なんとなく東京に慣れてきたけど⋯⋯というストーリーの曲です。自分も東京で仕事をするようになって10年くらい経つんですけど、街の進化は止まらなくて便利になったり不便になったり、いろんな移り変わりを見てきたんです。それで東京は「いつまでも安心はできない街」という感覚があって、それを踏まえながら歌詞を書きました。思ったことをそのまま描くのは恥ずかしさもあるので、妄想でストーリーを作っています。

    ──曲調は爽やかで明るいですけど、展開する毎に切なさを滲ませていく印象があります。

    主人公はそんなに感情の上がり下がりがあるタイプではないと思っているので、わりと淡々としているんですけど、サビで踏み込んで描写するイメージですね。このサビは自分でも好きなメロディです。

    ──《空っぽの部屋に/慰められている気がして》は、ひとり暮らしをしている人はよくわかる感覚だと思います。

    誰かに声をかけられるよりも自室に戻ってから「ふう……」ってしたほうがいいなあというのは僕も思ったりするので、そんな描写は挟んでいます。いちばん近くにいるようなフィクション感が好きなんです。誰でも聴いたら自分の生活に落とし込める、寄り添う感じというか。
    自分が披露するうえで、ある程度自分の気持ちも乗せたいんですよね。そうなると東京で頑張っている人たちの曲みたいな感じになるんです。

    ──この曲、ギターソロがかっこいいです。

    CO-Kさんが半端ないギターソロを入れてくださるんですよ。僕はギターに関してはまだコードを弾くくらいなんですけど、エレキギターとアコースティックギター、どっちも弾いています。今、エフェクターとかを揃えて演奏していくのを楽しむようになっておりまして(笑)。フェスに向けていろいろやり始めたら楽しくなっちゃって。

    ──“オレンジ”は、アコースティックギターと歌から始まる曲ですね。フォークソングのテイストを今作の中でいちばん感じました。

    あの時抱いていた夢と今との差異みたいな、自分との対話を歌詞で描きました。その中で《静かな部屋》が最後のところでは《広くなった部屋》になるんです。昔と比べていろいろなものを得てきて不自由さはなくなってきたけど、あの時持っていた熱量は今の自分とは違う、という感覚ですね。でもこの曲を聴いて、重くは考えないでいただきたいです。これもフィクションに落とし込んでいますし、めちゃくちゃ僕が思い悩んでいるのかというと、それは違うので(笑)。何かしたいけど、どうしたらいいのかわかってない状態というか、何かが生まれる前の人というか。淡々と静かに歌ってはいるんですけど、熱量としては高めに歌っています。

    ──そういう歌い方も昔のフォークソング的な風味を醸し出しているんだと思います。

    祖母が長渕剛さんが好きで、僕も幼少期によく一緒に聴いていたんです。“巡恋歌”、“順子”とかをなんとなく聴いていて、中高生の頃に改めて「いいな」って思うようになりました。東京に来る時に《今日から俺 東京の人になる》と歌っている“東京青春朝焼物語”を聴いたりもしたので、僕の中にそういう感覚もあったのかもしれないですね。

    ──《ハロゲンの灯り眺める日々》は、昭和な雰囲気を感じます。

    僕、ハロゲンヒーターを使っていたんです。エアコンだと喉が乾燥するので。子どもの頃もハロゲンヒーターは身近で、ずっとぼーっとしながら眺めている時間があったりして。何もしていない時に見ちゃうものがハロゲンでした。

    ──この曲には《冴えない暮らしの燈》という一節もありますが、今回のEPのタイトルの『さえない暮らし』は、ここから来ているんですね。

    冴えないから悪いのかと問われれば、それは違うなと思っていて。SNS上とかにあるようなキラキラした世界を全部追い求めるのではなくて、「今、目の前にあるこれがいちばん幸せじゃん?」と思えるような感覚は、このEPの4曲に共通してあることだと感じていています。ポジティブもネガティブも感じながらいちばん大事にしなきゃいけないことが「さえない暮らし」だと僕は思っているので、このタイトルをつけました。

    【インタビュー】M!LKの吉田仁人が作詞作曲を手掛けたソロ作品『さえない暮らし』。彼はなぜ新たな表現に向かうのか?

    グループとソロでの表現を両立できているのが楽しくて。「どっちもあるからどっちも頑張れる」んだと思う

    ──“共同体”は、穏やかな幸せが伝わってきます。

    このEPをリリースした直後にフェスに出演させていただくのが決まっていて、そのステージをイメージしてみたら「このままではひとつもわかりやすくハッピーな曲がないぞ」と(笑)。ハッピーな曲を書きたい自分もいたので、それで作ったのが“共同体”です。だから今回の4曲の中でいちばん新しいですね。ケーキ屋さんが行きつけになるような日常の変化だったり、他者を思いやる気持ちとか、「なんかわかんないけど温かいなあ。幸せだな」みたいなイメージを描きました。打ち込みのオケも自分にとって新しくて、めちゃくちゃハッピーだし、幸せで穏やかな曲になりました。

    ──ソウルミュージック、ゴスペルとかに通ずるコーラスのハーモニーが気持ちいいです。

    コーラスの声をたくさん録って、それを重ねていただいています。楽しく歌えたし、最終チェックをする時も聴きながら「幸せっていいよなあ」と思いました。

    ──今作の制作を振り返って、改めてどのようなことを感じますか?

    すべてが勉強でしたね。いろいろなアプローチで曲を作ることもして、楽しいなあ、もっと頑張りたいなと思いましたし、たくさんのことを吸収できました。

    ──曲作りは、引き続きやっているんですか?

    はい。許しがあればまた出せるように(笑)。そのために練習と作詞作曲をずっとしています。

    ──M!LKのメンバーのみなさんは、吉田さんのソロ活動についてどのようなことおっしゃっているんですか?

    僕に対しては「聴いてねえよ」っていう感じで冗談めかして言うんです(笑)。でも、裏では“藍”を聴いて「めっちゃいいじゃん!」って言ってくれてたりして嬉しいですね。(山中)柔太朗も「めっちゃいいよ!」って言いながら曲を聴いてくれていたので、今回のEPを聴いてみんながどういう反応をするのか楽しみです。


    ──塩﨑太智さんは、“カーテン”をカバーしたMVを作っていましたね。

    そうでしたね(笑)。「ソロでそれぞれYouTubeでやりたいことをやろうよ」となった時に、「じゃあ俺、吉田さんのMVのカバーするわ」って言って、まじで意味がわかんなかったです。

    ──歌だけじゃなくてMVの映像もカバーしていて驚きました。

    あれ、すごいんですよ。(僕の)MVを観ながら撮影して、その場でなんとなく粗く編集してみながら角度とかを研究したらしいです。なんと言ったらいいのかわからないですけど、これも1個の愛の形だなと思いました。ものすごいクオリティの作り込みをしてくれているな、と思いながら観ていたら、最後の《そばにいて欲しかっただけ》のところでめちゃくちゃダサく文字のテロップが出てくるっていう(笑)。塩﨑ならではのユーモアを感じました。ソロで曲を出して歌うとなると、グループと離れた活動として捉えられることがわりとあって、それを覚悟しつつも「それは違うよ」と思っているんです。太智がああいうことをやってくれることで、グループとの繋がりが強くなったので、カバーしたMVはとてもありがたかったです。

    ──ソロ活動での経験は、今後のM!LKにかなり反映されていくんじゃないですか?

    そうだと思います。「5人それぞれがすごくなって集まればもっとすごい、アベンジャーズみたいになろう」と、みんなで話していたんです。僕のソロもM!LKに還元できるように頑張りたいですし、グループ活動での表現と作詞作曲をするソロでの表現を両立できているのが楽しくて。「どっちもあるからどっちも頑張れる」んだと思うので、両方とも大事にしたいんですよ。二足の草鞋を堂々と履いて頑張りたいですね。


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